テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
病室は、今日も静かだった。
点滴の音だけが、なつの耳に残る。
「……こさめ、来るかな」
ドアが開く。
「なつくん!!」
息を切らして、こさめが駆け込んできた。
「今日も会えた…」
「毎日来てるでしょ」
なつは弱く笑った。
体は重く、息をするだけで苦しい。
医者の言葉は、ずっと頭から離れない。
「正直に言います。回復は難しい状態です」
それでも、こさめは毎日来た。
笑って、話して、手を握って。
「なつくんさ、退院したら何したい?」
「……外、歩きたい」
「じゃあさ、桜見に行こ。絶対一緒に」
「……約束だよ」
二人は指を絡めた。
その夜。
なつは、胸の痛みに目を覚ました。
息が苦しい。
「……こさめ……」
名前を呼ぶ声は、誰にも届かない。
涙が、枕を濡らす。
「……まだ、生きたい」
こさめと、桜を見たい。
それだけだった。
朝。
こさめは病室に入った瞬間、空気が違うことに気づいた。
「……なつくん?」
なつは眠ったまま、動かない。
心電図の音が弱くなっている。
「先生!!」
医者と看護師が駆け寄る。
こさめは廊下で、震える手を握りしめた。
「お願い……なつくん……」
祈るしかなかった。
どれくらい時間が経ったのかわからない。
医者が出てきた。
「……今、山は越えました」
こさめの足から力が抜ける。
「助かった……?」
「はい。奇跡的に、体が反応しました」
こさめは、その場で泣いた。
数日後。
なつは、ゆっくり目を開けた。
「……ここ……」
「なつくん!!」
こさめが駆け寄る。
「よかった……ほんとに……」
なつの目から、涙がこぼれる。
「……夢かと思った」
「夢じゃないよ。生きてる」
こさめは、なつの手を強く握った。
「もう一人にしない」
「……ありがとう」
なつの声は小さかったけれど、確かだった。
春。
病院の庭。
少し痩せたなつは、こさめに支えられて立っていた。
「……桜」
「ほら、約束守れた」
風が吹いて、花びらが舞う。
なつは空を見上げる。
「……生きててよかった」
こさめは泣きながら笑った。
「オレも」
なつは、そっとこさめの手を握る。
「これからはさ……一緒に“普通の明日”を生きよう」
「うん。ずっと一緒」
二人の上に、桜が降り注ぐ。
それは、
“もう失わない未来”の始まりだった。
✄——————-‐——————-‐——✄
よかったら
コメント💬といいね💖残してください
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎⇝🩷💜
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!