テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,689
#続かないとオーバーブロット
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第一話「黒き竜の目覚め」
始めます。
⸻
〔朝・オンボロ寮 リビング〕
うららかな朝。
陽の光が差し込むオンボロ寮のリビングでは、フェイド、ユウ、グリム、エース、デュースが朝食を囲んでいた。
グリム:「ふぁ〜……今日は授業なしか。オレ様たち、ようやくゆっくりできるな!」
ユウ:「学園の修復が終わって、行事が中止になったからって……休みって感覚にはならないよね」
デュース:「そういえば、最近学園内もなんだか……緊張感がある気がする。先生たちの動きも妙だし」
エース:「まーたなんか事件でも起きるんじゃねーの? 魔法石盗まれるとか、寮ごと吹っ飛ぶとか」
フェイド:「……そうでなければ良いのですが」
彼女――フェイドはそう穏やかに言いながらも、
その瞳の奥に宿る光は、どこか遠くを見ていた。
⸻
〔午後・学園中庭〕
花が揺れる中庭を歩くフェイドとユウ。
向かいから、姿勢正しく歩いてくるセベクの姿が見えた。
セベク:「おまえたちッ!何をたるんだ顔で歩いている!!」
ユウ:「あっ、セベクくん……」
セベク:「マレウス様が今朝、学園をお歩きになっていたのだぞ!?
その尊き足音を聞き逃すとは、何たる不敬!!」
フェイド:「……セベクさん。静寂の中で足音を聞けるのは、心が澄んでいるからこそ。
そうでしょう?」
セベク:「なっ……ぬぅ……その言い回し、妙に納得してしまった……っ!」
ユウ:「(ネメシスってほんと、こういうとき言葉選びがすごいな……)」
⸻
〔その日の夕方・図書館裏の林〕
空はわずかに曇っていた。
フェイドはひとり、図書館裏の林を歩いていた。
鳥の声もなく、空気は静まり返っている。
フェイド(心の声):「……魔力の流れが不自然。
大気の揺らぎが“竜”の息吹に似ている……まさか……」
すると、突然空が暗くなり――
ドォン……
遠く、雷鳴が響いた。
フェイドは立ち止まり、空を見上げる。
フェイド:「……マレウス・ドラコニア。
その目覚めが、“災厄”でないことを願います」
第二話「式典服と王の影」
–美しく整えられた外見の裏で、静かにうねる“不安”。
ディアソムニアに響く重く静かな足音が、ついに扉を開く–
⸻
〔翌朝・ナイトレイブンカレッジ 式典ホール〕
いつもよりも荘厳な空気が漂う式典ホール。
全校生徒が集められた中、フェイドは他の一年生たちとともに、少し緊張した面持ちで並んでいた。
グリム:「式典服着てるけど、別に入学式ってわけでもないんだぞ?」
ユウ:「うん……でも学園長が全員集めるなんて、ただの行事じゃないと思う」
エース:「また厄介ごとじゃなきゃいいけどな~。なんか空気がピリッとしてる」
デュース:「あそこ、リドル先輩にレオナ先輩……オーバーブロットした人たち、全員来てる」
フェイド:「“鍵を持つ者”が揃っている……まるで、封印の儀式のよう」
その呟きは誰の耳にも届かぬよう、風のように静かだった。
⸻
〔舞台壇上・学園長の挨拶〕
学園長・クロウリーが壇上に立ち、厳粛な声で語りはじめる。
クロウリー:「生徒諸君。
本日、諸君をこの場に集めたのは、ナイトレイブンカレッジの歴史上、重大な決断に関わることです」
会場にさっと緊張が走る。
クロウリー:「……我々は今、“とある変化”に直面しています。
それは、我々が封じてきた古き存在――かつて災厄と恐れられた“竜”の鼓動」
その言葉を聞いた瞬間、フェイドは静かに目を閉じた。
フェイド(心の声):「――目覚めるのですね、マレウス・ドラコニア」
⸻
〔同時刻・ディアソムニア寮〕
静かな森に包まれたディアソムニア寮。
重厚な扉が静かに開き、ひとりの人物が廊下を歩いていた。
マレウス:「……騒がしい。世界が、目を覚ましたかのようだ」
その声には、怒りでも、喜びでもない。
ただ“予感”と、“覚悟”が宿っていた。
その背中を、影のようにセベクとシルバーが黙って追う。
セベク:「マレウス様。やはり、魔力の流れが不穏です。
何かが……こちらに近づいているような……」
マレウス:「……いや。
“何か”ではない。“世界そのもの”が、僕に牙を剥き始めたのだ」
⸻
〔オンボロ寮・夜・静かな日常〕
その夜。
オンボロ寮では、夕食後にいつものように穏やかな時間が流れていた。
グリム:「ネメシスぅ、デザートもうないのか~?」
アウル:「ええ。あなたが三つも食べた後ですからね、グリムさん」
グリム:「うっ……しょーがないんだぞ!美味かったんだぞ!」
ユウ:「ふふ、明日はまた買い出しに行かないとだね」
フェイド:「……ええ。日常は、崩れるその時まで、平穏で在るべきです」
その言葉の奥にある、“ひそかな不安”を
ユウもグリムもまだ、気づいてはいなかった――
第三話「雷雲は森に集う」
–静かに積もる異変と、過ぎゆく日常。
そしてついに、王が“世界”に背を向ける–
⸻
〔ナイトレイブンカレッジ・中庭 午後〕
翌日。曇り空の下、学園の中庭には珍しく人の気配が少なかった。
空気はしっとりと重く、草木もどこか沈黙しているようだった。
フェイドは一人、古びた石畳の上を歩く。
彼女の視線は、何もない空を静かに追っていた。
フェイド(心の声):「風の流れが滞っている……この“止まり方”は、魔力によるもの。
もう……すぐ、ですね」
その時――
「やあ、ネメシス。やっぱりここにいたか」
声をかけたのは、ルーク・ハント。
ポムフィオーレの寮服姿で、朗らかに微笑んでいる。
フェイド:「ルークさん。……こんな日にお会いするとは、少し意外です」
ルーク:「フフ。野生の直感というやつさ。……今、この学園で一番“面白い風”を纏っているのは、きみだと思っていたよ」
フェイド:「……褒め言葉として、受け取っておきますね」
ルーク:「きみの仮面がいつ落ちるか、私はいつも楽しみにしている。
けれど……それが今日でないことを祈ろう」
軽やかに去っていくルークの背を見送り、
フェイドは静かに目を伏せた。
⸻
〔ディアソムニア寮・正門前〕
その頃、森の中に佇むディアソムニア寮では、
黒い霧のような魔力が門の周囲をうっすらと包んでいた。
シルバー:「……やはり、気配が濃くなってきている」
セベク:「このような霧……マレウス様が無意識に発しておられるものなのか……?」
その時、扉が静かに開き、リリアが姿を現す。
リリア:「ふふ……やはり、時が来たようだな。マレウスが“決断”を下す日は近いぞ」
セベク:「リリア様、それは一体……!?」
リリア:「……この学園が“均衡”を保てていたのは、あやつが黙って座していたからじゃ。
だが、今や世界の方が、彼に牙を剥こうとしている。……ならばどうするか、答えはひとつだろう?」
彼の言葉に、セベクは強く拳を握る。
⸻
〔オンボロ寮・夜〕
夕食を終えた後、ユウとグリム、フェイドの三人は暖炉の前でくつろいでいた。
グリム:「なーんか最近、ずっと空が暗いぞ。
この前も雷鳴ってたし……気味が悪ぃぞ」
ユウ:「うん……あれ以来、マレウス先輩も姿見せてないし……」
フェイド:「……今、この学園は、“夜明け前の静けさ”に包まれているのです。
本当に怖いのは、“沈黙”が破られたその時――」
その時、空が――**ピシャアッ!!**と裂けるように雷光を落とした。
外では、風が暴れだす。
グリム:「うわっ!?今の見たか!?空が……!」
フェイド:「始まりますよ。……“王”が、“動く”のです」
第四話「静寂なる離反」
Scene.1:森にて、独り行く影
冷たい霧が足元を這い、森の奥から雷鳴が低く響く。
君は一人、ナイトレイブンカレッジの裏手にある小道を通り、ディアソムニア寮を目指していた。
草木はざわめき、風が森をすり抜ける中――
目の前に、黒く荘厳な門が立ちはだかる。
その扉は、まるで「選ばれし者にしか開かぬ」と言わんばかりに、
不穏な沈黙をたたえていた。
君は――言葉を発さず、ただその場に留まる。
黒き王の傍らに、沈黙のまま佇み続ける選択をした。
⸻
Scene.6:言葉なき、共に在るという選択
風が、森を通り過ぎていく。
フェイドは、マレウスの隣に静かに立ち、
何も言葉を交わさぬまま、その沈黙を共有した。
マレウスは最初、その選択にわずかに眉をひそめた。
だが――やがてその目元が、ほんの少しだけ緩んだ。
マレウス:「……お前は変わらぬな。口では抗いながら、心は人を見捨てぬ。
それが、お前の弱さであり……強さでもあるのだろう」
言葉をかけられても、君は何も返さなかった。
ただ、小さく首を傾げて――
それが、“ここにいる”という意思の表れだと、彼は気づいている。
マレウス:「では、僕も言葉を飲み込もう。
この夜の行き着く先が、どれほどのものか――互いに見届けるとしようか」
霧の深まるディアソムニア寮の中、
黒と灰の影が寄り添うように、静かに佇んでいた。
世界が大きく揺れるその“予兆”の只中で――。
第五話「花影の眠り」
Scene.1:沈む日常、裂ける影
翌朝。オンボロ寮。
霧のような昨夜の感覚を引きずりつつも、いつもの時間が始まろうとしていた。
朝食の香ばしい匂いが、ほんの少しだけ、現実に引き戻してくれる。
グリム:「おいネメシス、パン焦げてんぞ。こっちのも食べてくれていいのか?」
ユウ:「あっ、それ私の分だから!ダメだよグリム!」
フェイドは、微笑を浮かべながらトースターの前で小さくため息をつく。
この“ありふれた朝”が、どれほどかけがえのないものか――昨夜、強く感じていたのだ。
そしてふと、フェイドの視線が止まる。
窓の外。学園の時計塔の上に、奇妙な影が――
いや、それは――
フェイド(心の声):「……誰かが、結界の中に侵入を……?」
霧と共に、何かが学園に入り込んでいる気配。
それは“異変”の端緒か、それとも……。
誰にも告げず、静かに背を向ける。
アウル――君は、“気配”の正体を確かめるため、結界の外へと歩を進めた。
⸻
Scene.2:境界の外、忍び寄るもの
朝の陽が差し込む学園の裏手。
木々は揺れず、風すらない――
それなのに、空気がわずかに「濁っている」。
フェイド(心の声):「やはり……この“鈍さ”は、魔力干渉によるもの。
結界の外、ほんのわずかに歪みが生じている……」
周囲を警戒しつつ、結界の薄まったポイントへと歩を進める。
その時――
ピキ……ッ!
空間が、ひとひら“裂ける”ような音を立てた。
何かが、こちらを覗き込んでいる。
この学園の中へと、入り込もうとしている何者かが。
⸻
フェイドの手には、わずかに結界の“裂け目”が見える。
そして、その向こうには――
……人影。
フードを深くかぶった人物が一人、佇んでいた。
フェイド(心の声):「……これは……? 学園関係者ではない……。魔力の質も、異質……」
その人物は、気配を感じ取ったのか、ゆっくりとフェイドの方へ顔を上げ――
……だが、顔は見えない。
そのまま、スゥ……と影のように姿を消した。
即座に追うこともせず、誰かに知らせることも選ばず。
ただ静かに、そこに“仕掛け”を施す。
冷静で、的確な判断――まさに“フェイド”らしい対応だった。
⸻
Scene.3:仕掛けるは静寂の鎖
フェイド(心の声):「……下手に動くよりも、まずは“証拠”を取るのが先決、ですね」
ゆっくりと魔力を展開する。
それは目に見えぬ“結界の断片”を再利用した、拘束と感知の魔法。
まるで呼吸するように自然な動きで、空間に繊細な“罠”を張り巡らせる。
フェイド:「……これで、次に侵入を試みた時には、確実に“痕跡”が残るでしょう」
指先が静かに動き、罠の最後の縁を閉じると――
――カチリ。
音もなく、結界の“縫い目”が閉じられた。
風が吹き、鳥の鳴き声が戻る。
まるで、何事もなかったように。
でも――フェイドは知っている。
“異物”は確かに、そこにいた。
⸻
そのままオンボロ寮へ戻る道すがら、
空はほんの少し、曇り始めていた。
✦ 日常パート:オンボロ寮にて
帰ってきたフェイドを、グリムが尻尾を膨らませて迎える。
グリム:「おっせーぞ ネメシス!どこ行ってたんだ? 朝メシ冷めちゃったんだゾ!」
ユウ:「ネメシスってば、いきなり姿消すんだから心配したんだよ。……でも、戻ってきてくれてよかった」
フェイド(微笑を浮かべて):「申し訳ありません。
少し朝の空気を吸いたくて……。でも、もう戻りましたよ」
ユウとグリムの何気ないやりとり――
それが、ほんの一瞬でも、あの異物の気配から心を切り離してくれる。
この“日常”を守るために、自分は何を選ぶべきか。
その問いが、フェイドの胸に静かに根を張っていく。
フェイドは一度でも呼吸を深くするために。
家族として、そして“真実を知る者”として――
あの双子のどちらかに、静かに会いに行くことを選んだ。
⸻
第五話「花影の眠り」
Scene.4:珊瑚の記憶、藻の影にて
放課後、君はオクタヴィネル寮の地下へと足を運ぶ。
水槽の光が、空気よりも静かに君を照らす。
「おや、いらっしゃいませ――フェイド」
そう迎えたのは、やはり彼だった。
ジェイド・リーチ。
その笑みは、相変わらずの丁寧さを纏っていたが――
どこか、少しだけ憂いを含んでいるようにも見えた。
ジェイド:「わざわざこのような時間に来られるとは……何か、変化でもありましたか?」
フェイドの顔を見て、彼はすぐに“察して”いた。
「フロイドお兄様に会いに行きます」
ジェイドに丁寧に一礼しながら告げる。
フェイド:「申し訳ありません。今日は……フロイドお兄様に、会いたくて来たのです」
ジェイドは、微かに目を細める。
ジェイド:「……ふふ、承知しました。
彼は今、自室で海月(くらげ)クッションと遊んでいると思いますよ。どうぞ、ごゆっくり」
軽く会釈を返した後、静かに寮の廊下を歩き出す。
水音が、気配に合わせて優しく揺れていた。
Scene.5:歪んだ静けさ、彼の間で
フロイドの部屋の扉をノックすると――
フロイド:「あ~い。どしたの?フェイド?」
部屋の扉が開き、ゆるく笑ったフロイドの姿が現れる。
その表情はいつもの“気まぐれ”で彩られているけれど――
フェイドの顔を見た瞬間、ほんの一拍、目が真剣になる。
フロイド:「……なんか、やなモン見た顔してんね。
ダレ?いじめたの」
フェイド(微笑んで首を振る):「いいえ。ただ……少し気になるものを見つけただけです」
フロイド:「ふーん……気になるなら、全部吐いちゃいなよ。
フェイドの“詰まってるとこ”、引っこ抜いてあげるよ~?」
彼はベッドに腰かけ、海月クッションを抱えながら、
空いた隣をポンポンと叩いてみせた。
「そっと隣に座り、昨夜のマレウスとの会話と今朝の出来事を話す」
静かに頷いて、彼の隣に腰を下ろす。
その身の動きは、どこまでも静かで優雅――
けれど、その瞳はほんのわずかに揺れていた。
フェイド:「……ありがとうございます。少し、貴方に……聞いてほしいのです」
昨夜のマレウスとの対話。
そして今朝、結界の“裂け目”から見えた影のことを、
一つひとつ、言葉を選びながら彼に話した。
フロイドは、黙って聞いていた。
クッションを抱えたまま、じっと、じっと――
その表情からは、普段の気まぐれさが少しずつ薄れていく。
⸻
フロイド:「……ふぅん。へぇぇ……なるほどねぇ。
フェイドが、そこまで“警戒してる”って、けっこうレアかも」
フェイド:「……いえ、私はただ……この“日常”を、守りたいだけです」
フロイド:「“日常”ねぇ……うんうん。フェイドらしいや~」
すると、彼はひょいと立ち上がり、部屋の窓の外を見ながら口元だけで笑った。
フロイド:「ウミウシ先輩もさ、“王様ごっこ”じゃ済まないトコに来てんだね。
オレ、あのヒトのそういうトコ、嫌いじゃないけど……」
くるりと振り返り、フェイドのほうをまっすぐに見つめて――
フロイド:「もしフェイドが“全部止める”って言うならさ、
オレ、ちょっとは付き合ってあげるよ」
⸻
彼の声はいつものように軽く、気まぐれなままだ。
けれど、フェイドは知っている。
フロイド・リーチが“本気”を出す時――
それは、誰かの“感情”が、彼の心を動かした時だけだ。
フェイド(心の声):「……ありがとうございます。フロイドお兄様。」
その言葉は、声に出さずとも、彼にはきっと伝わっていた。
第六話「竜の目覚め、時計塔にて」
Scene.1:揺らぐ鼓動、崩れた時の音
それは昼休み。
教室に届いた学園放送の声が、唐突に途切れた。
――ガガガ……ッ……キイ……ィ……ザザ……
生徒たちがざわめく中、フェイドは、
ふと、背筋をなぞる冷気に気づいた。
フェイド:「この魔力……“彼”が……」
次の瞬間――
学園中に響き渡る「鐘の音」。
それは本来、授業の切れ目などに鳴らされるべきもの。
けれど今は――明らかに“違う”音色だった。
低く、重く、空間を押しつぶすような響き。
その中心が、時計塔であることを――知っている。
✦ 学園前:混乱の始まり
駆けつけた先、校舎の前には
既にマレウス・ドラコニアの姿があった。
学生たちは彼のただならぬ気配に、遠巻きに距離をとっている。
その中央に、まるで舞台に立つように佇む竜の末裔。
マレウス:「……夢を見ていた。
変わらぬ日々、平穏、仲間たちとの日常……。
だが、それがいつしか“幻”だと知った時、僕は――失ったのだ」
彼の声は静かだ。
それが、何よりも恐ろしい。
マレウス:「僕は、もう“待つ”ことをやめる。
この世界に――祝福を与えよう」
マレウスの放つ気配に対して、ただ真正面から挑むことを選ばなかった。
それは臆病ではない。
――慎重であること、そして“信頼”を持つ者を頼るという、確かな強さだった。
第六話「竜の目覚め、時計塔にて」
Scene.2:深き海より、目を覚ますものたち
急ぎ、魔力を抑えながら人混みを抜ける。
誰にも“気づかれないように”、あくまで“ネメシス”として行動しながら。
向かった先は、オクタヴィネル寮。
その廊下の先――水音の奥に、彼らはいた。
扉の向こうに気配を感じたノックをするまでもなく、
ジェイドが静かに扉を開けた。
ジェイド:「……おや、これはまた。ずいぶん早い再訪ですね、ネメシスさん。
……いいえ、“フェイド”。これは、ただ事ではありませんね?」
すぐに後ろからフロイドの顔も覗く。
フロイド:「うわ、なんかキナくさ~い匂いしてるじゃん。
マレウスくん、ついにぶっ壊れた?」
フェイドは、小さく頷く。
フェイド:「……彼が、動きました。
“日常”を手放し、滅びの理へと進もうとしています。
――これ以上、独りでは……抱えきれません」
ジェイドは目を伏せて、静かに呟く。
ジェイド:「それは……いよいよ“選ぶ”時が来た、ということですね。
我々が、“誰の隣に立つのか”を――」
フロイド:「いいよ。フェイドがそっち行くなら、オレもそっち~♪
だってつまんないもん、世界壊すだけとか~」
ふたりの目が、静かにフェイドへと重なる。
フェイド:「……ありがとうございます。心強いです、」
✦ 作戦会議:オクタヴィネル寮・特別室
地図を広げ、マレウスの動向や学園の魔力の乱れを解析しながら、
作戦を組み立てていく。
ジェイド:「……彼の魔力の発動源は、やはり“時計塔”でしょう。
そこには、学園中の結界と魔力制御の要が集中しています」
フェイド:「もしそこを完全に掌握されれば、学園全体がマレウスの“王国”となってしまう……」
フロイド:「じゃ~まず、そこを叩く?」
ジェイド:「いえ、“今のマレウス”相手に正面から衝突するのは得策ではありません。
一度、彼の“核”――感情の揺らぎの根源を見極める必要があるかと」
フェイド(心の声):「……それが、彼の“大切なもの”を失ったことにあるのなら――」
「リリアの元を訪ね、マレウスの“個人的な記憶”について情報を得る」
フェイドは、マレウスという存在の“核”――
彼の心に何が起こったのかを探るべく、
その最も近しい者へと会いに行く決断を下した。