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恵
214
#恋愛
ピデピー
1,108
のあ
ゆーり。
35
1月、美しい紅葉も枯れ落ちすっかり寒さが厳しくなり真冬と呼ばれる時期になっていた。
この地域の冬は毎年寒い、そんな中でも地球を温めようと太陽は頑張っている。でも太陽でもどうもできない寒さなんて僕にはどうでもよかった。
なぜなら今僕の隣にいる彼女、美雪がいるからだ。僕には不釣り合いなくらい可愛くて見てるだけ、いや、近くにいるだけでも心から全身にいたるまで全てを温めてくれる。
この人さえいれば何もいらない、16という年齢にしては早い決断なのかもしれない、けれどそんな年齢でも決断をすぐに決めれるくらい僕にとっては最高の存在なのだ。
冬になる前、椛が色づいていて紅葉の綺麗な日、忘れもしない9月10日、僕は美雪に告白した、告白のテンプレートのように礼のような姿勢で手を前にぴんっと突き出す、手を握ってもらいながら、よろしく。と言われれば告白は大成功、拒否される時は頭を下げられ、ごめんなさい。と言われる。たった数秒これだけの数秒で人生は大きく変わるのだ。
僕は美雪のどんなところに惹かれたかと言うとそれは数え切れないほど言える。でも、一つだけ絶対的な理由がある。僕は美雪の口癖が何より好きなのだ、好きすぎるのだ。たかが口癖でなぜ告白を決めるくらいに好きになってしまったのか。僕はあまりよくわかっていなかった。ただ好き、誰よりも美雪のことが好き。それだけは自分が唯一誇れて自信を持てるものだ。
美雪の返事を待つ….下を向いているはずなのに床が見えない、目をつぶっているのかいないのか自分でも理解できないくらい頭の中が色々な情報で埋まっていた。失敗したら何言おう、泣かないようにしないとな、成功したらどうする?抱きついてみる?さすがにキモイか?などと考えていた。すると、美雪がいつもの口癖を言う。
美雪「人生かけれる覚悟あるの」
そう、この口癖だ僕が美雪を何よりも好きな理由。僕は昔から覚悟がなかった。基本的に何でもできて他人に頼らず一人でやる、それで何不自由なくできるのだ、不器用なやつを手伝い自分の方ができる。と少し優越感に浸ってさえいた。いわゆる器用貧乏なのだ。だいたいできる、それなのに満たされない。その道を極めたものの方が褒められる、自己肯定感を高められない。高めようとして少し極めようとしてみると他が疎かになってミスして他の人にバカにされる。そんな気分味わうくらいならずっと中の上で下を見下して優越感に浸っていたい。人間誰しもそう思う。辛い道からは逃げたいのだ。偉人は達成した、その辛い道の先に何かがあると信じて没頭した。それでも、成功してない人などざらにいるのになぜそんなに夢中になれるのか、僕には理解できなかった。
一生自分だけの安全圏にいて、自分は出来るやつだ。あいつは天才なだけ。恵まれているだけ。と心の中で言い続けた。そんな生活を続けていると体も慣れてくる。高校受験前、自分はできるから大丈夫、あんなに必死に勉強して成果が出なかったらバカみたい。舐めていた。そして受験が終わり合格発表の日。自分がやってきたことはどれだけ愚かだったのか、その日やっと理解した。しかし、直さなかった、直せないのだ、何年も自分が上だという優越感に浸り続けて体を慣らしてしまったから。
そして、僕は滑り止めの高校に入った。余裕で入れてしまった。だから、僕はさらに調子に乗った。どうせ全員自分より頭が悪い。おごっていた。最初のテスト、ノー勉。最下位だった。全員を見下していたため友達はできず。作られていくグループから離れていく。気晴らしに部活に入ることにした。理由は下がってしまった自己肯定感を高めるため、部活は強いところがなかった。だから、初心者をいじめる。そんな目的で入ろうとした。
色んな部活を見て回って7月、野球部に入ることにした。下手なやつと上手いやつの格差が1番出るのは野球部。と中学の時聞いたことがあったからだ。
入部届をマネージャーに出そうとした時あの言葉を言われた
美雪「人生かけれる覚悟あるの」
真剣な顔で言ってきた、ただの遊びの部活。たかが部活、でも、この時だけはたしかに心を少し揺さぶられた。
「キモっ強豪でもないのに人生とか語っちゃってさ」
彼女は黙っていた。何も言い返してこなかった。ただ黙って入部届を受け取ってくれた。
美雪「あんたのこと部員だとは絶対思わないから。」
去り際に言われた、ただそれだけ。それを言ってきた。
学校終わりの午後、部活に行ってみた。全員下手くそだった。自分はそれなりにできた。やっぱり俺出来んじゃん。テストの点数とかたまたまだよなやればできるしまだ余裕でしょ。
またおごってしまった。
部活終わり、優越感に浸りながら帰りの支度をして帰ろうとするとあのマネージャーが本を渡してきた。平家物語と書いてあった、読んだことはある。こんなところ勉強する必要がなかったため内容はほとんど覚えていない。
「なにこれ」
美雪「付箋貼ってあるところ読んで、今のあんたにピッタリだから!!」
少しキレ気味に言ってきた。
「読むわけねぇだろバカ」
避けた。こいつは自分とは何か違う、そう心が反応していたからだ。
美雪「それ、読まないなら退部してもらうから!」
そう言ってきた、自分的にはどうでもよかった。優越感には浸れた、もう退部してもいいくらいだった。でも何故か本当に何故か分からないけど、やめたくない。そんな考えが頭をよぎった。
「読んでなんか意味あんのかよ。」
何も考えず言い放つ、言葉を選ぶことなどしない。
美雪「自分のことしっかり分析したらそれの内容わかるようになるよ。」
平家物語、と書かれた本を乱雑にバックに詰め込んで走って帰った。
家に着き、早速読んでみる。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す、おごれる人も久しからず、ただ春の夢のごとし。たけき者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。
付箋が貼ってあるページを開いて最初に飛び込んできた。その部分だけがマーカーで引かれていた。僕は意味を知りたくて急いで調べた。
自分だった。自分の事を言われていた。
「勢いはねぇよ….」
ひとりでそう呟いた。
コメント
1件
ねらちさん、読ませていただきました…! 「人生かけれる覚悟あるの」っていう美雪さんの言葉、めっちゃ刺さる…。 主人公の“驕り”とか“優越感に浸るクセ”が、すごくリアルで苦しいけど、だからこそ平家物語の一節が響いてくる構成が巧いなあって思いました。 次、どうなっていくのか気になります。続きも読ませてくださいね🌙