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第72話「希望なき支配」
――神の王アダム、封印。
その報せは、まるで時の流れすら止めてしまったかのように、戦場を凍りつかせた。
「……な、なんだ……この気配は……」
アポロンが思わず空を仰ぐ。
空は歪み、昼であるはずの神の世界が、黒く染まり始めていた。
直後、神殿の頂より降り立ったのは――
「お待たせしたな。
これが、新たな王の姿だ」
――サタン。
だが、その姿はもはやただの“闇の王”ではなかった。
右半身には闇の炎が、左半身には神々しい光が宿る。
その力は、アダムの神力を取り込み、進化した完全融合体――
“双極の王”サタンであった。
⸻
戦場に緊張が走る。
神の幹部たちが一斉に構えるが、
サタンの気配はそれすらも圧倒していた。
「……なんてことだ……」
ポセイドンが言葉を失う。
「アダム様が……やられた……?」
アテナは剣を震わせながらも前に出ようとする。
アフロディーテは歯を食いしばり、
「ふざけないで……あの方が封じられるなんて……!」
そのとき、ゲズたち星の英雄も上空の異変に気づき、駆け寄ってきた。
「……この気配……アダム様が……!?」
リオンが震え声でつぶやく。
セレナは唇を噛みながら、空を見つめる。
「兄さん、これは……本当にまずいわ」
⸻
そして――サタンはゆっくりと手を掲げた。
その手には、漆黒と金色が混ざり合った**“支配の印”**が浮かぶ。
「これより、この世界のすべては我がものとなる。
神々も、英雄たちも、選択肢は二つだ。
――膝をつくか、滅びるか」
その瞬間、空間に黒い裂け目が走る。
そこから、かつてのルシフェルの軍団に近い、異形の魔物たちが次々と現れ始めた。
「これは……軍勢か!?」
アレスが叫ぶ。
ベルゼブブ、アスモデウスら悪魔幹部も、サタンの進化に息を呑む。
アザトースがほくそ笑む。
「……これぞ、混沌の王。
今こそ宇宙は我らのものとなる……!」
⸻
星の英雄たちはなおも前に出ようとするが――
「待て、ゲズ」
ウカビルが腕を伸ばす。
「今はまだ動く時ではない。
神の軍団がどう立ち向かうか――見極めねばならん」
ゲズは拳を握りしめるが、頷いた。
「……わかった。けど、目は逸らさない。
絶対に……この戦い、見届けてやる!」
⸻
空は裂け、世界は揺れる。
神の王なき今――
混沌と支配を掲げるサタンの覇道が、幕を開けた。
次回、第73話
「反撃の光、再び」
神々は立ち上がれるのか?
そして、星の英雄たちの運命は――