十二月目。
「乱歩さん、来てくれたのですね。」
「…お前が今日死ぬからだよ、」
あぁ、私は矢張り今日_____
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「乱歩さん、私の自殺癖についてはどう思います?」
「自殺するくらいなら僕と居て欲しい」
「じゃあ自殺は少し控えます。…代わりに、乱歩さんが私の事を殺してくださいね」
「、考えておく。」
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一年と半年程前、乱歩さんと私が付き合って余り時間が経って居ない頃。
そんな約束?を交わした。
「……乱歩さん、…死ぬ前に、貴方が殺してくれませんか?」
「…は、?」
「死ぬなら、貴方の手で死ぬのがいいのです。…駄目ですか?ほら、この銃でやって下さいよ、」
懐に仕込んでいた銃を手渡し、酷く怯えて泣きそうな乱歩さんをあやす様に頬を撫でる。
銃を受け取った乱歩さんは、震えた手で安全装置を外し、私の心臓を貫く様、胸に当てる。
「…其れで良いんです、ほら、やって下さい」
「…っ、」
銃を持つ乱歩さんの両手を優しく包む。
___瞬間、大きく乾いた音を立てて銃が撃たれる。
震える手により急所から少しズレたようで、痛い。
でもそれが乱歩さんの手により齎された物だと思うと、痛み迄愛おしく思えてしまう。
「…太宰」
ぽた、と胸に何かが落ちる感覚。
乱歩さんが泣いている。
泣き声を抑え込む様にしているが、嗚咽が時偶漏れ出す。
ぼと、ぼと、ととめどなく涙が零れ落ちる。
意識が薄れる。
あぁ、やっとだ。
乱歩さんが、私を殺してくれたお陰で、一つも怖くない。
___嗚呼、そうか。
あの恐怖は、乱歩さん以外でどうにかしてしまうというのが怖かったのだ。
「……叶う物なら、最後にもう一度、」
「貴方に愛されたかった」
は、と言う乱歩さんの声が、ほんの少しだけ聞こえた気がした。
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