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「あの、研磨くん…」「?どうしたの?」
「えっとね、……私たち、別れよう?」
「……は?」
――
時は昼まで遡る。
授業を受け、昼休みに入ってから周りがガヤガヤしだす。私は早くご飯をすまそうとお弁当を取り出すと声をかけられる。前を向くと保護欲が湧いてくるいかにも小動物系の可愛い女の子がたっていた。
「あの、ちょっと話したいんですけどいいですか?」
なんて語尾にはてなをつけているが返事ははい以外許さないという圧を感じる。
「あ、はい。大丈夫ですよ。」
「えっと、着いてきてもらっても…?」
「分かりました。」
手を胸の前で握って少しモジモジしながら聞いて来たので了解の意を示す。
そうして彼女を先頭について行くと空き教室に着いた。2人とも中に入ると彼女はドアの鍵を閉めてそのまま私の方に振り返る。
「えっと、それで話って…?」
「単刀直入に言うけど、研磨くんと別れて?」
そういう彼女は先程の大人しい雰囲気とは違って、自信に満ち溢れているような表情をしながらこちらを睨みつけてきた。
「えっ……な、なんで?」
私がそう聞くと、頭の上で結ばれた長いポニーテールを揺らしながら近ずいてきて、手を後ろで組んで少し腰をおり上目遣いしながら言う。
「そんなの、私が研磨くんと付き合いたいからに決まってるでしょ?」
「っそ、そんな…」
「でも、研磨くんも言ってたよ?○○ちゃんと別れたいって。みんながいる前で好き好き言われるの嫌だし、昼休みに一緒に食べるとゲーム出来なくなるってさ。それに、あなたと研磨くん全然釣り合ってないじゃん!あなたみたいなぶすと違って私、可愛いし。」
なんて理由をつらつらと並べていく彼女。話によると、研磨くんが私の告白にOKしたのは断るのがめんどくさかったから、本当は私と付き合いたくないけど、無理やり付き合って疲れるしめんどくさいから迷惑しているっていうことだった。
「……本当に、研磨くんがそんなこと言ったの…?」
「ちゃ〜んとそう言ってたよ?そこまで言われるなんて可愛そっ!」
そう言いながら嘲笑うようにニンマリ笑うと彼女は話を切り上げる。
「あっ!ちゃんと別れてよね?」
教室をでかけていた彼女はこちらに振り返って語尾にハートでもつけながらそう言った。出た瞬間にいつもの大人しい表情に変えるから彼女は本当に演技派だ。
とりあえずどうにかする前に本人に確認が必要だ。今日は久しぶりに部活が休みで放課後一緒に帰る約束があるから、その時に聞こう。
そう思いながら教室に戻ってお弁当を食べる。
――
放課後になり、教科書やノートなどをカバンに入れて研磨くんが待っているであろう三組へ向かう。
教室を覗いて研磨くんを見ると、隣にはあの子がいた。一緒にスマホでゲームをしながらたまに話している。隣の彼女が先に私に気づいて、微笑みかけてくる。そのあと、彼に話しかけて笑いながらゲームを続ける。
失礼しますと声を出してから教室の中に入って研磨くんに近づく。
「研磨くん、一緒に帰ろう?」
そう声をかけるとこちらを見てから直ぐにスマホの電源を切ってしまう。
「うん。」
そうだと思いついた案を実行してみることにする。……あの子が隣にいる訳だし。
「あの、研磨くん…」
「? どうしたの?」
「えっとね、……私たち、別れよう?」
ガヤガヤしていた教室は一気に静まり返った。 みんなは何事かとこちらを見ている。
「……は?」
「ごめんね、私研磨くんに迷惑かけてるの気づかなくて……」
「っな……」
目に涙をためながら少し俯くついでにまだ横にいる彼女を横目で見る。最初は少し目を見開いて驚いているようだったけど、今ではにこにこしながらこちらを見ている。
「その、聞いたんだけどね、みんなの前で好きって言われるの嫌だって、あと昼休み私と食べたらゲーム出来ないって。それに、私と付き合ったの断るのがめんどくさかったからなんでしょ…?」
「……はぁ?聞いたって誰から?」
彼は焦っている様子で聞いてくる。
ふふ、珍しい。
「えっと、××ちゃんから……」
そう答えると、彼は隣にいるあの子を見る。目を開きながら真顔で殺気を出す研磨くんは私でも少し怖い。
「本当にごめんね、今まで気づかなくて…… 私、研磨くんに迷惑かけたくない… それに、私たち 全然釣り合ってないんだって、みんなにそういうこと沢山言われるの。最近、本当に辛くてこのままじゃ研磨くんのことも嫌いになりそうだから……」
嫌いになりそう、その一言で目を大きく開けた彼はひゅっと喉を鳴らして可愛い顔をする。
「……だから、わか「別れるなんて言わないで!!」」
「お、おれ…や、な…なんっ、やだ……!○○っ、おねが、い…おれ、のことっ…すてないで!!」
そう言いながら抱きついてくる。
彼が私に泣き縋る姿は本当にかわいい…!
少し傷んでいるプリン頭を撫でながら聞く。
「…わたし、けんまくんにめいわくかけてない……?」
「うんっ…!だから、わかれるなんていわないで……!!」
「…わかった、もう言わないよ。」
彼はずびっと鼻をすすっている。かわいい。
××ちゃんの方を見ると、いつもの可愛い顔が嘘のように醜い顔に歪んでいた。
××ちゃんはいつも空き時間に研磨くんと一緒にゲームをして仲を詰めていた。彼女としてそれに嫉妬しないわけは無いし、何より相手には恋愛感情があったのだ。それがあるかないかでだいぶ違う。まぁ、今回のことで今までの努力は地に落ちただろうしね?
今もこちらを睨んでいる彼女にニコッと笑ってやる。
「っこの……!」
「きゃっ」
激情した彼女が手を振りかぶる。
それを見た研磨くんが手首を掴んで止める。
「おれの彼女に何しようとしてんの?」
「ひっ……」
猫みたいな彼の目にアツをかけられながら見つめられて、恐怖を感じたようでさっきまで真っ赤だった顔が真っ青になっている。
「もう、おれと○○に関わらないで。」
「……っなんで、そんな性格の悪い女なの!?私の方がそんなブスより可愛いし、私の方が研磨くんのことずっと好きだったのに!?」
「そんなこと言うそっちの方が性格悪いと思う。それに○○はちゃんとかわいいし、好きになったのに順番なんてないでしょ?」
「っ……」
とうとう泣いてしまった。少し可哀想になって研磨くんを止めることにする。
「研磨くん、もう大丈夫だから…!ほら、帰ろ?」
「いやだ、○○のこと泣かせたんだからこのくらいじゃ足りない。」
「…あっ、じゃあ、この前2人で気になってたカフェ行こうよ!ねっ?」
「……わかった…」
「うん、ほら行こいこ!」
「ちょっとまって、引っ張らないで。」
「えへへ、ごめんね。でも私のために怒ってくれてありがと!」
「そんなの当たり前でしょ。普通、好きな人のこと悪く言われたら怒るもんじゃないの?」
「っ、いきなりそんな事言わないでよ…」
「!…照れてるの?かぁわいいねぇ?」
「っもう!面白がってるでしょ!!」
「ふふ、バレた?」
そんないたずらっ子のように笑う彼を見て、内心ほくそ笑む。
なんで放課後、教室の真ん中でこんなことをしたのか。それは、彼が春高に出場してからモテ始めたからだ。研磨くんのクラスにあの子の他に彼のことが気になってる子がいるのを知っているし、他クラスも噂を聞いてくれたらいい牽制ができるからちょうど良かった。それと、彼は私が面白くないといつ飽きるか分からない。だから偶にはちょっとしたスパイスが必要なのだ。
それになんで私たちが別れるとでも思ったのだろうか?そもそも、告白してきたのは研磨くんの方だし、人前で好きって言うのも『俺の事本当に好き?』とか『みんなの前で好きって言って。他の男に牽制できるから』って彼が言うから言ってるだけなのに。
――
「ねぇ、それおいしい?」
「うん、おいしい。」
「じゃぁ、私も頼んでみようかなぁ。」
「…ひとくち食べる?」
「いいの?研磨くんアップルパイすきでしょ?」
「好きだけど、○○ならいいよ。」
「…ありがと、じゃぁひとくちだけいただくね!」
「うん。…あ〜ん」
「へ!?」
「ほら、はやく。」
「あ、あ〜ん…」
――
カフェを出てから、彼の家に行く。
「ただいま」
「お邪魔します!」
研磨くんの部屋に入ってとりあえず床に座る。
「○○」
「ん?どうかしたの?」
研磨くんがよってきて私のお腹に顔を埋めながらいう。
「もうわかれるなんていわないでね…… おれ、ほんとに心臓とまったかとおもった。」
「ふふ、かわいいね、けんまくん。」
頭を撫でながらそう言葉を落とす。
「おれがかわいいなんていうの、○○くらいだよ……」
ちらっと見える彼の耳は真っ赤になっていた。
「てれてるの?かわいいね?」
「……仕返し?」
「えへ、うん!」
「……はぁ、もう○○には敵わない… ……おれをこんなんにしたんだから、どんなおれでもちゃんと愛してよ?」
ねぇ、研磨くん。私はあなたが笑ってる姿はもちろん、泣いてる姿も照れてる姿も怒ってる姿も嫌で眉にシワが沢山よってる姿もぜんぶぜ〜んぶかわいくみえるんだよ?そんなの__
「もちろん、ちゃんと愛すに決まってるじゃん。」
ねぇ、けんまくん。もっと私に色んな姿を見せて?