-武装探偵社だって、何時か御前を棄てる!!
-どうせ異能力を利用する為に拾ったんだ!!
少し前の記憶。
言葉一つ一つ鮮明に思い出せる。
昨日の仕事の事だった。
その日は大事も無く、 「資料を渡す」と云う簡単な仕事だった。
“簡単な仕事だった筈”なのに _
僕は、資料を渡す為、指定された場所へ向かった。
依頼をしたのは或る会社。
本来ならばその会社員が来る筈なのだが、急に都合が合わなくなり、代理が来るそうだと訊いている。
其処に着くと、もう依頼人の代理さんは来ていた。
あれ?此の人、何処かで見た事がある様な…。
僕は取り敢えず確り声を掛け、挨拶をした。
「初めまして。武装探偵社の者です。〇〇さんで間違えないでしょうか?」
すると依頼人は、驚いた顔で見ていた。
「ああ。合っている」
「では、資料は…」
確り依頼人に資料を渡せたので、挨拶をし、帰ろうかと思った時。
「名前を訊いても善いか?」
「え、あぁ、はい!中島敦です」
依頼人は少し黙り込んで仕舞った。
失礼な事はしていない筈…。
「あ、あの…?」
依頼人は俯き乍ら、何か呟いた。
「………よ」
「何かありましたか…?」
-如何して、御前なンだよ。
え、と思わず声が出る。
刹那。僕は殴られた。
急過ぎて避けようとする事すら叶わ ず、其の儘倒れてしまった。
依頼人の顔お見上げた瞬間、何かを思い出した。
-孤児院の記憶。
孤児院の時、僕を点数稼ぎに使った者は何人居ただろうか。
何人も居た。でも、その中でも非道い奴がいた。
点数を稼ぐ為に僕を何回も、何回も利用した。
暴言だって、暴力だって振るわれた。
この前髪になったのも、其奴が考えた物だったっけ。
そのトラウマを思い出し、直ぐに依頼人と其奴の顔が重なった。
一気に血の気が引くのが判った。
「っ…何故御前なんだ…何故、何故!!」
然う云い乍ら、近づいて来る。
そして、殴られる。蹴られる。
何時もの僕なら抵抗して逃げる事など容易な事だろう。
だが、トラウマの所為か、体が思うように動かなかった。
若しくは_僕の中で“其の言葉”が引っ掛かった所為か。
「然うだ、然うだよ。御前何かが何の理由も無く、武装探偵社に入れる筈が無い」
笑い乍ら云う。言葉を続け乍ら殴られる。
「 武装探偵社だって、何時か御前を棄てる!!どうせ異能力を利用する為に拾ったんだ!!」
違う。探偵社は…そんな事しない…。
「使えなくなった御前は、きっとボロ雑巾の様に棄てられる!!」
そんな筈…無い……。そんな筈…。
「御前の様な“穀潰し”が、報われて善い筈ない!!」
「違う。僕は……、ぼくは…」
殴られ、殴られ、蹴られる。
挙げ句の果てに武器まで使って僕を傷付けた。
僕は、何の抵抗もしなかった。
其れから、僕が血を流しボロボロになったのに満足したのか、資料の入った鞄を持ち不機嫌そうに其の場を去った。
傷が痛い。
でも、あの孤児院に居て、其の後も此の環境に居れば、厭でも痛みには慣れる。
それに僕には虎の治癒能力がある。
此の位、如何って事ない。
-大丈夫だ。
-皆にバレる筈無い。
治癒能力で傷を治す間、空に見えたのは、朧月であった。
-朧月とは、ほのかに霞んで光が淡い月の事。
_依頼人 side
俺の孤児院に哀れな奴が居た。
誰にも味方をして貰えず、何時も孤独で、皆其奴を点数稼ぎの為に利用して居た。
俺もお陰で、“優等生”として扱われた。
皆、然うでもしないと、次は自分が、其奴と同じ目に遭うのだ。
其奴は何時からか、孤児院で見かける事が無くなった。
何故かを考えるよりも先に、俺は孤児院を出た。
-解放される、あの地獄から。
だが、社会はそんな甘いものじゃ無い。
引き取ってくれた夫婦は、俺に家事をさせた。
雇ってくれた会社では、雑用係にされて、給料も少ない。
孤児院と同等のものであった。
いや、孤児院なら、凡て彼奴に擦り付けていたのに…、!
ある日、上司が仕事に代わりに行けと云われた。
断れる訳もなく、指定の場所へ行った。
其処で見たのは、孤児院に居た点数稼ぎ…中島敦だった。
銀白色の髪の毛、不揃いに斜めに切られた前髪、朝焼けの瞳。
特徴は合っているが、そんな訳、そんな訳無い…。
彼奴が…報われて善い筈無い。
其処で、名前を訊いた。其奴は、「中島敦」と答えた。
自然と怒りが込み上げて来た。
此奴は、最初、「武装探偵社の者」と云った。
孤児院でも、訊いた事があった。
上司からも、少し話を訊いた事があった。
此奴は、俺より、善い処に就いている……。
何故、何故此奴なのだ。何故、こんな穀潰しが、。
「如何して、御前なンだよ」
然う云い、俺は其奴を殴った。
何回も、何回も、殴る。
何回も、何回も、蹴る。
根拠も無い暴言を吐き乍ら。
抵抗もしない。
言い返しもしない。
逆に言葉を吐く度、傷付く顔をする中島敦に笑えてくる。
気がつくと、もう大分ボロボロになっていて、満足した。
資料の入った自分の鞄を持ち上げ、一度中島敦を見て、睨み、会社へ帰った。
今日だけは、何時もくすんで暗かった空で光る月が、明月に見えた。
-明月とは、清く澄み渡った輝く月の事。
はろー。
主です。
新作です。
これは、うん、まぁ、「白虎と孤月の光」の題名には自信があります、笑
敦「」←こういう書き方してないので、途中で書きにくいと感じたら変えるかもです…笑
ところで、皆さん新学期始まりました?
私、小6になったんですが、物凄い大変ですね…。
しかも今週はいつもより早く起きなきゃいけない…。
いつもギリギリまで寝て、ギリギリまで準備してる私には地獄。
まぁ別にこんくらい、いいんだけどね。
それじゃ ~ ぐっど・ばい!
コメント
50件
待って待って待って!?好きだと思ったらよくコメ欄で見かける人だったよォおん!!ママぁぁあ(( 取り敢えず好きです。いい夢が見れそう。
えええ小六だったんですか?! 年下(?)なのにすんごい文才が… 多分年は一緒かな…
ああああゆううううかあああああだっったあああああああああ