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「近々戦を行う。その戦でお前に世話を命じていたモノを使う」
ピクリと眉が跳ねた。
まさか本当に戦をするだなんて…
かつてひとつだった国がなぜ四つに分かれたのか、この愚王は本当に知らないのだろう。
簡単な理由だ。宗教観の違い。
宗教観の違いは価値観の違いとイコールであり、価値観の違いは必ず争いを招く。
「……僭越ながら申し上げますと、どのような理由で戦争をするおつもりで?」
「戦争に理由があるか?」
「は…?」
不敬罪とか言ってられない。
驚きのあまり本音が溢れて顔を上げる。
このゲームは飽きたと駄々を捏ねる幼子のように唇を尖らせて溜息を吐き出した。
「国が四つに割れてから、戦争がなくなり平和と秩序が確立された。あの命がせめぎ合う混沌の時代が過ぎさり、生が退屈になった」
何を言っているんだろう…コイツは。
戦争が、本当に人が死ぬ戦いを、盤上の遊戯とでも勘違いしているのか?
「面白いと思わないか?人智を超えた力を持つ悪魔たちが解き放たれ、人々は叫び、血の香りを含んだ風が己の頬を撫でるのだ……平坦な日々を過ごすより余程良い」
王は楽しげにクツクツと喉を鳴らした。
俺は知っている。
コイツが愚王であることは確かだが、それと同じくらいに遊戯に貪欲であることも確かなことだ。
「…とにかく、戦争することは決まっている。森の魔女よ、良いな?」
ドクリと心臓が鳴った。
今ここでコイツを殺してやろうか。
でも、そんなことしたら王の側近たちが何をするか分かったもんじゃない。
らだおくん達はまだ十五歳の子供なのに、戦場になんて行かせられない。
「ァ……」
「そうそう、他二国にもいずれ宣戦布告するつもりだ。ヤツらは…そうだな人質として一匹は残しておこう。それ以外の三匹は戦場に送る…軍は派遣しない」
「…」
「初めは青い鬼からだな!その次に天使、その次に悪魔、人質はあの紳士じみたバケモノにしよう!!」
たった一人で、一国の軍に挑めと…?
一国にどれだけの軍があると思っているんだ…いや、ちがう。違う違う違う。
「ん?どうかしたのか?森の魔女」
コイツは分かっていたんだ。
彼らに俺が絆されていたことに。
彼らに気を許してしまったことに。
分かった上で、待っていたんだ。
「……ご提案が、あります」
お互い、いつ殺してやろうかと考えていた。
「ほう?聞いてやろう」
最初から、仕組まれていた。
「…世界にただ一人の魔女が、たった一人で三国を相手にどこまで歩を進められるか……ご興味はありませんか」
ニヤリと王の口の端が吊り上がる。
「面白い!その遊戯、乗ってやろう!!」
王の盤上で踊らされていた。
これは負けが確定しているゲーム。
それなら、犠牲になるチップは一枚でいい。
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next?→100♡