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「伝説を作りに行くんだ。今はまだ、その準備段階かな」
彼女は海底の都市計画に携わっている。そこで、地中に建築物を創造している。フェレンさん率いる班は、僕達が乗った潜水艦よりはるかに精度の高いものに乗ることで地底まで降り立てている。フェレンさんの伝説は、海底都市を築くこと。
これは、今まで現代が古代の海底を遡らなければ存在こそ有り得ないものだった。しかし、これを遡らず、現代に誕生させる計画は未だ人類上、成功はない。
「でも、それも私の推測にしか過ぎない。だって、建てているものは建物だけじゃないのだから」
「え?それなら、他のものは一体何を…」
「それが言葉に出来ないようなものなんだ。山と言ったらいいのかな…何か細かな粒子をばらまいて、海底にそれを大量に集めているんだ」
「なんですか、それ。大量って聞くとあんまり良いような気はしないですね」
「そうなんだ。しかも、その粒子が有害物質と聞いたものだから、尚更分からないんだ…」
「有害物質の山を海底都市に作るって、何してるんですか}
「そうなんだ。だから、そもそも人類のための海底都市でも無いかもしれない。私たちが建てているのも、誰かの家ではないかもしれない」
「じゃあ、一体誰のための、何のための…」
「ほんとに…私は、史上初めての成功のため、伝説と称したのに。一体、誰のためにやってるんだろうね…」
フェレンさんは、それから口を閉ざしてしまった。悲痛な表情のままだった。何を問いかけても、そこからは分からないの一点張りだった。彼女の考える目的が、果たして本当に人類のための伝説となるのか。
フェレンさんは、真の目的を知りたくないのかもしれない。それが、誰かのためではないものだと思いたくないのかもしれない。
「でも、フェレンさんの班の船がほんとの深海まで行けるなら、俺たちにも理由はあったってことですよね!」
ネイは、話を切り替えて明るい調子で言った。
そうだ。つまり、僕達が潜った深海の位置に何か目的があったという事だ。それより、深く潜る必要性はなかったから、この任務は僕達の仕事だったということ。
でも、それが今日までの成果だった。時がその会話を妨げ、僕たちは明日を迎えざる負えなかった。
次の日の朝、僕は海軍長さまに呼び出されていた。
「遅刻常習犯にしては、早いな。お前は主犯格じゃなかったみてぇだな」
「そんな、共犯者だなんて。心外です」
ネイは、今日は別行動だった。だから、朝礼の時のように彼に合わせる必要がなかった。
「あれ、もう来てたんだ」
海軍長さまの他に、ネクトさんが書類を持って部屋に入ってきた。それも、腕を抱えるほど大量に。
「助かるぜネクト。そんじゃ、あとは頼んだぜ」
「ええ、分かりました」
海軍長さまは、話は終わりとばかり背を向けて、作業を始めた。
「それじゃ、今日は君にも手伝ってもらうから。よろしくな」
僕はネクトさんから、説明を受けた。今日の仕事は、ネクトさんの資料探しの横で、目を通した書類を順に整理する手伝いだった。