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第13話:解体される舟、結ばれる刃
ハッチを抜けて甲板(デッキ)へ躍り出たアランたちの視界に、夜のテムズ川と白濁した蒸気が広がる。
だが、息を吐く暇すらない。船体を取り囲む闇の中から、無数の赤黒い脚が甲板を叩く不快な音が響く。
「縫い手(ステッチャー)」——蜘蛛のごとき異形たちが、手すりを這い上がり一斉に群がってきた。
「左舷、二匹! 糸を吐かせるな!」
ギリアムの怒号と同時に、大型拳銃の重低音が夜の川面にこだまする。放たれた特殊弾頭は正確に脚の関節を撃ち抜き、粘着繊維を撒き散らそうとしていた一頭を川へ叩き落とした。
「手際がいいね、元敵さん!」
すかさず躍り出たカトリーヌのサーベルが、月光を反射して鋭く閃く。迫り来る硬質繊維の脚を真っ向から斬り払うと、すかさず背中の蒸気ボルト銃を引き抜き、至近距離から腹部へ叩き込んだ。
高圧の蒸気をまとった弾丸が内部から肉を吹き飛ばし、不快な噴気音とともにステッチャーの巨体が甲板を激しく叩く。
二人の老練な戦士が作った一瞬の隙を、リーザは見逃さなかった。
腰のホルスターから素早く引き抜いたのは、手のひらサイズのコンパクトなハンドガン型投射機。撃鉄を起こし、引き金を絞る。
シュッ——!
夜の闇を切り裂いて放たれた高張力の極細ワイヤーは、群がるステッチャーたちの多足を複雑に絡め取り、その動きを強固に縫い留めた。
糸を繰り出す怪物の動きを、人間側の鋼の糸で封じる鮮やかな手腕。
拘束を嫌って激しく暴れ出す巨体に引っ張られそうになった瞬間、リーザは手元のスイッチを迷わず押し込み、巻取りと同時にワイヤーを極小の刃で切断(パージ)した。
反動を殺し、素早く次弾を装填する手つきには無駄がない。
「……シッ!」
アランが踏み込む。黒金色の右腕が黒い光沢を放ちながら膨れ上がり、肘から先の繊維が恐ろしい速度で再構築されていく。
解き放たれた右腕は、彼の小柄な体躯を軽々と覆うほど鋭利な「黒金色のブレード」へと変貌を遂げていた。無数の繊維が極限まで密に編み込まれた、一本の禍々しい刀身。
一閃。
巻き付いたワイヤーによって動きを阻害された二頭が、肉と繊維ごと一瞬で切り裂かれた。勢い余った刃が甲板の鉄板を削り、激しい火花を散らす。
頬を濡らす黒い返り血。だが、アランの瞳は狂気に呑まれることなく、冷静な光を宿していた。
「上等だ、アラン。だが長居は無用だぞ。音を聞きつけて『迷い子』どもが寄ってくる!」
ギリアムが素早くマガジンを叩き込み、川岸の暗い水門の奥を指し示した。
「船を捨てて陸に上がるぞ! 俺の背中に続け!」
コメント
3件
第13話、めっちゃ熱かった!!🔥 夜のテムズ川と蒸気が舞台ってだけで雰囲気出まくりなのに、ステッチャー相手にギリアムとカトリーヌの動きが渋くて痺れるわ。でも何よりアランの右腕が黒金色のブレードに変形しての一閃…あの解像度の高さ、ガチで好き。冷静なまま敵を斬る眼差しも主人公感あっていいな。船捨ててこの先どうなるか、続き気になる!!