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桃:……ごめん、みんな
今日の配信の内容、俺一人で決めた
紫:は?
赤:……今なんて言った?
水:桃くん
それ、どういう意味?
桃:あ、いや
急だったし、みんな疲れてたから
俺が決めた方が早いかなって……
沈黙。
緑:桃桃
相談、なかったね
黄:……うん
桃:ごめん、次からはちゃんと――
紫:次?
声が低い。
紫:お前さ
俺らがどれだけ時間かけて
考えてると思ってんの
赤:全部一人で背負うのが
「リーダー」だと思ってんの?
桃:……違う、そういうつもりじゃ……
水:じゃあ何?
水:桃くん
水たち、信用されてないってこと?
桃:っ……!
桃:違う、違う……
俺はただ……
紫:ただ?
赤:結局さ
お前の中じゃ
俺らは「従う側」なんだろ
桃:そんなこと……!
声が裏返る。
桃:俺、みんなのこと
本当に大事で……!
水:なら
勝手に決めるなよ
初めてだった。
水の声から、甘さが消えたのは。
ーーーー
その日から、空気が変わった。
桃:……次の件なんだけど
紫:待て
赤:それ、誰が決めた
桃:……俺
赤:ほらな
桃:っ……
ごめん、じゃあ……
水:桃くん
すぐ決めなくていいよ
水:どうせ
また間違うんだから
桃:……間違う……
緑:桃桃
顔、こわい
黄:……無理しないで
桃:……うん
大丈夫
でも「大丈夫」と言うたび、
誰かの表情が険しくなる。
桃:……なぁ
俺、何か怒らせた?
紫:分かってないのが
一番ムカつく
赤:自覚しろよ
桃:……教えてくれれば……
水:教えたでしょ
何回も
桃:……っ
「怒られている理由」が、
少しずつ曖昧になっていく。
決めたから怒られたのか
相談しなかったからか
存在そのものが悪いのか
分からない。
分からないまま、
声を荒げられる回数だけが増えた。
ーーーー
桃:……なぁ
俺、今日何すればいい?
赤:黙ってろ
桃:……うん
紫:勝手に動くなよ
桃:……分かった
水:桃くん
ほら、座って
桃:……うん
その瞬間、気づいた。
言われた通りにしている時だけ、
怒られない。
逆に、
自分から何か言うと
空気が張りつめる。
ーーーー
ある夜。
桃:……あの
俺、少しだけ……
紫:何
桃:……一人で
考えたくて……
赤:またかよ
水:桃くん
それ、今言う必要ある?
桃:……ごめん……
紫:なぁ桃
低い声。
紫:お前さ
俺らを怒らせたいの?
桃:ち、違う……!
赤:じゃあ黙れよ
水:桃くん
お願いだから
余計なこと言わないで
その時、
桃の中で何かが切り替わる。
(あ、これ……)
(俺が話すから、怒るんだ)
(俺が判断するから、声が荒くなるんだ)
喉が、きゅっと縮む。
桃:……なぁ
俺、ちゃんと聞くから
怒鳴らないで……
紫:怒鳴ってない
赤:声、震えてんぞ
水:桃くん
深呼吸しよ?
桃:……っ
ごめん、ちょっと……
――足が、動かない。
逃げ道は分かってるのに、体が拒否する。
紫:桃
今、変なこと考えてないか
桃:俺……
変なこと、考えた……?
紫:考えた
赤:外に出たいとかだろ
桃:……ごめん
その一言が、癖になっている。
緑:桃桃
怖い?
桃:……怖い
桃:でも……
怖いって言うと
嫌われそうで……
黄:嫌わないよ
桃:……ほんと?
水:ほんと
だから正直でいようね
――テーブルに、置かれる。
小さな革の輪。
金具が、かすかに光る。
桃:……あの
それって……
水:桃くんが
安心するためのもの
桃:……首輪、だよね……
赤:見りゃ分かるだろ
桃:……俺
それ、つけたら……
声が詰まる。
桃:……もう
逃げちゃダメ、だよね?
紫:逃げる必要が
なくなる
桃:……それ
同じじゃ……
紫:違う
赤:逃げたくなるのは
自由があるからだ
水:桃くん
選択肢が多いと
苦しいでしょ?
桃:……っ
――思い当たってしまう。
桃:……俺
決めるの、怖かった
桃:間違えたら
みんな壊れる気がして……
緑:桃桃
だから、任せよ?
黄:もう
考えなくていい
桃:……任せたら……
桃:俺……
捨てられない?
沈黙。
その沈黙が、一番怖い。
水:捨てないよ
紫:だから
逃げないようにする
赤:首輪は
そのため
桃:……あ……
桃:それって……
俺が信用されてない
ってことじゃ……
水:逆
水:信用しすぎてるから
縛るんだよ
桃:……っ
――首に触れられる前から、息が浅くなる。
桃:……待って
桃:お願い
少しだけ
考える時間……
赤:今考えるな
紫:遅い
カチ。
音がして、世界が揺れる。
桃:……っ……!
桃:なに……
これ……
桃:首、重い……
息……しにく……
水:大丈夫
締めてないよ
水:怖いのは
気持ちだけ
桃:……取って……
小さな声。
桃:……お願い……
紫:外したら
もっと怖くなるぞ
赤:また
一人になる
桃:……っ!
――「一人」という言葉が、刃になる。
桃:……やだ……
桃:一人は……
やだ……
緑:桃桃
ほら
黄:みんな
ここにいる
桃:……ほんとだ……
――首輪を、ぎゅっと握る。
桃:……俺
ここにいれば……
桃:……怒られない?
水:いい子ならね
桃:……いい子って……
水:言うこと聞く子
一瞬、迷い。
でも――
桃:……うん
桃:俺……
いい子でいる
声が、弱くなる。
桃:……リーダーじゃ
なくても……
桃:……捨てられないなら……
紫:その方が
価値ある
赤:やっと
分かったな
――時間が経つ。
桃:……ねぇっ
桃:俺
外、見なくていいよね
水:見なくていい
桃:……それで
みんな、そばにいる?
緑:いる
黄:ずっと
桃:……じゃあ……
桃:……俺
ここで待つ
桃:逃げない
考えない
決めない
首輪が、小さく鳴る。
桃:……怖いの
なくなってきた……
水:それが
正しい状態
水:ちゃんと
言うこと聞けてるよ、桃くん
その言葉に、肩がわずかに落ちる。
桃:……よかった……
桃:俺、もし
間違ったら……
見捨てられるんじゃないかなって……
緑:間違えなければ
いいだけ
黄:それだけ
桃:……うん
――首輪を、ぎゅっと握る。
桃:……これ、つけてると
怖いんだけど……
桃:……外される方が
もっと怖い……
水:それでいいんだよ
桃:……それで……
桃:俺が
大人しくしてれば……
桃:……ここにいて、いい?
紫:当たり前だろ
赤:逃げなきゃな
桃:……逃げない……
桃:もう……
逃げ方、分かんないし……
一瞬、笑おうとして、やめる。
桃:……俺さ
指示出す側だった頃より……
桃:今の方が
楽かもしれない……
緑:桃桃
それが本音
黄:やっと
戻ったね
桃:……戻った……?
水:うん
あるべき場所に
――ゆっくり、膝をつく。
誰にも言われていないのに。
桃:……俺
ここで待つよ
桃:呼ばれたら
ちゃんと行く
桃:勝手なこと
もう、しない
首輪が、かすかに鳴る。
桃:……これがないと
不安になるから……
桃:……外さなくて、いい……
その言葉で、すべてが終わった。
紫:いい子だ
赤:やっと
完成だな
水:安心して
桃くん
緑:桃桃
黄:ずっと一緒
桃:……うん……
桃:俺……
飼われてる方が……
桃:……ちゃんと
愛してもらえるんだな……
――その目から、
恐怖は消えていなかった。
ーーある日
その日は、少しだけ違った。
桃は朝から何度も、
首元の革を確かめていた。
桃:……なぁ
俺、今日……
水:どうしたの、桃くん
桃:……俺
ちゃんと、いい子……?
返事が一拍遅れる。
それだけで、
胸が締まる。
ーー昼。
言われていないのに、
桃は立ち上がってしまった。
紫:何してんだ
桃:……っ
ごめん……!
赤:今日は多いな
水:桃くん
今日は、あんまり
いい子じゃないね
その一言で、
世界が遠のく。
桃:……え……
視線が、
自然と首輪に落ちる。
紫の指が、金具に触れる。
カチ。
まだ外れていないのに、
膝が崩れる。
桃:……ま、待って……!
桃:……それ、外されるの……?
赤:罰だろ
桃:……っ!!
呼吸が壊れる。
桃:は、っひゅ、、やだ……!
それだけは……!
桃:聞く……!
ちゃんと聞くから……!
床に額をつける。
桃:……逃げない……
考えない……
決めない……!
桃:……お願い……
首輪、取らないで……!
金具が、ほんの少し緩む。
それだけで、
完全に壊れた。
桃:……っっ!!
桃:いい子になる……!
今すぐなるから……!
水:……紫
紫:……チッ
カチ。
戻る音。
桃:……あ……
あ、ある……
首輪を両手で抱え、
震えながら息を整える。
桃:……ご、ごめんなさい……
水:分かった?
桃:……うん……
桃:……首輪、外されないように……
いい子でいる……
ーー別の日
桃:……俺、今日……
いい子、だった?
紫:ああ
桃:……じゃあ……
外さないで……
首輪を、そっと押さえる。
桃:……これがないと……
俺、分かんなくなるから……
誰も、止めない。
恐怖は残っている。
でも今の桃にとって、
一番怖いのは――
**首輪を外される未来**だった。
今日も桃は、
自分から首輪を求める。
リーダーだった男は、
選ぶことを手放し、
首輪をつけたまま
「いい子」でいる道を選んだ。
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**
**
**
,,,,Thank you for reading,,,,
skfnっぽくなかったですね。
わざわざ手に取ってくださったのにすみません。。
いつもありがとうございます。。。
コメント
1件

初コメ失礼いたします! この世界観というかなんというか…言語化できないんですけど好きです!!!