テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
何度もそこを責め立てられて頭がおかしくなりそうになり、俺は玲於の首元に腕を回した。
「もっと…もっ…と、は…ぁ…っ」
「……霄くん、そんなに俺に触られるの好きなんだ?」
「好きっ……っ、好きぃ……っ」
俺は放心状態で呆然と天井を見上げるしかなかった。
「可愛い……ふふっ…好きだよ、霄くん」
玲於は優しく微笑みながら俺の頭を撫でる。
その優しい手つきに安心感を覚えると
気が付けばそのまま眠ってしまっていた。
翌日
結局俺は昨夜も玲於に慰めてもらい
あの写真についても問いただすことは出来なかった。
でも……玲於のことを嫌いになることはできなかった。
相変わらず玲於の愛撫は気持ち良いし
何より玲於は俺のことしか考えていないみたいだったから。
それでも、玲於には何か秘密がある気がしてならない。
だから今日の夜、それについても聞こうと決めた。
(今日は夜の9時から会うし…それまで渋谷で時間でも潰そっかな)
渋谷に着くと人の波に呑まれないように適当に辺りを歩いてみる。
平日の午後で人も疎らだったし
特に目当てのものもないので適当にブラブラしていると
目の前に聳え立つドン・キホーテから出てくる玲於の姿を見つけた。
声をかけようとしたが
すぐに玲於の後ろから昨日見かけたツインテールの女の子が出てきて俺は足を止めた。
(あれって玲於が連れてた女の子だよな?……また玲於といる…)
玲於が女の子と何を話しているのか気になって俺は近くの店の陰に隠れて様子を伺う。
「ねえ玲於、今日こそ一緒にデートしない?」
「えー、めんどい。」
「今度埋め合わせするって言ったじゃん!」
「んー、じゃ適当にカラオケでいい?」
「いいじゃん、いこ!」
会話が終わると、女の子は玲於の腕に手を絡め密着しながら歩いていく。
その後ろ姿はどこか楽しげで
まるで恋人同士のように見えなくもない。
俺はしばらくその場で立ち尽くして考え込んだ。
(……やっぱり気になる……)
俺は意を決して玲於たちの後をつけた。
二人が入ったのはカラオケ店だった。
俺は二人に気づかれないように店には入り
二人が受付での会話を遠目に盗み聞きする。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「2人で、2時間でお願いします。」
「かしこまりました。おタバコは吸われますか?」
「いえ」
「承知いたしました。77番ルームへどうぞ。ドリンクバーはあちらになります。何かございましたら、お気軽に内線でお呼び出しください。」
二人は伝票とマイクの入った箱を受け取ると部屋に向かっていった。
隣の部屋を確保するしかないと思い、俺も受付を済ませ、なんとか78番ルームに入った。
(バレたらまずいよな……)
壁に張り付き、耳を澄ませて
隣の部屋の会話を聞き取ろうとする。
(……聞こえるかな?)
すると、壁が薄いせいか、玲於と女の子の話し声は丸聞こえだった。
「ねえ、玲於ってさぁいつもあんな感じなの?」
「え?どんな感じ?」
「なんか冷たいっていうかさ……」
「あーそうかも」
「ねぇ、本当に私に興味ないんだね」
「別にそーゆうわけじゃないよ」
「私のことどう思ってる?」
「えー可愛いよ?今日のネイルも似合ってるし」
「だったら今日こそエッチしてよ」
「いくら可愛くてもそーいう気分じゃないってこと。それに夜は猫愛でるので忙しいしお前に構ってる暇ないの」
「いっつもそればっかじゃん、最近楽しそうでムカつく~」
「っばか、急にキスしてくんなっての」
いかにもなベタベタした会話にモヤモヤして席に戻る。
玲於の声はいつもより少し低く感じたし
いつもは穏やかなのにどこか棘があるように感じてなんだか胸騒ぎがした。
それに、可愛いって女の子にも言ってるだと思って無性に腹が立つ。
夜は俺に好きだの可愛いだのたくさん言ってくれるのに、別に特別じゃないんだ。
もしかして恋人扱いしてくれてるのかもとか期待したけど、そりゃ違うか。
男だし、可愛さも表面上だし
(なんで後なんか付けてきたんだろ…あーもうむかつく…そうだ、俺もなにか頼も)
ブツブツとそんなことを考え
テーブルの上のメニュ表の乗ったタッチパネルを操作し、適当にメロンソーダを注文した。
1曲も歌わずにここを出るというのも店員に怪しまられるだろうが
さすがに壁が薄いし、もし歌って隣にいる玲於に感づかれたら元も子もない。
(よし、ここは我慢しよう…ただ選んでるふりだけするか)
適当に上位に上がっている曲を何曲か入れて
扉がノックされるとすかさず曲をキャンセルし
マイクを持ちつつ次の曲になるのを待っているフリをする。
キャンセルしてから次の曲が開始するまでは結構時間がある
その間に店員からメロンソーダとストローを受け取り
お礼を言い店員が出ていくのを確認し
それ以降の曲も全てキャンセルしてしまう。
完璧だ。
そうこうしているうちに玲於の方は
次々と曲を入れて歌っているのか
女の子の甲高い歌声が壁越しに響いてくる。
それからも俺は壁に耳を当て二人が出ていくときを見計らっていた。
約2時間後…