テラーノベル
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『でも私たち、趣味が正反対ですね』
そう言われ、俺はギクッとして早口に言う。
『別に趣味が同じじゃなくても、結婚に支障はきたさないと思うんだ。大事なのは〝何が好きか〟より、〝何が嫌いか〟の価値観が揃っていたほうが、相手の地雷を踏む事がないと思う』
『あー……、それは一理ありますね。……でも、同じ趣味があると、共通点が増えて仲間意識が高まると思いますけど』
『う……。……べ、別に俺は外が嫌いって訳じゃないから、エミリが望むならアウトドアなデートも全然OKだよ』
『あははっ、無理しちゃって』
『無理じゃないよ。じゃあ、エミリがデートプランを考えて? 君の事を知る一環として、楽しませてもらうから』
『あー……、そうきましたか。上手いですね……』
エミリはうんうんと頷き、『分かりました』と根を上げた。
『でもまだ、〝お付き合い〟じゃないですからね。〝一緒に遊ぶ〟んだと思ってください』
『分かったよ。エミリのガードは堅いから、少しずつ攻略させてもらう。RPGゲームも好きだから、コツコツ経験値稼ぎとかは好きなんだ』
ニコッと笑うと、彼女は視線を逸らして照れ隠しをしつつ言う。
『……その次は、篠宮さんが立てたプランに付き合ってもいいですけど』
『やった! ……っていうか、エミリってツンデレ属性なんだね。俺、二次元だとおっとりお姉さんタイプが好きなんだけど、やっぱり実際好きになる人は違うなぁ……』
『……篠宮さんって、結構オタクですか?』
『まぁ、幼少期から抑圧された男は、太陽のもとでストレス発散ってならないよね……』
『全員がそうじゃないでしょう』
『オタクは嫌い?』
『付き合った事はないですけど、……まぁ、付き合ってみないと何とも言えませんね。偏見は持っていないつもりです』
『良かった。……確かに俺とエミリは趣味が正反対だけど、お互い強制しないように気をつけつつ、相手が大事にしているものを知っていくのもアリだと思う』
『そうですね。それについては賛成です』
『じゃあ、いつ遊べるかスケジュール立てようか』
『分かりました』
そうやって、幸いにも俺はエミリに一目惚れしたその日に、一回目のデートの約束をとりつける事ができたのだった。
後日、俺は早朝に車でエミリを迎えに行き、そのまま東海道を進み、那須ICを使って那須高原にある屋外アスレチック『OSARU』へ着いた。
本心としては一泊したいところだが、まだ〝一緒に遊びに行く友達〟なので、変な下心を見せてはいけない。
アスレチックとの事で、服装はTシャツに伸縮性のあるパンツ、スニーカー姿で望む。
いつもは女性とデートする時は、清潔感がありながらも高級感やお洒落さを忘れないファッションだったので、初手から変な気持ちだ。
エミリも半袖Tシャツにグレーのスウェットにスニーカー、ヘルメット着用のため、髪は二つ縛りにしていてやる気満々だ。
受付を済ませると、ハーネスやヘルメットを装着し、スタッフから器具の使い方などをしっかりレクチャーされる。
高さ十メートルもある場所で、不安定な足場を渡っていくので、ずっと命綱に守られているとはいえ、万が一の事があっては困る。
自然に囲まれた中、スタッフの説明を受けている俺は、とても懐かしい気持ちになった。
ずっと都会で過ごしていて、こんなデートを求める女性は今までいなかった。
森の中にいるなんて、学生時代の課外授業以来に思える。
飯盒でご飯を炊いて、カレーを作って、キャンプファイアーをして……。
(あの頃はまだ、母が豹変する前だったな)
ぼんやりしていると、バシッとエミリに背中を叩かれた。
『行くわよ! あーっ、ワクワクする!』
会社では決して見せない表情の彼女を見て、自然と俺まで笑顔になっていた。
『ちょっと待って! エミリ! マジで怖い!』
『大丈夫だって! いけるいける!』
俺はロープを掴みながら、地上十メートルの高さで板を渡り、脚をガクガクさせている。
こんな情けない姿を見せているのに、エミリは呆れるどころか、めちゃくちゃ励ましてくれている。
『ほらいけた! ハイタッチ!』
彼女がいる場所にたどり着くと、エミリが笑顔で手を合わせてくる。
普段は絶対こんな所来ないのに、彼女が俺にどんどん新しい世界を教えてくれる。
コメント
1件
読み終えたわ!「まだお付き合いじゃないですからね」って言いながらツンデレ属性全開のエミリ、めっちゃ可愛いじゃん笑。高所でガクガクしてる篠宮に対して「いけるいける!」って励ますギャップも好き。会社じゃ絶対見せない表情を見せてくれるってところで、二人の距離がちゃんと縮まってる感じがしてほっこりしたわ。続き気になる🔥
臣桜
50,509
畝澄ヒナ
119
#短編
五來 小真
29