舐めてもいいように丁寧に……?
いやいや、待たせないように素早くだよね?
髪も体も洗ったけどお湯を汚してはいけないと、熱いシャワーで体を温めてから髪一本落ちていないよう床を流してお風呂を出る…疲れた……思えば今日は、緊張の連続だもの…
「颯ちゃん、お待たせしました。どうぞ。バスタオル、真新しくはないけど洗ったの置いてるから」
「おう…これでもいいぞ」
彼は、まだ私が髪にバサリと被っているバスタオルを引っ張る。
「もう1枚あるから…乾いたの使って」
「了解、借りるな。髪乾かせよ」
バスタオルの上からでも大きいとわかる手でわしゃわしゃと私の頭を撫でた颯ちゃんは、お風呂へ向かった。
私は言われた通りに髪を乾かすと、マグカップいっぱいに入れた水を飲む。
そこへお風呂から上がってきた颯ちゃんは、Tシャツと短パン姿だった。
「寒くない?」
「冬も寝るときは、これ以上着ないな」
そう言い私の手からマグカップを抜き取ると、そこへ水を入れてごくごくと飲み干す。
見とれた喉仏にツーっと水が一筋垂れてきたのを見て慌てて目を逸らすと、歯を磨くため洗面所へ行った。
「颯ちゃーぁん」
「ふーん?」
洗面台の引き出しを開けながら呼ぶと、とてもリラックスした返事が聞こえてから颯ちゃんが現れる。
「歯ブラシの新しいの、ピンクはおかしいよね…オレンジ?ごめんね、考えが及ばずいろいろ準備不足なお泊まりで」
「いいだろ?今から二人で準備すればいいことなんだから。リョウの歯ブラシはピンクか…じゃあ俺オレンジもらう。捨てずにこのまま置いておけよ」
また泊まるということだよね……
「歯ブラシ1本置いてるより、2本並んでるのっていいな」
歯を磨き終えた颯ちゃんに、私が思っていたのと全く同じことを言われて驚いた。
「私、4月から独り暮らしだったでしょ?お母さんがお父さんのところに行って初めて寂しく感じたのが歯ブラシだったの。ぽつんと1本立ってるのが自分みたいに見えたのかな…?」
言い終わると同時にふわりと浮き上がる体感に、キャッ…と小さく声が出て彼の首に腕を回した。
「リョウがぽつんとなることは、もう二度とない」
そう言いながらベッドまで行くと、彼はそっと私を座らせ両手を握って視線を合わせた。
「寝るのも一緒に…な?俺がここに来ているのにぽつんと寝ることないだろ?」
「…無理がある…よね……」
二人でベッドに横になったがシングルベッドに181センチの颯ちゃんは一人でも無理がある。そこに私もいるのだから狭いし足元の掛け布団が浮いてる気がする。
「足元スースーする」
「俺の足がはみ出てるからな」
そう言った颯ちゃんは私の方へ向くと、私も颯ちゃんの方へ向かせる。そして足を少し曲げた彼は私の足を自分の足の間に挟んだ。
「これでスースーしないだろ?」
長い腕で私を自分に抱き寄せてから
「今日はこうして眠る…」
と背中を撫で始めた。
「リョウ…残念だとは思うが…今はキスしない……このまま寝てくれ。キスしたら止まれなくなりそうだから…泣くなよ」
「泣かないけど…颯ちゃん、優しいね……やっぱり手、気持ちいい」
「この手もリョウのものだ」
なんて嬉しいことを言ってくれるんだ、颯ちゃんは…キスしてと言いそうになったがその先の未知の経験は、彼が言うように明朝出勤の日には避けた方がいいのだろう。
私は黙って彼の胸にすり寄ると
「おやすみ、颯ちゃん」
と目を閉じた。
コメント
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颯ちゃんの深い愛に🥹 キスしてと言いたい良子ちゃん🥰確かに今日は避けた方がいいね☺️ゆっくり安心し颯ちゃんの胸で寝てね💞 颯ちゃんがごくごくと水を飲んでる時の喉仏の動きと、ツーッと水が一筋垂れる姿、妄想して見惚れちゃった🤩🤭