テラーノベル
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深い深い眠りからゆっくりと意識が浮上しては…また浅く沈む……長い休息の終わりの予感がする
ゆっくりと瞼を開くが、それは力なくすぐに閉じる。
浅い微睡みの中で慣れない足の温かさに気づくと、その温かさと裏腹に頭だけが冷たいほどに冴えた。
颯ちゃんだ……
足…温かい……片足は颯ちゃんの足に軽く挟まり、もう片方はその足の下で颯ちゃんの足に触れていた。
背中に回った彼の手は動いてはいなかったが、しっかりと私に巻きついたままだ。
颯ちゃん、布団から背中が出ていないかな……心配になり、手を彼の背中に回すように手探りで掛け布団を確認する。
「…リョ…もっと…抱きついて……」
急に聞こえた颯ちゃんの掠れた声にドキッ……として固まると
「腕も…脚も俺に回して…ぎゅっ……てして…リョウ…」
私の頭に顔を擦り付けて懇願するかのような彼の声が続く。
脚を回す?
しがみつく感じ?
コアラみたいにってこと?
とりあえず腕はぎゅっとしてから……挟まった足を抜き…ぇ……コアラのポーズになるのって、大股開きじゃない?
それをしろと?
「くくっ……コアラも大歓迎だが…まずはを脚に絡めてくれればいい」
颯ちゃんは笑いながら私の脚を自分の脚の上に置いた。
「……聞こえてた?どこ…聞こえたの?」
「聞こえたのは…コアラのポーズからだな……やってくれる?」
そう言った彼は私に腕を回したまま仰向けになり、私は颯ちゃんの上でうつ伏せになった。
どうしよう……彼は目を閉じたまま私の腰からお尻を撫でている。
それも颯ちゃんのおっきい手なら気持ちいい。
私…大丈夫……?
お尻を撫でられて気持ちいいって、変態じゃないの?
「リョウ?どうした?今なら何言っても…半分寝てるから覚えてないかもしれないが……言ってみ?」
いつもの颯ちゃんよりもゆっくりと言われて、なるほどと思い、思った通りに言ってみる…彼がはっきりと起きているなど、私が気づくはずもない。
「颯ちゃんのおっきい手が気持ちよくて…でもお尻を撫でられて気持ちいいって変態っぽい?痴漢を喜ぶみたいでおかしいよね?」
「…ぅーん……おかしくない…痴漢は知らない奴に触られるから気持ち悪い……好きな奴に触られて気持ちいいのは普通…もっともっと…この何倍も気持ちいいこと……しような、リョウ」
「何倍も…?」
「比べものにならないと思うぞ」
「…颯ちゃんが教えてくれるんだよね?」
「そうだが……一緒に二人だけの気持ちいいを作る」
「……二人だけ…」
「作り上げるんだ…何でも二人で…気持ちいいことだけでなく、生きていくこと全て」
また嬉しいことを言ってくれる颯ちゃんにぎゅっ……てしようと思ったとき…アラーム音が部屋に響いた。
「リョウ、玉子使っていいか?」
「いいよー」
洗面台に向かってメイクしていると、颯ちゃんから声がかかる。
トースト、珈琲、ヨーグルトしかないから足りないのだろう。
また少し伸びた髪を一束にまとめて台所へ行くと
「バターのいい香りだ」
彼が皿の上のトーストにスクランブルエッグを乗せているところだった。
「ケチャップいるよね?」
「いる」
冷蔵庫からヨーグルトとケチャップを出し、マグカップと湯飲みに入った珈琲もテーブルに運んだところへ、颯ちゃんがトーストのお皿を持って座った。
「ありがとう、いただきます」
「いただきます」
いつものトーストよりも大きな口を開けてかぶりつく。
「…ぉひし…」
ふわふわ玉子が美味しい。
いつもはトーストに塗るものが変わるだけで、朝からフライパンを使わない。
「美味しい。颯ちゃん、料理するんだね」
「この程度」
「すごくふわふわで上手に出来てるよ」
「なら良かった」
彼は、私の口元のケチャップを親指で拭いペロッ……と舌を出して舐めた。
恥ずかしくて、慌てて珈琲を口に含む。
毎日飲んでいるいつもと同じ珈琲が、とても香り高く感じた。
コメント
3件
まぁせんせー、颯ちゃんの『颯』が抜けてて〜『ちゃん』になってましたよ~😅 お互いの顔を見てご飯食べれて良かったね🫶💖
もうとにかくね、颯ちゃんの発する言葉達が胸にぐぐぐって、心地良く響いてくる.。.:* 良子ちゃんの心の独り言もカワイイんだよな〜🤍漏れてるの🤭 近い、早いうちに2人だけの気持ちいいを一緒に作れていくといいね💕 トースト🍞スクランブルエッグのせ早速明日やるよ〜😋