フリーザと研究員らはうっすらと目を開いた“彼女”が目線だけ動かして周囲を見渡す光景を棒立ちになって眺めるしかできなかった。
“彼女”を生み出すまでの間、彼らは血の滲むような研究開発を積み重ねて来た。
全てはフリーザ軍の発展のため。
どんな者にも負けない“欠陥のない兵士”を作り出すため。
その彼らの努力は、今実ろうとしていた。
「何をボサっと突っ立っているのです!?早く“彼女“をマシーンから出しなさい!
「は、はい!」
ゆっくりと扉が開くと、培養液がメディカルマシーンからドバッと溢れ出す。
”彼女“は何も言わずにただ辺りをキョロキョロと見回すだけだったが、フリーザらの存在にすぐに気付いた。
「どうやら目が覚めたようですねぇ。気分はいかがですか?」
フリーザにそう問われた”彼女“だったが、しばらく無言のままであった。
状況が分からない、と言うような様子だった。
しかし”彼女“なりになんとか言葉を紡ごうと頑張ってはいたらしい。
「なんとも、言えない感覚です…。」
”彼女“が言語を理解して話している。細胞単位から設計されている”彼女“だが、言語の認識能力についてはフリーザらの計画通りにいっていることが分かった。
「そうですか。まあいきなり大勢の人に囲まれているわけですから無理もないでしょう。ところであなた…名前はあるんですか?」
「な、まえ…?私に名前があるのですか?」
「これは……」
”彼女“がどの程度自我を持っているのか確かめるべくフリーザは名を尋ねたが、どうやら”彼女“自身は自分に名前があるとは思っていなかったようだ。
名前がないのなら、名付けるのみ。フリーザはそう思った。
「では私があなたに名前をつけてあげましょう」
「えっと、ありがとう…ございます」
「とはいえどうしましょうかねぇ…」
「その、私はなんでも良いのですが… 」
「そういうわけにはいきません」
フリーザは”彼女”を普通の兵士たちと同等に扱うつもりはなかった。
なぜなら”彼女”は普通の兵士とは違うから。ありとあらゆるリソースを割いて作った最高傑作だから。
だから、最高傑作の”彼女”には相応しい名前をつけたかった。
「良いですか。あなたの名前は…”メイズ”。メイズです」
「メイズ…ですか…。」
「ええそうです。あなたはこれからメイズと呼ばれることになります。覚えておいてくださいね」
「分かり、 ました…。」
この日から”彼女”、もといメイズはフリーザ軍の一員として働くこととなった。
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