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「……いやぁ、ほんっとに強くしすぎたな」
「その気になればまだ俺を軽々といなせるくせによく言うぜ」
俺の言葉を聞いて、エドモンドはニヤリと口角を上げる。
東の海を出て、早7年。18歳になった俺は、再び島を出る準備をしていた。あれから大分俺は強くなった。最初こそへなちょこの一応出来てます、みたいな六式は7年の時を経てちゃんと通用するものになった。クソほどキツかったけど。
「そんでまた商船に潜り込むのか?」
「おー、結構楽だったしな」
俺の返事を聞くと、エドモンドは大きなため息をつくが、ふっと小さく微笑んだ。
「まぁお前なら大丈夫だわな」
と言って笑うエドモンド。
「それじゃあ――」
「ああ! 待ってくれ、渡すものがあったんだった」
「?」
ばたばたと、少々騒がしくエドモンドが一度家に戻ってしまう。渡す物ってなんだろうか?旅に必要そうなものはもう渡されてると思うんだが……。
少しして、エドモンドが戻ってくる。
「これこれ」
「なんだそれ……」
エドモンドが持っていたのはB5サイズくらいの真っ白な紙だ。あれ、これってもしかして……
「これは〝ビブルカード〟、別名〝命の紙〟だ」
やっぱりビブルカードだった。
俺はエドモンドからビブルカードを受け取る。
紙の一部を破り取って床や手のひらに置くと、紙の加工に用いた(俺の場合は髪の毛)ひとの方へ向けてじわじわと動く。家族や仲間などと離れ離れになった時にこのビブルカードを持っていれば、その人物がどの方向にいるのかわかるという代物だ。それにこれは持ち主の生命力と連動している。普通に濡らしたり燃やしたりしても綻び一つつかないが、持ち主の命が弱ったりすると、焼け焦げて小さくなっていく。元気になったらまた元の大きさに戻るらしい。
なんだそれって思うがまあ〝そういうもの〟だと納得するしかない。
エドモンドが俺に渡したビブルカードを小さく千切る。
「こっちは俺のだ」
「ありがとう。じゃあ今度こそ、またな、エドモンド」
「あぁ。またな、ジェディ」
烏融を腰に差すと、俺は東の海に行く商船に忍び込んだ。
7年前は木箱に隠れられるくらい身長低かったけど、今はもう180cm超えちゃったから軽々しく木箱の中になんて隠れらんないんだよなぁー……どーすっかな。
なんて考えながら、俺は木箱に寄りかかって座る。多分大丈夫だろ。なんとかなる。
俺はあの日のように、ゆっくりと目を閉じた。