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“影縫い”と接触し、彼女の事情を把握したと伝えれば、マコトはこれまでにない程驚愕して思念の会話であると言うのに大声で叫び声を上げている。

そう言えば”影縫い”は性別すら知られていなかったんだったか。影縫いのことをいきなり”彼女”と伝えてしまったのも、彼を驚かせてしまった要素の1つになっているのかもしれない。


〈マコト、大丈夫?処理が追い付かないようなら、一旦『通話《コール》』を解除するよ?〉

〈いえ、大丈夫です。ところでノアさんの話しを聞く限りでは、”影縫い”とは大分親しいように感じたのですけど、ひょっとして”影縫い”の正体って、ノアさんの知人だったりしたんですか?〉


マコトは魔力で感情を読み取るような術を持っていない筈だ。それにも関わらず、たったあれだけの言葉で、彼は私がフウカと親しい事を見抜いたようだ。そう言った洞察力、あるいは推察力は流石としか言いようがない。


〈うん。私の着ている服の製作者だったよ。今日着ていた服の素材を大量に渡して好きなように服を作って欲しいって頼んだら、とても畏まられてしまってね。彼女はその時から、私のことを主として見るようになったみたいなんだ〉

〈そ、そうですか…。何だかんだでノアさんの人脈って、短期間で凄いことになっていますね…〉


そうだな。私と親しい人物でかつ高い能力や地位を持った者達を思い浮かべると、ギルドマスターだけでも4人いる。

貴族の知り合いもできたし、そのうちの1人は私の正体に限りなく正解に近いところまで認識している公爵だ。さらには他国の姫にすら慕われてしまった。

貴族と言えば、超高額の玩具を購入できる貴族に取り次げる魔術具師とも交流を得たな。それと、この街有数の宝石店のオーナーともか。

複数の騎士とも交流を持つことができた。グリューナは勿論、ミハイルも結構な地位にいる騎士で間違いない筈だ。

そしてティゼム王国内でも最上位に位置する実力を持った暗殺者。


私の場合、いざとなれば彼等に『通話』を掛けることで離れた場所にいても即座に連絡を取り合うことが可能なのだ。


確かに結構な人脈だとは思う。が、その中でも特に実力も地位を持った者が言うことなのだろうか?


〈その凄い人脈の内の1人が何を言ってるのさ。私がここまで短期間でこれだけの人々と親しくなれたのは、貴方のおかげでもある筈だよ?〉

〈そんなことは無いと思いますが…。とにかく、”影縫い”が敵でないと分かったのはこの上ない僥倖です。また明日の早朝に時間を…いや、ノアさんには稽古がありますから、その終了後、午前11頃に時間を儲けますので、稽古終了後に話をしましょうか。えっと、その時は”影縫い”も一緒に、ということで良いのですか?〉

〈ああ、その方が話も進めやすいだろう?それに、彼女は貴方に対して特に嫌悪や恨みを持っているわけでは無いからね。その点も安心すると良いよ〉

〈分かりました。それではまた明日。よろしくお願いします〉


マコトとの『通話』を終了させる。

さて、報告もしたことだし、今日やるべきことは終わったな。

フウカに明日の予定を話したら、風呂に入って果実を食べて寝るとしよう。



翌日。

昨日はマコトと『通話』をした後、折角なのでフウカもカンディの風呂屋へと誘い、一緒に風呂に入った。

彼女も風呂の存在は知っていたが、清潔さを保つのならば『清浄《ピュアリッシング》』で十分だと思っていたため、これまで入ったことは無かったようだ。

この機会に彼女も風呂にハマってもらい、風呂仲間になってもらおう。


私の体を見て色々と反応していたが、マーサの反応より少し大げさだっただけなので、特に問題は無い。

問題があったとしたら、裸を見せた際に鼻血を噴き出しそうになって風呂場を汚しかけたことぐらいだ。

まぁ、鼻血を出す前に治療をしたため問題は無かったので良しとする。


冒険者ギルドに向かえば、早速冒険者達に昨日の試合の内容を話して欲しいとせがまれた。

ギルドの扉が開くまでに少し時間があったので、簡単に説明していると、まるで子供の様に目を輝かせて喜ばれた。

自分の話では無いと言うのにまるで自分のことの様に喜ぶ彼等の姿は、年齢性別を問わず、物語の主人公に憧れる子供の様な印象を受けた。


納得できる部分はある。

街の生まれの子供ならばそういった類の本は目を通していただろうし、文字の読み書きのできない村出身の者達でも、村に立ち寄った冒険者から色々と話を聞いて憧れを持った筈だ。彼等は私に対しても、似たような感情を持ったのだろう。


そして、そんな人物がこれから自分達に稽古をつけてくれる。彼等にはそれがとても嬉しいのだろうな。

私が稽古をつける以前も彼等は扉が開くのを心待ちにしていたが、その時と今とでは目的が違う者達が複数いる。


これまで通り、割の良い依頼を目的にしている冒険者達も勿論いるが、私の稽古を受けることを心待ちにしてくれている者達もいるのだ。

そんな彼等の様子を見ると、マコトの要望に応えて良かったと思えてくる。

自分の行いが喜ばれると言うのは、何とも嬉しい気分にさせられる。私もやる気が出てくるというものだ。


今日も張り切って稽古をつけていくとしよう!



午前の稽古が終わり、時刻は11時。フウカは既にギルドに到着していて、私の稽古が終わった後、すぐさま執務室へと2人で移動した。


一見すると身綺麗でかつ容姿の整った女性が、私と共にギルドの奥に進んでいく状況に対して不審に思われてしまうかもしれなかったので、一言二言フウカと会話をした後、フウカ本人は透明化させて、幻をギルドから外へと向かわせた。

帰りの際は彼女に影に潜って移動してもらえばいいだろう。


執務室の扉を叩き、マコトに入室の確認をする。


「マコト、来たよ。入っていいかな?」

「おう、入ってくれ。んで、一緒にいるのがそうなんだな?」


マコトも魔力で周囲の環境をある程度は把握できるようだ。私の隣にフウカがいることを理解している。

現在、私達を監視している者もいないようなので、入室と共にフウカに掛けた透明化の魔術を解除して執務室に入ることにした。


「よく来てくれたな。で、アンタが”影縫い”か。まさか、こんな美人が世界最高峰の暗殺者だなんて思いもよらなかったぜ」

「ご無沙汰しております。普段はイスティエスタで服屋を営んでいる、フウカと申します。それと、以前は仕事の都合上とは言え、大変な無礼を働いたこと、誠に申し訳ありませんでした」

「……ノア?」

「ああ、フウカは貴方のこと、尊敬してるんだって。ところでマコト、フウカのような人が好みなの?」


フウカの挨拶に対して反応に困ったであろうマコトが私に説明を求めてきたので、分かり易く説明する。それと共に少し気になったことを彼に尋ねてみた。


マコトが面と向かって人の容姿を褒めたのは、私が知る限りではこれが初めてな気がする。もしかして彼は、フウカに気があるのだろうか?一目惚れか?

彼から恋慕の感情は感じ取れない。が、それでもフウカを美しいと言った言葉に偽りはないようだ。


やや辟易とした表情で私の疑問に答えてくれた。


「そういう意味じゃねえよ。以前散々苦労させられた相手の本来の姿が、予想外の姿だったから驚いただけだっての。第一、俺みたいなジジイがこんな若い娘に言い寄ったら、犯罪者扱いされかねないっての。そもそも、若い娘が俺みてえなジジイに惚れるようなこたぁ無ぇだろうが」


そうとは限らないんだけどなぁ。

マコトの本来の姿は若い姿のままだし、私の得た知識を参考にすれば、彼は最低でも後50年は生きるだろうから、今からでも番を得ることは遅くないと思うんだ。

まぁ、そのためには仕事漬けになっている彼の環境を変える必要があるけど。


その話はしばらく先になってしまうだろうな。解決しなければならない問題が他にも複数あるのだ。


いかんいかん。思考が脱線してしまうのは私の悪い癖だな。

とは言え、流石に余裕がない時に思考が脱線するとは思っていない。私がこうして思いにふけっている時間は1秒にすら満たない時間なのだ。余計な事を考える余裕があるから、思考が余計な方向へと脱線してしまうのである。

だから、こうして私の思考が脱線するような状況は今後も続いて行くだろう。


思考を本題に切り替えて話を進めるとしよう。


マコトに、フウカの事情を説明するとしよう。



フウカがヘシュトナー侯爵に従う理由を説明した後、ギルドの執務室は静寂に包まれていた。


3分ほどの沈黙の後、ようやくマコトが口を開ける。


「大勢の子供達の命が握られているってことか…。しかも、今は何処にいるかも分からねえときた…。ノア、アンタは随分と余裕そうにしているが、何か策でもあったりするのか?」

「当然だね。むしろ、ヘシュトナー侯爵を追い詰める材料が増えて好都合とまで思っているよ。子供達の居場所は、…コレを子供達が元の場所に搬送される際に追跡させればいい」


そう言って『幻実影《ファンタマイマス》』による幻をこの場に出現させる。

マコトは私が分身じみたことができると把握は出来ていたが、実際に目にするのは初めてだったからか、非常に驚いている。当然と言えば当然だが、同席しているフウカも驚愕している。


「コレの便利な点の1つとして、コレの場所と私自身の居場所を『入れ替え』ができる点だね。まぁ、コレを介しても魔術が使えるから、滅多なことでもなければあまり『入れ替え』る意味は無いのだけどね」

「ちょちょちょっ!ちょい待った!今なんつったっ!?居場所の入れ替えが出来るだってっ!?ソレと、アンタ自身をかっ!?それはつまり…っ!」


流石にそれがどういうことか、マコトは十分に理解しているようだ。


マコトは信用できる人間だ。

彼には教えておいても良いだろう。モスダン公爵にも一部とはいえ教えていることだしな。


「うん。一種の転移になるね。コレが行ける場所までに効果範囲は限られるけど、私の場合はここからイスティエスタまでなら問題無くできるよ?」

「……その事知ってるのは?」

「今のところ、ここにいる2人とモスダン公爵だけだね。まぁ、彼は効果範囲までは知らないけど」

「…その情報は、周りには伏せといてくれ。知られたら騒ぎになるのは目に見えてる…」

「当然だね。この情報は、マコトが信用のおける人物だから教えたんだ。赤の他人に教えるつもりは無いよ」

「…そうかよ。ま、信用してくれてることには感謝しておくぜ」


とりあえず、『入れ替え』を用いた疑似的な転移の譲歩に関しては話を終わらせておこう。

今私達がしなければならない話は、ヘシュトナー家が管理している病に侵されていると言う子供達についてだ。


「話を戻そうか。正直、症状を見れば子供達の治療、私にならできると思っているんだ。最悪の場合、肉体を全て再構築させて健康な状態に戻すという、かなり強引な手段も取れるだろうからね」

「またとんでもないことを平然と口にしたな。完全に人知れず行動するからって、自重する気無えだろ?」


無いな。問題を解決している存在が私と分からなければ、特に自重する必要も無いのだから、私にできる方法は全て試みるさ。当然だろう?


マコトの問いかけに対して無言で頷いておく。


「問題は子供達を治療した後のことだね。例え子供達を治療して健康な状態に戻せたとしても、子供達を安全な場所へ移動させて保護しなければ、問題を解決したとは言えない。下手をすれば、利用価値が無くなったと判断して、ヘシュトナー侯爵が子供達を始末する可能性だってある」

「子供達を匿う場所が必要ってわけだな?ちなみに、子供達の数は、どれぐらいいるんだ?」

「今も全員無事だと言うのなら、32人です」

「流石に村の子供全員ともなってくれば、それぐらいの人数がいてもおかしくは無いか…。むしろ少ないぐらいか?」

「病に勝てず、命を落としてしまった子達もいますので…」


村の規模にも大小があるが、村の子供と言うのは、1つの家に複数の子供を儲けることが多い。現に、フウカにも弟と妹がいるからな。


それはそれとして、昨日のフウカの話を聞いてからというもの、1つの可能性が頭の片隅から離れないでいる。

この可能性を明確にするためにも、今晩辺りもう一度ヘシュトナー邸を物色させてもらうとしよう。


ひとまず、子供達の状況をもう一度フウカに確認しておこうか。


「今の子供達は、皆同じ症状、同じ状態だって話だったね?」

「はい…。仕事を受ける際は、必ず村の子供の様子を確認する事を条件にしていて、毎回違う子供を確認させてもらっていました」

「特定の子供だけ確認してなかったら、他の子供が無事かどうか分からねぇからな。良い判断だと思うぜ?」

「勿論、以前確認した子供が無事であるかも、別の機会に確認しています。最後に依頼を受けてから5年経過してしまっていますが、問題無く条件を飲んだと言うのなら、子供達の状態は変わっていないのでしょう」


果たしてそうだろうか?

1つの懸念が思い浮かんでしまったので、2人に話しておくとしよう。


「ヘシュトナー侯爵は、傲慢で自分の意にそぐわない者に辛辣らしいからね。もしかしたら、あまり楽観的に考えない方が良いかもしれないよ?」

「ノア様?」

「5年間経過しているんだ。今までが病の進行を止められていたからと言って、その間音沙汰がなかったんだ。しかも、自分に従うことに一度だけとは言え難色を示したとなると、そのことに激高して使用する秘薬とやらを少なくすると言う暴挙を、ヘシュトナー侯爵なら行いかねない」

「っ!?」

「で、これまでよりも病状が悪化した子供達を見せつけて、[病の進行を抑えたければ素直に従うことだ]とでも言いかねない。と言うか、私がヘシュトナー侯爵を見た限りでは、彼はそれぐらいのことは当然の様にやる人物だと判断したよ」

「あくまでもノアの推測なんだろうが、ホントに禄でもねぇな…」

「わ、私のせいで…あの子達が…!?」


拙い。つい、フウカのことを考えずにそのまま口にしてしまった。

子供達が大切なフウカにとって、その子供達が可能性とは言え今まで以上に悲惨な目に遭っていると伝えては、悪戯に不安を煽るだけだ。配慮が足りなかった。


フウカを優しく抱きしめ、謝るとともに彼女の心を落ち着かせよう。


「済まない、配慮が足りなかった。安心して。貴女を従わせようとする以上、子供達の命だけは無事な筈だから。そして命が無事であるなら、必ず私が『助ける』。『約束』しよう」

「ノア様…。ありがとうございます…。私には、最早どうにもなりません。あの子達を…助けてください…!」


抱きしめたフウカの瞳から涙がこぼれる。

彼女は、これまでずっと不安だったに違いない。心配だったに違いない。

人間は動物よりも家族、肉親に対して強い執着があると私は解釈している。その肉親、弟妹が今も病に侵され苦しんでいるのだ。

彼女の話を逆算すると、それが10年近くも続いている筈だ。人によっては、生存を諦めてしまう者もいるだろう。


それでも、フウカは諦めきれずにいた。そして、私と出会った。

今、彼女は私に対して希望を見出している。ならばその希望、絶やすわけにはいかない。

彼女の故郷の子供達、『絶対に助けよう』。私は強い意思を込めた言葉でフウカと『約束』をした。


「へ?ちょ、今、契約が…」

「マコト。流石に今それを言うのは無粋だと思うんだ。彼女が落ち着くまで、少し黙っていて欲しい」

「アッハイ…」


マコトが口から漏らしていたが、私が強い意思を持って『助ける』と『約束』を言葉にした際、フウカは全てを私に差し出す思いで私に願ったんだと思う。

そして、その思いが魔力に籠り、私の魔力と繋がってしまい、契約が結ばれてしまったのだ。

確証は持てないが、子供達を救出して問題が解決したら、名実ともにフウカは私の配下になるのだと思う。彼女は、今後私の言うことを断れなくなってしまうんじゃないだろうか?


重い。慕ってくれるのは嬉しいが、全てを差し出すと言うのは流石に重い。


いやまぁ、私も気が高まって強い意思を込めて口にしたのも悪いのだろうけど、意図せずにそういった契約が成立してしまうのは、非常に不本意だ。

後で契約の状態を精査して、いつでも契約を解消出来るようにしておこう。


「とにかく、子供達を救出した後の話だ。マコト。何処か、匿える場所に心当たりはないかな?」

「任せな。そういう問題を解決すんのは得意分野だ。できることなら、全員同じ場所が良いよな?」

「はい…。ですが、可能なのですか?数十人の子供達を一度に匿えるような場所を用意するなんて…」

「問題無ぇな。安心しな!当てがあるからよ!」


自信満々に言う以上、マコトには大勢の子供を一度に保護することができるようだが、私が思うに一般的な方法では無いと思う。それこそ、マコトにしかできないような、人間にとって規格外のことをやりそうな気がする。


まぁ、私が既にとんでもなく理不尽なことをやろうとしているのだ。今更だな。

ついでだ。『幻実影』と『入れ替え《リィプレスム》』もこの際改良しておこう。改良内容は勿論、私以外の幻の作成と他人を対象にした幻の位置の『入れ替え』だ。

これで子供達を救助したら、すぐにマコトの元に子供を送りだせるだろう。


………思ったよりも難しいな。

他人の幻を作るのは容易なのだが、他人の位置を『入れ替え』るのが、どうも上手くいかない。

この『入れ替え』の魔術は、あくまでも自分用、ということか。


困ったな…。このままでは子供達を安全な場所に連れて行くのに少々問題が生じてしまうことになる。


…いっそのこと、本物の転移魔術を作ってしまおうか?

うん。そうしよう。『幻実影』で複数の幻を用いて、図書館で魔術書を漁らせてもらうとしようか。


幻に図書館へ入ってもらい、受付を済ませた後、幻を更に3体に増やして魔術書を徹底的に読み漁る。

流石にすぐに転移魔術の足掛かりが見つかるとは思えないから、この間にも『入れ替え』の魔術を精査して転移の原理を解明しておくとしよう。


子供達を保護する場所はマコトが何とかしてくれるが、彼からすればどうやって私が自分の元まで子供達を連れてくるかが問題になってくるだろう。


当然、マコトからそのことを尋ねられた。


「んで?匿う場所は俺が何とかするとして、どうやって救出した子供達を俺の元まで連れてくるんだ?流石に大人数を連れて街まで入って来たら、目立つどころの話じゃねえぞ?」

「それについては、絶賛新しい魔術を開発中だよ。完成次第、マコトとフウカにも伝えようと思う」

「や、開発中って…そんなに簡単にできちまうもんなのか?」

「簡単なわけが無いだろう?今もここに用意した幻も図書館に向かわせて参考資料を読み漁りながら構築陣を組み立てている真っ最中だよ」

「いつの間にか消えてたと思ったら…んなことやってたのかよ…。てか、複数体で一度に大量の本が読めたりするのか…」

「詳しい話は追々ね。ひとまず話しておきたいことはこんなところだと思うけど、2人は何か言いたいことや聞きたいことはあるかな?」


“影縫い”フウカの事情、子供達の居場所、子供達の治療、そして移送と保護。それらの問題を話すことが私の目的だったので、これ以上私から話すことは無い。

2人から何か尋ねたいことがあれば別だが、話が終わったのなら私も図書館へと移動して転移魔術の開発に勤しみたいのだ。


「俺からは特にねえな」

「私も特にはありません。ノア様、マコト様。この度は感謝の言葉も御座いません。本当にありがとうございます」

「あー、まぁ、俺としちゃあ”影縫い”に対して色々と思うところがあるにはあるが、罪のない子供達の命が掛かってるし、一応”影縫い”は死亡扱いになってるからな。1人の娘さんが、俺達に助けを求めてきただけのことなんだよ」

「自分の身内が困っているのだから、助けるのは当然だろう?主従の関係と言うのは、そういうものだと思っているよ」

「ありがとう…ございます…!」


感極まって再びフウカが涙を流してしまった。気持ちがまったく分からないと言うわけでは無いから、もう一度優しく抱きしめて宥めておこう。



その後、フウカが落ち着いたところで解散となった。

フウカはヘシュトナー邸に子供が来るのを待機、マコトは普段通りに仕事を。

そして私は図書館で魔術書を読み漁りながら『入れ替え』の魔術の原理を精査することにした。

勿論、午後の稽古は行うし、少なくいが今日も依頼を斡旋してもらっている。

魔術の開発を優先はするが、それで私の予定が変わるということは無い。


午前中で大体の当たりは付いた。午後も気を抜かずに励むとしよう。

ドラ姫様が往く!!

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