〜63日目〜
『Amia、見た?』
『見た』
『『手を繋いでた』』
『時代かも』
『ボク二度見した』
『弱いね、わたしは三度見』
『そっちのほうが弱いじゃん』
『どうしようね、もうどうしようもないよ』
『あれが普通って凄いよ。え、ボク見たんだけどさ』
『何を』
『その、ボクが箸落とした時あったじゃん』
『え、いや、まさか』
『下で手を繋いでました!』
『ここが天国。』
『ここは現実。』
『なんで、なんで』
『流石に食べるときは手を離してたけどね。それは見てたかな』
『あ、だからあの時絵名がまふゆのこと見てたんだ』
『そうそう。まふゆはちょっとしゅんってしてたけどね』
『そういえば、椅子を見て、幅があることに残念そうにしてたよね。ちょっと寄ってたし』
『まふゆ……』
『ねえ間の幅狭かったよね?』
『カバンを、二人の間じゃなくて、外に置いてたからね外に外に、カバンを外に』
『あれ下でガッツポーズしちゃった』
『そこでも箸落とすべきだったかな』
『まふゆから距離縮めてたし、まふゆから絵名なのは本当だったね。絵名はあんまり気にしてないみたいだったから』
『本当に日常的にやってるんだって感動しちゃった。有名人が目の前にいたくらいの感動。それを越しちゃうかも』
『わたしはもう勝ちを確信したよ。そろそろ付き合ってそうじゃない?』
『いやあの二人だよ、分からないって』
『注文、絵名と一緒のやつでいいよ。ふふふ、最高』
『奏……まふゆを取られたんだよ』
『渡したんだよ』
『あはは、その言い方強そう。歴戦の戦士みたい』
『食べ物も一緒、飲み物も一緒、席を立つのも一緒、歩くときは手を繋ぐ』
『席でも手を繋いでるよ』
『あれ二人っきりならあーんしてるよ』
『めちゃくちゃ分かる。逆に何してないんだろう』
『全制覇してそうだけどね』
『流石にキスとかはしてないと思うけど』
『少女漫画してたよ、あの二人』
『それほんと意味分からないけど、それならもうやってるね』
『あれだよ、恋人って何をするのかわからないから、少女漫画で学ぼうとしてるんだよ。恋愛初心者かな、かわいい』
『いや流石に少女漫画でもずっと手なんて繋いでないよ』
『まふゆと絵名オリジナル少女漫画……?』
『ノンフィクション少女漫画が一番フィクションしてるって凄いね』
『ずっと手を繋ぐってやりすぎだろって言われそうだね』
『あ、絵名から返事来た』
『え、何か送ったの?』
『まふゆとは付き合ってないって来ちゃった。実は付き合ってるのって聞いててさ、“付き合ってないから!!!!”って。凄い凄い、勢いが凄い』
『嘘が下手だね。ずっと手を繋いでたのをわたし達は見ているのに』
『大変だ奏。このままじゃボク達のノンフィクション少女漫画が嘘だろって批判で溢れちゃうよ』
『友達でずっと手を繋ぐとかあるんですか、あるんです。見たいですか、分かります』
『書籍化は無理かもしれないね』
『わたし達の花園になるのかな』
『いやいや二人のね、まふゆと絵名二人の』
『そうだね、酸素にでもなっておくよ』
『付き合ったらどうなるんだろうね』
『こんなに伝説生み出してるからもう世界でも救っちゃうよ』
『手を繋ぐのが日常ってねえ……』
『非日常は何なんだろうね』
『このままいくと二人で暮らしちゃいそうだけどね』
『ルームシェア?』
『うん。でも流石にその頃までには付き合ってるかなぁ』
『もしあの二人が付き合ってないって言ってルームシェアしてたら、こっそり付き合ってるとしか思えないよね。内緒にしないでほしいな』
『でも、いまいちまふゆの感情が分からないっていうのはあるよね。あれが恋愛感情なのか……。絵名はお母さんって感じもするけど』
『あれお母さんの眼差しじゃないよ。もうすごい優しかった』
『余計にお母さんじゃないそれ?』
『でも絵名が恋愛感情抜きであれしてたら世界を疑っちゃうよ』
『うーん絵名って面倒見いいところあるからなぁ』
『うう、やだ。まふえなは付き合うんだ』
『……まあ、ぶっちゃけあの眼差し。絵名が自分でどんな目でまふゆを見てるか、確かめてもらえればいいんだけどね〜』
『あれ、Amiaもそう思ってるんじゃ……』
『さあさあ、奏。曲を作って作り続けるんだ〜。恋愛ソングばっか作ってちゃ駄目だからね〜』
『まふゆにリハビリと称して絵名への気持ち毎日綴ってもらおうかな。歌詞として』
『曲今いくつあるの?』
『軽く五十』
『奏がボクの想いを綴ってくれたっていいんだよ?』
『これからもよろしく、まふえなパートナーAmia』
『……はーい』