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女子たちの視線が、一斉に俺と田丸に集中する。
「抱き合……え?」
「今のって、ガチ?」
若干引き気味に、しかし興味津々といった表情で聞いてくる女子一同に俺は必死に言い訳を垂れる。
「こ、こいつもう酔ってんじゃない?だからこんな変なこと言ってんだよ~!」
そう言いかけた、そのときだった。
俺の声に被せるように、田丸はさらに追い打ちをかけた。
「誤魔化さんでもええやん、俺らゲイやねんし?」
そう言って、横から俺の首に抱きつくように腕を回
し、その顔を近づけてきたかと思うと
白昼堂々
俺の唇に自身の唇を重ねてきやがったのだ。
柔らかく、しかし有無を言わせないキス。
その瞬間、俺の頭の中は真っ白になった。
俺は慌てて田丸を引き剥がして唇を擦るが
当然、女子たちの反応はドン引きだった。
彼女たちの顔から、さっきまでの笑顔は完全に消え
失せ
困惑と嫌悪、そして好奇心が入り混じった複雑な表情が浮かんでいる。
俺は必死に弁解をしようと、声を張り上げた。
「ちっ違うんだよみんな!俺ノンケだしこいつが勝手に言ってるだけだから!!」
しかし、一度植え付けられた誤解は、そう簡単に払拭できるものではなかった。
「えーでもキスしてんじゃーん」
「てか2人仲良すぎだし、ガチなの?」
「まじ?悟くん意外~!あはは…」
などと言いながら、女子たちは完全に田丸の嘘を信じてしまい
その場の空気は収集がつかなくなってしまった。
俺の必死な弁明は、まるで空虚な音のように誰にも届かない。
「ほんとに勘違いだから……!俺はこいつに無理やりされただけで…被害者なの!!ね?分かってくれるでしょ?!」
必死に、懇願するように訴えかける俺の努力も虚し
く
リサちゃんは、どこか遠い目をして呟いた。
「え、そっちなんだ」
「あ、いや…そっち、っていうか…ち、違うよ?」
その言葉に続いて、別の女子が、まるで腫れ物に触るかのようにぎこちない笑顔で付け加える。
「なんか…多様性、だよね」
「う、うん…と、とりあえず乾杯しよ?」
女子一同が、俺たちを刺激しないようにと、明らかに気を使い始めたところで
俺の大学生活は、この瞬間に完全に終わったと悟った。
薔薇色のキャンパスライフは、今、音を立てて崩れ去ったのだ。
(まじでこの野郎どうしてくれようか…っ)
全身から力が抜け、絶望的な気持ちで田丸の方を見ると
田丸は俺の方を見て、口元に不敵な笑みを浮かべてニヤニヤと楽しそうにしている。
その表情は、まるで全てが計算通りだと言っているかのようだった。
(こいつうう…!!絶対確信犯だろ……!)
怒りで体が震える。
しかし、その怒りをぶつける気力すら、今の俺には残されていなかった。
そうこうしている間にも、女子たちはそれぞれスマホを弄り始め、明らかに俺たちから距離を取り始めた。
そして、お開きの時間となり
店の外に出ると、まるで示し合わせたかのように
残されたイケメンの男1人が残ると、二次会に行く気満々の女子3人。
「2人は来ないの??」
なんて、男子の一人がわざとらしく聞いてきたが
「もう、帰ります……」
疲弊しきった俺は、生気の感じられない、か細い声で呟いた。
その声は、まるで魂が抜けたかのように虚ろだった。
そんな俺に、ドンマイとでも言うように、その男は俺の肩をポンポンっと軽く叩いてから
女子たちを連れて二次会へと向かっていった。
残されたのは、俺と、そしてこの惨状の元凶である田丸だけだった。
(くそっ、くそ!いつもなら俺があのポジションだってのに……っ)
地団駄を踏みたい衝動に駆られる。
俺が主役の合コンのはずだった。
俺が女の子たちを連れて二次会に向かい、あわよくばお持ち帰りをするはずだった。
全てが、この男によって台無しにされたのだ。
そんな俺の絶望をよそに、田丸はどこ吹く風といった様子で、俺に声をかけてきた。
「ほな、俺らもどっかで飲み直そか?」
その言葉に、俺の怒りが再燃する。
「行かねぇよアホ!」
俺は精一杯の怒りを込めて叫んだが、田丸はそれを面白がるように、喉を鳴らして笑った。
「くくっ、情けねぇ面やな」
その嘲笑が、さらに俺のプライドを傷つける。
「お前…俺のことおもちゃにすんのもいい加減にしろよ!?」
俺は悲痛な叫びを上げた。
大学生活は、もう終わりだ。
明日から、どんな顔をして学校に行けばいいんだ。
女は噂好きだし、大学なんてコミニュティで
俺がゲイだとか、こいつと付き合ってるなんて広められたらTheENDも同然だ。
(オワタ…完全に、オワタ……)
「明日から学校どうすんだよ……っ!?」
俺が田丸の胸ぐらを両手で掴んでそう聞くも
「別に普通に行けばええやん。俺らもう付き合ってるみたいなもんやろ」
田丸の言葉に、俺の理性の箍が外れそうになった。
「は?!彼氏ヅラすんな!」
「なんで?嫌なん?」
「嫌に決まってんだろ!大体俺はゲイじゃないっつーの!」
俺は必死に否定したが、田丸は涼しい顔で
俺の最も触れられたくない部分を突いてきた。
「俺の声に興奮しといてよく言うな。さっきやってキスしたときテーブルの下でちゃっかり勃起しとったで?」