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ガシっ!!
「米原!!! ワシをおちょくって馬鹿にすんのも大概にせえよ!!!」
ズボンのチャックに手をかけた私の手を必死に掴みながら萬田くんはものすごい剣幕で怒鳴った
その怒鳴り声が部屋に響いた後
しばらく沈黙が続いた…
「……馬鹿になんてしてないわ!! 私はずっとずっと本気や!!!」
「何が本気や! 金貸しに抱かれるいう事がどういう事かお前は何も分かってないんじゃ」
「金貸しやろうがなんやろうがそんなん関係ない!萬田くんやから好きなんや!!」
「言うたやろワシは腐っても金貸しや!!それが無うなったらワシがワシでなくなるんや!」
「なんでそんなに金貸しいう肩書きにこだわるん!?ほな、萬田くんは普通に誰かを好きになったり愛し合ったり出来ひんってこと!?」
「そや! ワシが金貸しの道選んだからや!ワシはこの家業に命かけとるんや!」
「私かて人生かけて夜の女やってるわ!」
「ほなワシの気持ち分かるやろ」
「分からへん!そんなん分かりたくない!!」
「チッ…!相変わらず聞き分けの悪い女やのう。ほな、キツイかもしれんけど正直に言うといたる
ワシらが一緒になるっちゅう事はお互いの弱みになるっちゅう事や。
ワシの銭を揺する対象としてお前が狙われるようになる…お前は店に客が寄り付かんようになる、金貸しの女なんぞに男は近寄りとうないからな」
「そんなん…一緒になった事世間に隠しとけばいい話やろ!」
「そない思い通りにいかんのが世の常や。 お前も夜の世界で生きてきたんやったら身に染みて分かっとるはずやで、人の色恋話は必ずどっかから漏れるもんやて」
「そんなことない…私絶対隠し通す!
そやから…」
「そう言うて一緒になってお互い身を滅ぼした金貸しと女をワシは今までぎょうさん見てきたんやお前に同じ思いはさせられへん」
「同じになんかにならん!
絶対ならん…グス…」
「はぁ…しゃあないのぅ
こっち来い」
グイッ
ギュッ……
「……!?」
萬田くんは、私の体を引き寄せて空いた片手でキツく抱きしめた
「こうなること分かっとったから…ワシは3年前お前みたいな頑固で聞き分けの悪い女好かん言うたんや」
「……私の事嫌い?」
「あぁ…めちゃくちゃ嫌いや」
「じゃあなんで抱きしめるん?」
「 ほんっまにお前は察しが悪いのぅ… 大事に思っとるからこそお前を金貸しの女にしたくないんや 」
「……………」
「頼むからワシの気持ち分かってくれ…お前が自分の欲望満たすためだけのどうでもええ女やったらとっくに手出して抱いとる
ワシかてお前をキズモノにせんために必死に男の理性保っとんのや」
そう言って私をまっすぐ見つめる萬田くんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた
ミナミの鬼と言われ恐れられている人の涙…
萬田くんは本気で私のことを思ってくれてるその目からその思いが伝わってきた…
一緒になれなくても
その思いさえお互いが感じて知っていればもうそれでいいのかもしれない…
萬田くんの目を見ているとそんな風に思えた
「萬田くんの気持ちも考えんと…苦しませるような事して本当にごめんなさい…」
「ほんまじゃ
こっちの気持ちも知らんと…お前はいっつも強引過ぎるんや」
「だってほんまに好きやから…」
………
クイッ
チュッ…
「ん…!?」
萬田くんがおもむろに私にキスをした
「ワシがお前にキスすんの…これが最後やで」
「はあ!?そんなん絶対いや!!!
もっとキスして!!」
私はこの機会にできる限り萬田くんとキスをしておこうとキス魔と化した
チュッチュッチュッチュッチュッチュッ…………
「ちょっ!!やめ、やめんかい!!」
「さっきあんなに首筋にキスされて喜んでたんは誰やろうなぁ?」
「な……!別に喜んでないわい!
ほな今からキス一回につき10万払うてもらうで!払われへん場合はトイチの利息で返済してくれたらそれでええぞー」
「はあ?なんやのそれ!
そんなん踏み倒したる
つべこべ言わんとはよキスして!」
「ミナミの鬼をそない安う
見られたら困りまんなぁ 」
「なんか萬田くんまるでタチの悪いホストみたいやな」
「誰がホストじゃ!ワシは金貸しや言うとるやろ!それと、はよこの手錠外してくれるかぁ、ワシは犯罪者と違うんや」
「えーあと10回私にキスしてくれたら外してあげてもええかなー?いや20回にしとこかな」
「ほーう、ほなワシをここの部屋に閉じ込めてる時間10分毎に10万円ずつ上乗せして請求させてもらうでー」
「もーう!萬田くんほんっっまに頑固やな!」
「それはこっちのセリフじゃい!」
結局私らは一緒にならずに
お互いの家業に専念するほうが幸せなんかもしれん…笑
でも何より萬田くんの正直な気持ちを知れて良かった
意外とそっちはウブやってことも…笑
一緒になる事が全てじゃないけど
それぞれの家業を降りたときに
まだ2人の思いが同じやったら
その時一緒になれたらいいな…