俊ちゃんが告白してきて1ヶ月が経ちました。
あれから俊ちゃんが家に来ることはなく少し心配になります。
学校で時々見かける俊ちゃんはこれといって変わったことは無いというふうに生活しているのです。
俊ちゃんは強いです。
だから俊ちゃんに私は不釣り合いです。
もっと素敵な女性がいます。だから大丈夫。
「あ、吉野くん。委員会の事で相談なんだけど、。」
「あぁ、七瀬さん。委員会か、分かった。」
最近は颯太くんと莉音ちゃんが仲が良いように見えます。
少しモヤッとするけれど私には関係の無いこと。
分かっていながらも少し苦しいです。
「ここはこうすればいいんじゃないかな。」
「うん、分かった。ありがとう吉野くん。」
「いいえ。」
「え、ねぇ莉音って吉野の事好きなの?」
「え?別に?私と彼が付き合ったらいい感じのカップルになるかなぁ〜みたいな!」
「あーね。腹黒。」
嘘だけど。ずっと前から好きだけど。
こんな奴らに本音なんか話す訳ない。
「でもさ、最近莉音と同じ部活のあの子、なんだっけ。」
「万人受けしそうなあの可愛い子。」
「あぁ、百瀬 鈴?」
「あぁ、それそれ。最近めっちゃ吉野と仲良くない?」
そんなん分かってるよ。
こっちだって必死にあの人のために頑張ってんのに。
百瀬 鈴を初めて見た時影でモテるタイプだなって思った。
私のハンカチを拾って届けてくれる。当たり前の事を自然とした。
当たり前のことを自然にするのは難しいと思う。
でも全部普通な子。
第一印象は普通だった。
部活動体験でそれぞれのやりたい楽器の所に行ってみてと言われて再会をした。
少しだけ話してみた。
私とは違ういい子だった。
試しの演奏という事でトランペットを各自で吹くことになった。
私は中学の頃まぁまぁな吹奏楽部でファーストトランペットをしていた。
だからかなり、いや結構自信があった。
順番に吹くことになって私の演奏順番が来た。
緊張なんかせずとも心地よく吹くことが出来る。
誰よりも上手いと思った。
周りの子も上手と私のことを褒めだした。
それが心地よかった。
それなのに、次の彼女の番になった時だった。
きっと他の奴と同じように普通のトランペットを吹くんだろうと思っていた。
けれど彼女のトランペットは格別だった。
人を魅了する丁寧な音色と音の出し方。
プロに匹敵する程上手かった。
彼女が吹き終わった後顧問の先生がそそくさとやってきて言った。
「あなたが百瀬 優の一人娘?」
百瀬 優という名を聞いただけで鳥肌が立った。
その一人娘が彼女だとは思いもしなかった。
「誰か探していたけれど音を聞いて分かったよ。百瀬 優と同じような吹き方をするね。」
勿論のように先生はべた褒めだった。
入部後彼女は2、3年の先輩を差し置いてファーストトランペットになった。
私は環境で負けたのだと思った。
けれど彼女は頭も良ければ運動神経もそこそこいい。
少し羨ましいと思う自分がいた。
だからだろうか。
中学からずっと好きだった彼を取られたくないと思った。
少しずつ距離の縮まっているふたりを見るだけで嫌気が差した。
結局全部彼女に取られるんだと全てをえぐられた感覚になった。
あれは正しく才能だった。
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