テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
颯太くんと莉音ちゃんの距離が近くなっている気がします。
颯太くんは相変わらず私と帰ってくれるし話しかけてもくれます。
焦る必要無いはずなのに、早く想いを伝えないといけないと感じるんです。
どうせ死ぬなら好きな人に好きと伝えて死にたいでしょう。
放課後の私ひとりの音楽室には日が照っていました。
何処からか話し声が聞こえます。
窓を開けて下を除くと颯太くんと莉音ちゃんがいました。
「ごめんね、急に呼び出したりして。」
「いや、大丈夫だよ。用事ってなに?」
なんで告白しているのかはよく分からない。
百瀬 鈴に取られたくないって思いが強すぎた。
それだけ。たぶん。
「私、吉野くんが好き。私と付き合って、?」
たぶん、いや絶対振られる。
振られるのになんで告白なんかしてるんだろう。
「ごめん、俺他に好きな人がいるんだ。」
「だから七瀬さんとは付き合えない。」
「知ってる、急にこんなこと言ってごめんね。」
「じゃあね、七瀬さん。」
涙が溢れてるはず。
ちゃんと好きだったのにね。
私が吉野 颯太を好きになったきっかけは単純だった。
「莉音さぁ、最近調子乗ってない?なんか、勘違いしてる?」
「は?勘違い?」
「あんたさちょーっと男に人気あるからって調子乗りすぎ。ほんとうざい。」
「なに、私がモテてるからって嫉妬?」
「は?そんな訳ないでしょ!?」
中学に入ってより一層顔重視の世界になった。
可愛い可愛いって男から言われて私はお高く止まっていた。
そのせいで女達からの憎悪と嫉妬の塊を押し付けられていた。
女子トイレは戦場。
だからこそいつも呼び出されて文句を言われていた。
「やってらんない。ほんとめんどくさいなぁ。」
私が女子トイレを後にして廊下に出た時いつも文句を言っていた女が私の髪を引っ張って「ふざけんな」と連呼していた。
「雅人くんは私の彼氏なのに!」
そう言って手を挙げた。
頬が赤く腫れる覚悟をした。
綺麗な顔が腫れる。それが嫌だった。
「おい、手を出すのは違うだろ」
そう言って私を助けてくれたのが吉野 颯太だった。
困っているのを助けて貰ったら好きにくらいなると思う。
私はその日以来社交的になった。男子にも女子にも媚びる。
これが上手い生き方だと知った。
そして少しだけ吉野 颯太と仲良くなった。
野球部のピッチャーらしい。
野球一筋という感じも好きだった。
高校に入りクラスは別れて話す機会も無くなった。
そして、あっという間に私が今まで維持していた隣を奪われた。
もうこの時点で私の恋の決着は着いていたのに。