テラーノベル
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春の終わりが近づくある日。
いつものように、シェアハウスのリビングは賑やかだった。
丈一郎:「おはよう〜! 今日もごはんできてるで〜」
丈一郎の声に、次々とメンバーが集まってくる。
謙杜:「お〜、大橋くんの卵焼き、今日ちょっとデカない?」
和也:「謙杜、お前またつまみ食いしたやろ」
謙杜:「してへんしてへん! 一口食べただけやん〜!」
そんな日常の中――
真理亜は、ふと不思議な“違和感”を覚えていた。
真理亜:(……最近、みんなの目線がちょっとずつ変わった気がする)
気のせいかもしれない。
でも、何かが少しずつずれてきているような――そんな感覚が、胸の奥に引っかかっていた。
その日、学校の帰り道。
真理亜は大吾と二人でスーパーに寄っていた。
真理亜:「今日、丈一郎くんと恭平くんが“唐揚げ食べたい”って騒いでてな」
大吾:「なんやそれ(笑)でも、みんなほんまに仲ええなぁ」
そう言ったとき、大吾が少しだけ言いよどむ。
大吾:「……でも最近、ちょっと、変わった気ぃせぇへん?」
真理亜:「え?」
大吾:「みんな……真理亜ちゃんのこと、前よりちょっと意識してる気がして」
その言葉に、真理亜はドキリとした。
真理亜:(やっぱり、気のせいじゃなかった……?)
その夜。
いつものように7人がリビングに集まり、
カードゲームをしたり、お菓子を分け合ったりしていたが――
なんとなく、“空気”が違っていた。
駿佑が真理亜の隣を取り合おうとし、
恭平が突然「真理亜、髪型変えたん?似合ってるやん」と言えば、
丈一郎が「そういう軽口やめとけって」とやんわり注意する。
そして流星は、さりげなく真理亜の好きなお菓子を買って帰ってきて、
和也は誰よりも早く彼女の手伝いを申し出る。
謙杜は、最近ちょっとだけ“無駄に元気すぎる”。
真理亜:(……なんやろ、これ)
みんなが優しい。
でも、それぞれが――どこか“特別”であろうとしている気がする。
その夜、真理亜は自分の部屋のベッドの上で天井を見つめていた。
真理亜:(誰か一人じゃない。みんなの視線の温度が……微妙に違う。それは……私が“管理人”として慣れてきたから?それとも……“女の子”として、見られ始めてるから?)
記憶障害のある彼女にとって、“恋”はまだ少し不確かなもの。
けれど――
誰かの視線にドキッとしたり、
誰かの言葉にぎこちなく笑い返してしまう自分がいる。
真理亜:(これって、なんなんやろ)
誰か一人に惹かれてるわけじゃない。
けれど、みんなのことが“気になる”。
その揺れる想いが、静かに真理亜の心に波紋を広げていた。
――七角関係のはじまりは、
こうして“気づかない違和感”として、静かに始まった。
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