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シェアハウスの朝。
いつものようにリビングに集まる7人と真理亜。
しかし――その日、最初に空気を変えたのは、道枝駿佑だった。
駿佑:「真理亜ちゃん、今日の髪型、いつもとちゃうな。……なんか、めっちゃ似合ってる」
急にストレートに言ったその一言に、全員の動きが一瞬止まる。
真理亜:「……あ、ありがとう」
真理亜はとっさに笑ったけれど、顔が少し赤くなっているのが誰の目にもわかった。
駿佑:「なあ、今日放課後、駅前のカフェ行かん? 気になってたとこあって」
真理亜:「え、私と?」
駿佑:「うん。二人で」
その一瞬――
空気が変わった。
丈一郎が新聞をめくる手を止め、
大吾がカップを持つ手に力を入れる。
恭平は「へぇ〜みっちー、珍しいな」と笑ったが、その目は鋭くなっていた。
流星はじっと真理亜の様子を見ていて、
和也はいつもより笑顔の奥に静かな沈黙を抱えていた。
謙杜だけが、ぽかんとしたまま「え、カフェってオシャレなとこ?」と場を和ませた。
真理亜:(……こんな堂々と“誘う”って、今までなかった)
真理亜は戸惑いながらも、返事をした。
真理亜:「うん……ええよ。じゃあ、学校終わったら行こっか」
その日の放課後。
二人は駅前の小さなカフェに入った。
春の香りが残る店内で、駿佑は真理亜に向かって、真正面から話す。
駿佑:「……俺な、真理亜ちゃんのこと、ちゃんと“ひとりの女の子”として見てる」
真理亜:「え?」
駿佑:「俺、今まで誰かを好きになっても、“好きになってもいいのか”って思って止まってきた。でもな、真理亜ちゃんには、もう止まられへん」
真理亜:「……でも、私……」
真理亜は言いかけて口をつぐんだ。
胸の奥で何かが強く脈打っていた。
記憶の空白と、自分の感情への戸惑い。
でも――今、目の前の駿佑は、まっすぐで、真剣だった。
その夜、シェアハウス。
駿佑と真理亜が同じタイミングで帰ってきたとき、
7人の視線が一斉に集まった。
誰も何も言わなかったけれど――
全員が、はっきりと気づいていた。
「最初に動いた」のは道枝駿佑だった。
そして、その一歩が、
それぞれの“胸の内”を確実に揺らし始めていた。