失恋の、そのあとに

収録の後阿部は照に呼ばれて別室に行き、しばらくすると照だけが戻ってきて阿部の荷物を持ってまた出て行った。

佐久間がそれを心配そうに見ていたが、『ちょっと大事な話あるから。後で電話する』と頭を撫でられていた。

気になるけど今日は俺も約束をしているので帰る事にした。

恋人が帰り、深夜に照から連絡が入った。

💛「ちょっといい？今日のことで」

❤️「うん、どうした？」

できるだけ平静を装って返すが、阿部の事だろうなと思う。

💛「あの後2人で話したんだけど、阿部に一晩だけ抱いてくれって言われて」

❤️「えっ」

💛「断ったけど」

❤️「そうなんだ」

阿部にしたらとんでもない屈辱だろう。

自慰を見られ、思いを知られ、せめて抱いてくれと頼むも断られ。

照は俺が失恋したのを知らないから言ってきたんだろうが、俺は阿部に感情移入しすぎていて胸が痛かった。

💛「どうしたら良かったんだろうと思って」

❤️「…いいんじゃないの、それで」

とは言え、佐久間が悲しい思いをする事になるならそれはそれで俺は望まない。

❤️「照が大切にしなきゃいけないのは、佐久間でしょ」

💛「そうだよな、うん。ありがとう」

照も断った罪悪感を、その判断は正しいと誰かに言って欲しかったんだろう。

電話を切ったあと、居ても立ってもいられず阿部にメッセージを送った。

落ち込んでいるだろうが泣いてはいないか、自分でもなぜだかわからないくらい気になって仕方がない。

❤️『宮舘特製ローズバスが恋しくなったら、いつでもおいで』

我ながら何を送っているんだろうと思ったが、阿部から少しして電話があった。

💚「ありがとね。舘さんの声で聞きたい、今の」

❤️「いいだろう。宮舘のローブ」

💚「噛んだぁ！」

電話の向こうで哄笑が聞こえてきた。

❤️「噛んでない」

💚「ローブって言ったし」

❤️「言ってないです。宮舘特製ローズバスへご案内」

💚「ふふふ。ねぇ、明日はローズバスありますか？」

❤️「ご用意いたしますよ」

明日久々に来る事にしたようだ。

これまで一切の連絡を断っていた阿部が来たいと意思表示をした。

重い話も出るだろう、それは受け止めようと覚悟する。

だが、照が阿部を抱かなくて良かったと思う気持ちと、薔薇を用意する楽しみができたと思っているこの気持ちが何なのかは自分でもまだ説明がつかなかった。