テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ライラ からぴち・シクフォニ♡
20
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……そっか」
なんやろ。自分で聞いといて、いつきくんは全然興味なさそうな顔をしてる。今にも溜息をつきそうなその横顔を見ていたら、好きになったこと自体が申し訳なくなってしまうやん。
「おーい、いつまでそこにいんの?」
ふいに声をかけてきたのは、あの「狐」こと、いっちゃんやった。
「……いっちゃん」
朝からずっと険悪やったこの二人。いつきくんがずっと待っていたのは、結局こいつなんやな。
「あー……ありがとうな、しゅうと。それと、なんか、ごめんな」
いっちゃんが気まずそうに目を逸らす。
「……いや、別に。……お前に恩なんか感じてへんからな! いつきくんはお前のもんやないし、お前はこれからも俺のライバルやからな!」
悔しいけれど、こいつが来て安心した。いつきくんの表情が、やっといつもの柔らかいものに戻ったから。
「お前お前、言い過ぎじゃね?」
「お前はお前やろ!」
「……さっき、いっちゃんって呼んでたよ?」
「い、いつきくん!」
「……へぇ~」
ニヤニヤしながら嬉しそうに俺を見てくるいっちゃん。
……腹立つけど、今は前ほど嫌いやない。ちょっと見直したかも。今一番不安で、感情的になって怒り狂いたいのはいっちゃんのはずやのに、いつきくんを責め立てんと冷静に接してる。自分の彼氏が同じことしたら、俺なら絶対こんな風にできひん。
「と、とりあえず、いつきくんは頑なに理由を言いたくないみたいやから。意味わからんけど……二人には仲良くしてほしいねん。やから、さっきは、喧嘩になるような冗談言うてもて……ほんまに、ごめんなさい」
「ん?」
「……ゆうたとホテル行ったんじゃないって言ったことだよ。いっちゃん」
「あー……改めて聞いたら、また腹立ってきたわ」
いっちゃんの言葉に、いつきくんは苦笑いする。さっきと違って、その表情はとても優しい。相手を信じてるから、いつきくんのことを誰よりも知ってるからこそ、そんな顔ができるんやな。
そこへ、騒がしい足音が近づいてきた。
「しゅうちゃあん!!」
「しゅうとぉ!」
「いや、あんたとはそんな仲ようないし!」
りゅうせいくんが手を振りながら俺に抱きついてきて、その背後から「赤ちゃんヤクザ」こと、ともやも俺に抱きついてくる。何や、りゅうせいくんより足にがっつりしがみついてくるやんか。
「あ、さっきゆうたがしゅうちゃんのこと探してたけど、ケツ蹴ってトイレに閉じ込めておいたよ?」
「いや、それ立派なイジメやから」
りゅうせいくんががさらりと物騒なことを言う。
「りゅうせいはまだ根に持ってんだよ。ゆうたのせいでしゅうとが誰とも喋らなくなったんだろ? 今は仲いいけど」
「……え、なんでそれ知ってんの?」
心臓が跳ねた。
どういうこと? 俺、そんな恥ずかしいこと誰にも言うてへん。りゅうせいくんもいつきくんもいっちゃんも一年の時別のクラスやったのに。
「……ゆうたのせいって最近風の噂で聞いたんだよ。でも誰が言ったとかはわかんない。しゅうと、当時は『話しかけんなオーラ』全開だったし、一人でいたい子なんだと思ってた。ごめんな、気づいてやれなくて」
「いや、そんなん無理やし、全然ええよ」
ともやの言葉に、俺は小さく首を振った。当時の俺は、自分でも引くぐらい壁を作っていた自覚がある。
「俺っちは、ゆうたのせいって最近ともやに聞いた。誰かのせいでとは前から噂あったからわかってたんだけど。……俺が出会った時のしゅうちゃん、ほんと幽霊背負ってるみたいに下向いて歩いてたからね。それを聞いたら腹立ってしゃあないねん!」
りゅうせいくん、プンスカって音がしそうなぐらい面白い顔をしてる。その必死さに、思わず吹き出してしまった。
「……下手くそな関西弁つかうなや」
「えー、そろそろうまなったやろ? ……だけど良かった。しゅうちゃんが笑った」
そんな優しい顔で。最近、急にりゅうせいくんが俺に甘くなったんは、それを知ったからやったんやな。いや、今思い返せばりゅうせいくんはずっと俺に甘かったよな。俺が興味なかっただけで。
「赤ちゃん扱いせんといて」
言いながら笑ったけれど、結局、誰が『ゆうたのせいで俺が暗黒期に入った』なんてバラしたんやろう。いっちゃんも話を聞いてるだけやし、りゅうせいくんもともやも、それ以上深くは知らんみたいや。
……あ、あからさまに俺から目を逸らしてるやつがおる。わっかりやす。今、絶対心臓バクバクさせてるやろ。
「……いつきくんは理由知ってんの?」
「えええぇ!?!?」
いや、そんな驚き方ある!? 「もちろんです」って白状してるようなもんやん。
「……誰のせいなのか知ってたのかよ?」
いっちゃんの低い声に、いつきくんがおどおどと口を開いた。
「まぁ、そう、それは……聞いた。ゆうた本人から」
「「えええぇ!?!?」」
なんなん、このカップル。ハモりすぎやろ。
「じゃあ、 バラしたのはゆうたって事?」
「まぁ……俺は言ってないし、いつきくんがそんな事するわけがない。やからそうなんやろな」
「じゃあ、全てを知ってたのは、当事者の2人といつきくんだけだったんだ」
いっちゃんが納得したように頷く。でも、俺にはまだ分からないことがある。
「なんで、いつきくんに?」
「……頼まれたんだよ、ゆうたに。『しゅうとと友達になりたい』って」
「……なんや、それ」
どっからの話や。俺とゆうたがまともに喋るようになったのは、フットサルでよく会うようになってからのはず。でもその頃は、いつきくんと友達になったばかりの時期でもあった。
「なぁ、それよりいいの? ゆうた、トイレに閉じ込められてるんじゃないの?」
「あっ!!ほんまや! りゅうせいくん!!」
いっちゃんの言葉に焦る俺をよそに、りゅうせいくんはケロッとした顔で言った。
「嘘だって。『さっき先生に呼ばれてたから、全部の教室探してみれば?』って言っといた」
「……そんなん、永遠に見つからんやん」
「いいんだよ。大事な人を探してるんなら、人に聞いてねぇで自分で探せっての」
「……ん?」
今の言葉、どういう意味や。大事な人って……。
「さっ、行こうか、りゅせくん!」
ともやがりゅうせいくんを促して、二人は意気揚々と歩き出す。残された俺と、気まずそうな二人。……ゆうた、今頃どこを彷徨ってるんやろ。