テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夜の居酒屋は、相変わらず騒がしかった。
木の床を踏む足音、
グラスが重なる音、
途切れない笑い声。
国々が一つの卓を囲む光景は、
どこか異様で、それでいて日常的だった。
🇮🇹)ねえねえ、今日さ、久しぶりにみんな集まったし
🇮🇹)もう少し楽しもうなんね
🇬🇧)ほどほどにしてくださいね
🇬🇧)翌日の業務に支障が出ては困ります
🇫🇷)まあまあ、固いこと言うなって
🇫🇷)たまにはいいだろ?
アメリカは椅子に深く腰を下ろし、
いつものサングラスをかけたまま、曖昧に笑っていた。
🇮🇹)ねーねーどいつ、アメリカを酔わせてみるんね?
期待したようにドイツに囁く
🇩🇪)……賛成
案外ノリノリなようだ
🇮🇹)アメリカー!もっと飲むんね!
そう言いながらお酒を注ぐ
🇬🇧)ちょっとイタリアさんっ、そんなに
🇺🇸)HAHA……だいじょーぶだって
🇺🇸)俺、強いし?
軽い調子。
いつも通りの、元気なアメリカ。
誰もがそう思っていた。
けれど、時間が進むにつれて
彼の言葉は少しずつ遅れ、
身体は椅子に預けるようになっていく。
🇯🇵)……アメリカさん
🇯🇵)少し、お疲れでは?
🇺🇸)んー?
🇺🇸)気のせい、気のせい
そう言って、手をひらひらと振る。
笑い声はあるのに、どこか焦点が合っていない。
🇩🇪)……反応が鈍いな
🇩🇪)普段よりも
🇷🇺)ふふ、無理して呑んでる顔だな
アメリカは答えず、
ただテーブルに肘をつき、
サングラスの奥で目を閉じかけていた。
🇺🇸)……ちょっとだけ
🇺🇸)休憩……
そのまま、頭が前に揺れる。
🇮🇹)……あ
🇮🇹)ねえ、今さ
声を潜めて、イタリアが言った。
🇮🇹)サングラス、外しても
🇮🇹)起きないんね、?
少しいたずらっぽく笑いながら言う
冗談のつもりだった。
悪意も深い意味もない、ただの悪ふざけ。
🇫🇷)は?
🇫🇷)やめとけって
🇬🇧)不適切です
🇬🇧)本人の同意が――
🇩🇪)寝ている状態で触れるのは
🇩🇪)倫理的に問題がある
🇷🇺)……一瞬くらいなら
🇷🇺)問題にならんだろ
意見は割れていた。
けれど、誰も席を立たない。
誰も、はっきりと止めない。
🇯🇵)……
🇯🇵)アメリカさんは
🇯🇵)それを、好みません
静かな声だった。
それでも、その言葉は
居酒屋のざわめきに溶けていく。
🇺🇸)……や……
小さく、弱い声。
誰の耳にも、きちんとは届かなかった。
🇮🇹)……ちょっとだけなんね
🇮🇹)ほんとに
伸ばされた指が
サングラスの縁に触れる。