テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
miけぴン
46
花梨
54,611
48
#一般人
유리
56
【第三話:世紀末の魔術師、誕生】
「……ハハッ、大成功!」
夜風が吹き抜けるビルの屋上。
シルクハットを傍らに置き、黒羽快斗は手に入れたばかりの巨大な宝石を月光に透かしていた。
初めて身に纏った、純白の衣装。
亡き父親のクローゼットの奥で見つけたあの隠し扉から、すべては始まった。父の死の真相を暴くため、そして父の遺志を継ぐため、快斗は今夜、伝説の『怪盗キッド』の姿を世界に知らしめたのだ。
厳重な警備を嘲笑うかのように欺き、煙に巻いて見せた初陣。
快斗は不敵に笑み、自分の指先を見つめた。
あの観覧車の夜、ただの中学生として無茶なマジックを仕掛け、命の恩人を救ったあの指先だ。
「見ててよ、お巡りさん。……あの時あんたが言った通り、俺は本当に『泥棒』になっちゃったよ」
快斗は宝石をポケットに滑り込ませると、ハンググライダーの翼を広げ、夜の街へと鮮やかに滑空していった。
◇
翌朝。都内某所、ひっそりとしたカフェのカウンター。
「――昨日、都内の美術館に予告状通り現れた『怪盗キッド』ですが。警察の包囲網を完全に突破し、鮮やかに逃走……」
店内のテレビから流れるニュースの音を、松田陣平は煙草の煙を吐き出しながら眺めていた。
警視庁捜査一課強行犯三係。あの日、観覧車で生き残った松田は、今も変わらず刑事を続けている。
「おい、ゼロ。見てみろよ。また妙な派手好きの悪党が湧いて出てきやがったぜ」
松田がカウンターの奥に声をかけると、エプロン姿の男――降谷零が、苦笑しながらコーヒーを差し出した。
公安としての裏の任務をこなしつつも、こうして生き残った同期の松田とは、互いの立場を守りながら密かに連絡を取り合っている。
「怪盗キッド、か。かつて世間を騒がせた大泥棒が、数年の沈黙を破って再び現れたというわけか。相変わらず警察を挑発するような真似をしてくれる」
降谷はテレビに映し出された、現場に残された白いトランプカードを鋭い目で見つめた。
「だが、ただのコソ泥にしちゃあ、手際が良すぎるな。警備の裏をかくタイミング、手品の技術……。どっかで見たような、嫌なスマートさだ」
松田はコーヒーを一口啜り、ふと、自分の記憶の底にある「ある光景」を思い出していた。
3年前のあの日。観覧車のゴンドラから自分を引っ張り出し、爆風の中を仕掛け傘一つで飛び降りた、あの「生意気な中学生」の姿を。
あのガキの、神業のような指先。
…そしてテレビに映る、キッドの華麗な手口。
(……いや、まさかな)
松田はすぐにその考えを振り払った。あいつが生きてりゃ、まだ高校生だ。こんな大それた犯罪を起こせるわけがない。
けれど、妙な胸騒ぎが消えないのも事実だった。
「なぁ、ゼロ」
「なんだ?」
「次のキッドの予告、俺たちの管轄にも応援要請が来るかもしれない。……あるいは、個人的にでもいい」
「ほう?」
降谷が興味深そうに片方の眉を上げる。松田はニヤリと好戦的な笑みを浮かべ、煙草を灰皿に押し付けた。
「次は、キッドが現れる現場に行ってみようか。あの白いキザ野郎が、本当にただのマジシャンなのか……この目で直接、確かめてやりたくなった」
「いいだろう。僕もあの泥棒の正体には、少し興味がある」
降谷もまた、不敵な笑みを返す。
こうして、生き残った二人の優秀な警察官の視線が、新星のごとく現れた『怪盗キッド』へと向けられることとなった。
そのキッドの正体が、かつて松田が命を救い、そして松田の命を救った「あの少年」であるとは、まだ誰も知らない――。
コメント
3件
心理描写(?)とか表現の仕方とか言葉選びがすごすぎます……!✨️
おお、キッド誕生のシーン、めちゃくちゃかっこよかった! 白い衣装とハンググライダー、そして「あの時あんたが言った通り」のセリフがグッときたわ。松田と降谷がまさか再登場するとは思わなくて、観覧車の伏線がここでつながるのが熱すぎる🔥 この二人がキッドの正体に気づくのか、今からドキドキだわ!