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「……あ、すごい楽しい遊び閃いちゃったわー」俺はぽつりと呟き、パンッとひとつ手を叩いた。
土下座したまま硬直している神条たちも、悲悲鳴を噛み殺して震えていた傍観者たちも、何が始まったのかと怯えた目で俺を見上げてくる。
『司様? 楽しい遊び……ですか?』
ヘカーティアが目を輝かせ、興味津々といった様子で覗き込んできた。
「ああ。お前たち、異世界転生といえば『チート能力』だよな? 自分だけが特別な力を手に入れて無双する、あの夢のような展開だ」
俺の言葉に、一瞬だけクラスの中に「もしかして……」という浅ましい期待が走ったのが分かった。
神条や鬼塚の瞳に、ほんのわずかな希望の光が宿る。
俺は死んだ魚のような目のまま、口元だけに薄っすらと笑みを浮かべた。
「安心しろよ。俺は太っ腹だからな。お前たち全員に……『能力(スキル)』を与えてやる」
俺は右手をかざし、クラスメイト30人と教師2人に思考を向けた。
【対象:近衛司以外の32名】
【象徴:全員に『完全に役立たずなクソ能力』をランダムに付与】
「森羅万象——『能力付与(ギフティング)』」
言葉と同時に、全員の体に淡い光が宿る。
「うわっ……! 力が……入ってくる……!?」
「マジかよ、俺たちにも能力が!?」
光が収まった瞬間、神条が立ち上がり、自分の両手を歓喜の表情で見つめた。
「ククッ……あははは! ざまあみろ近衛! 能力さえあればこっちのもんだ! 俺の能力はなんだ……発動しろッ!」
神条が俺に向かって格好つけて手をかざす。
……ポンッと音がして、神条の頭上から『うっすら温かい微風』が吹き抜けた。
「……は?」
「神条、お前の能力は『自分の体温を0.1度だけ上げる風を出す能力』だ。おめでとう、エアコンの微風以下だな」
「な……なんだよそれ……っ!?」
顔を青ざめさせる神条を無視して、俺は他の奴らの「能力」を淡々と読み上げてやった。
「鬼塚、お前は『10分間瞬きを我慢すると、鼻毛が1ミリ伸びる能力』だ」
「姫宮、お前は『1秒に1回、自分の爪の色を『半透明』に変えられる能力』」
「黒岩先生は『髪の毛を1本犠牲にして、1円玉を1枚生成する能力』。ハゲる覚悟で頑張れば缶コーヒーくらい買えるんじゃないか?」
「な、なんだよそれええええっ!?」
「そんなの何の役にも立たないじゃん!!」
「化け物に勝てるわけないだろこんなので!!」
絶望の悲鳴が吹き荒れる。
期待させておいて底なしの地獄へ叩き落とされた奴らの顔は、本日一番のみっともなさだった。
『ふふっ、クソ能力……! 司様、素晴らしすぎます! 期待させて落とす、最高のエンターテインメントですね!』
ヘカーティアが口元を押さえて、クスクスと嬉しそうに身をよじる。
俺はゆっくりと立ち上がり、バリアの境界線へと歩いた。
「さあ、力は与えたぞ」
俺は指先を鳴らし、クラスメイトたちを護っていた半径10メートルの『絶対不可侵領域(バリア)』を——完全に消去した。
「ヒィッ……!? バリアが……消えた……!?」
途端に、異世界の不快な重圧と、未知のモンスターたちのドス黒い毒気がダイレクトに奴らを襲う。
地平線の彼方から、巨獣たちが「餌」の匂いを嗅ぎつけて一斉にこちらへ向きを変えた。
ドシン、ドシンと地響きが迫ってくる。
「ひいっ! 助けて! 近衛くん助けてえええっ!」
「能力あげたからって、こんなの無理だよぉぉっ!」
泣き叫び、逃げ場を失ってパニックになる32人。
俺はヘカーティアの腰を引き寄せ、空中に召喚した特等席のソファへ腰掛けた。
冷たい視線で地べたの奴らを見下ろしながら、最後の言葉を贈ってやる。
「力は与えたんだ。あとはその『自慢の能力』を駆使して、この異世界を死ぬ気で生き残ってみろよ」
コメント
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第6話、読み終わりました!いやあもう、最高にスカッとしましたね…!「チート能力」って言葉で期待させてからの、まさかのクソ能力のオンパレード(笑)神条の「体温0.1度だけ上げる風」とか、鼻毛1ミリ伸びるとか、一つひとつが絶妙に役立たずで、作者さんのセンスが光ってるなあと。ヘカーティアが嬉しそうに「クスクス」してるのも可愛くて、歪な主従関係がいい味出してますね。最後のバリア解除で一気に現実を突きつける流れも、引き締まってて心地よかったです。続き、すごく気になります!