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「……近衛、すまなかった」モンスターの咆哮と、逃げ惑う連中の悲鳴が響き渡る中。
パニックになる人波を押し分けて、俺の足元まで歩み寄ってくる奴らがいた。
元幼馴染の白石葵と、図書委員の佐藤拓海だ。
「葵……佐藤……?」
白石は恐怖で脚をガタガタと震わせ、涙をボロボロとこぼしながらも、逃げようともせずまっすぐに俺の目を見つめていた。
「私……ずっと怖くて、莉乃たちに逆らえなくて……目の前で近衛が苦しんでるのに、助けることもできずに逃げてた。……『何もしてなかった』なんて嘘。私は、近衛を見捨てた加害者だよ。本当に……本当にごめんなさい」
彼女は深々と頭を下げ、地面に膝をついた。
その隣で、佐藤も拳を強く握りしめ、青ざめた顔で俺をしっかり見据える。
「僕もです。図書室で一瞬親しくしてくれた近衛くんを、自分がターゲットになるのが怖くて突き放した。……こんな『能力』で許してもらおうなんて思わない。僕たちのした罪は、能力なんかじゃ消えない。だから……能力なんていらない。僕を、ここで罰してください」
二人は二度と目を逸らそうとはしなかった。
神条や姫宮のように命乞いのためでもなく、保身のためでもない。自分の犯した「傍観」という罪を真っ向から認め、俺の裁きを受け入れる眼差し。
『……司様』
ヘカーティアが静かに俺の顔を覗き込む。
俺の死んだ魚のような瞳に、わずかな感情が灯る。
「……白石。佐藤」
俺は二人の前に歩み寄り、静かに言葉を紡いだ。
「神条たちの前で頭を下げず、自分の罪から逃げなかった。……お前たちの謝罪だけは、本物だと受け取ってやる」
俺は二人の頭上に手をかざした。
**【対象:白石葵、佐藤拓海】**
**【象徴:付与されたクソ能力の概念書き換え、および再構築】**
**【付与権能:白石『絶対防御(イージス)』/佐藤『解析閲覧(アナライズ)』】**
「森羅万象——『能力進化(オーヴァードライブ)』」
二人の体を、まばゆい金色と青銀の光が包み込む。
「え……? 温かい……?」
「これは……頭の中に、モンスターの弱点や世界の理が流れてくる……!?」
白石が差し出した手の先には、空間そのものを切り取るような絶対的な光の盾が展開され、佐藤の瞳は未知の魔獣の構造を完璧に見抜く「解析の眼」へと変貌していた。
「能力はいらないと言ったな。だが、これはお前たちへの許しじゃない。『戦うための武器』だ」
俺は背後のモンスター群と、腰を抜かして泣き叫ぶ神条たちをアゴでしゃくった。
「その力で、自分の身と……まあ、あのみっともないゴミ共を助けたいなら助けてみろ。お前たちがどう足掻くか、高みの見物とさせてもらう」
「近衛くん……っ、ありがとう……! 私、もう逃げないから!」
白石が涙を拭い、光の盾を構えて一歩前へ踏み出す。
佐藤もメガネの奥の瞳に強い意志を宿し、「白石さん、右の巨獣の弱点は胸の核だ! 僕が誘導する!」と叫んで駆け出した。
絶望に支配された地獄の中で、罪を認めた二人だけが、圧倒的な「ヒーロー」として覚醒する。
『ふふ、見事な采配です司様。反省した者には希望を、浅ましい者には更なる絶望を。……本当に、どこまでも魅力的ですね』
ヘカーティアが俺の腕に抱きつき、うっとりと頬を寄せた。
俺は特等席のソファから、覚醒した二人の奮闘と、それに群がる哀れないじめっ子たちの醜い争いを、冷ややかに見下ろした。
コメント
1件
第7話、読み終わりました…「傍観」という罪を正面から認めた白石と佐藤に、ちゃんと向き合った近衛くんの姿勢、すごく好きです。能力を与えるシーン、許しじゃなくて「戦う武器」っていう距離感が、この作品のダークさと希望のバランスを感じさせて胸が熱くなりました。罪を認めた者だけが覚醒する構図、痺れますね…! 丁寧な心理描写、ありがとうございます。