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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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柘榴とAI

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最寄り駅まで白川さんを送り、俺自身も家に帰って来てから。
ベッドに寝転がって、ジッと天井を見上げていた。
お互いに悪い所というか、自分の情けない所も見せようっていう目的のデート。
前回とはまた違った、今度はどこに行こう? というのが事あるごとに発生して……なんというか、凄く楽しかった。
何をするにしても遠慮する彼女から要望を聞き出すのは、やはりそれなりに苦戦はしたけど。
それでも、以前より……というかこれまでよりずっと素直に“やりたい、したい”を言葉にしてくれる様になった気がする。
その度に申し訳なさそうにするけど、でも実際にソレを一緒にやってみれば。
やっぱり白川さんは、子供みたいに柔らかい笑顔で笑うのだ。
なんかもうこのまま死んでも悔いはないんじゃないかって気持ちを、一日中味わっていた訳だが。
そんな彼女に対して……ちょっとだけ、意地悪をしたのだ。
モデルガンの射撃体験が出来るお店へと連れて行き、彼女に試射をやって貰った時。
本当なら単純な的当ての方が、ずっと“それっぽかった”と言えるのだろう。
しかしながら、どうしても此方の疑いを確かめたくて。
最初から、早撃ち競技を勧めてしまった。
「あの時の白川さんの雰囲気……まるで、人が変わったみたいだった」
今でも鮮明に思い出せる。
本当に“ガス式のモデルガン”と言う物を扱ったのは初めてだったらしく、撃ち始めは普段の彼女と言うか。
新しい事をやってみて、はしゃいでいる様子が伺えたのだが。
外野が騒がしくなって来た頃、彼女の瞳が……妙に冷たくなった気がしたのだ。
更に言うのなら、その後の射撃。
これまでアワアワしながらも一生懸命撃っていた彼女が、実は演技だったのではないかと思ってしまう程に。
どこまでも“慣れている”動きを見せたのだ。
彼女もガンサバのプレイヤーなのだ、あり得ない事ではないのでこれだけでは確信には至らない。
普段のプレイだって、俺のあげたハンドガンをずっと腰に下げているし、此方が見ていない所で使っていた経験だって数多くあるだろう。
けど……あの時の空気、そして身体の動かし方、銃の構え方。
それ等が全て、俺の中では“6key”と被って見えた。
中途半端とも言える程度に腰を落とした姿勢、アレに関しては何が起きてもすぐに動ける様にする為。
急に敵が出現しても、例え射撃途中だったとしても、咄嗟に回避行動を取れる様にしているから。
正確に、百発百中を狙うよりも、“移動”に重点を置いている人の姿勢。
更にはあの独特な銃の構え方だ。
最初こそ“まさに素人”という撃ち方だった彼女が、あの瞬間だけは明確に変化したのだ。
C.A.R Systemという銃を斜めに構える様な、非常に特徴的な射撃体勢。
普通なら腕を伸ばして安全に射撃する所を、肘を曲げて自らに近い場所で銃を構える。
銃そのものの重量を支える為に左手を添えるのではなく、正面から押さえつける様にしてピストルを安定させる構え方。
弾を発射すれば、当然の様にブローバックするスライドに対し。
目の前に迫るソレに彼女は全く怯えた様子など無く、近くの的は全てその状態で撃ち抜いた。
その後距離がある方の的に関しては、すぐさまバッと腕を伸ばして撃ち抜く。
これ等の行動を、傍から見て全く違和感なくこなしていたのだ。
そしてそれは、6keyの得意とする戦い方。
たった五発だ。
時間にすれば数秒とも言えないような短い時間。
だというのに……その時の彼女は、間違いなく“普段の白川さん”とは別人の様に見えた。
「やっぱり白川さんが、シックス……なのかな」
状況証拠としてはまだまだ弱いとしか言いようがない。
でもあの時の動き、そして実力。
更には銃を撃っている時の彼女の雰囲気が、どこまでもあの賞金首を彷彿とさせたのだ。
見た目も体格も全然違うのに、それでも彼女が“彼”なのだと……心の何処かで、確信してしまった気がする。
「であれば俺は、どうすれば良いのかな」
呟いてみるものの、答えなんか出る訳がない。
これまでは、とにかくシックスを倒して認められるんだと必死になってきた。
でも実際には、目的の途中経過とも呼べるその人が……自分の想い人だった訳だ。
こんなんじゃ順番がバラバラだ。
俺はもっと白川さんの近くに行きたくて、それを叶える為にお兄さんにも認めて欲しくて。
この条件として、賞金首の6番目を倒す事を目的として来た。
だというのに、その最初のハードルに……彼女が居た。
ゲームなんだ、気にする事は無い。
自分の方が強いんだと証明すれば、それこそ彼女だって俺にもっと興味を持ってくれるかもしれないじゃないか。
そんな風に思ってしまったりもするのだが。
『ごめん……なさい』
俺に銃を突きつけながら謝って来た“シックス”の言葉が、頭の中にリフレインしている様だった。
無表情だったし、滅茶苦茶怖かったし。
本当にいつも通りの彼が、あの時だけはちょっとだけ変な行動を起こした。
それだけ、の筈なのに。
あの仮面の向こうで、あの言葉と共に。
俺の知る白川さんが、泣きそうな顔を浮かべているのが想像出来てしまうのだ。
そんな相手に向かって、銃を向ける?
出来るのか? そんな事が。
絶対に無理だ。
例えゲームだったとしても、あの子に武器を向けるなんて真似。
もしもあの時のシックスの姿が、白川さんの姿だったら。
そう考えるだけで、ゾッと全身に寒気が走るというものだ。
これまで幾度となく戦って来た筈なのに、その記憶さえも今では怖いと感じてしまう程。
「……俺の目的地って、どこなんだろう」
今日は凄く楽しかった、また彼女の新たな一面を見られた気がして。
いつも通り慌てたり、遠慮したりする姿も多かったが。
それでも前以上に、とても近い場所で一緒に過ごせた気がするのだ。
以前よりも身近に、“悪い所を見せ合う”なんてデートの筈だったのに。
より一層、白川さんの事が好きになった気がする。
俺は、どうしたいのだろうか?
世間一般で言う、“彼氏彼女”の様な存在になりたいのか?
間違ってはいない、俺の事を好きだと言ってくれたら、それこそ飛び上がる程嬉しいと感じる事だろう。
けどあの子は、“そういう次元”で異性を見ていない気がする。
そもそも恋愛とかそういう事に興味が無い……訳ではないんだろうけど。
自らとは違う世界と捉えているかのように、一歩引いた様子を見せるのだ。
もしもそういう場所に踏み込むと決めてくれるとするのなら。
此方の勘違いとか、大袈裟な表現かもしれないけど……それこそ、“人生を決める”瞬間な気がして来るのだ。
それくらいに、彼女の瞳は真っすぐ相手を見ている。
チラチラと視線を逸らそうとも、時たま力強い眼差しを向けるその瞬間。
あの時だけは、まるでその人の本質を見ているかの様な、とても綺麗な瞳で覗き込んで来るのだ。
その瞳に応えられる人間にならないと、隣に並ぶ資格すら無い。
そんな風に、思ってしまったりもするのだが……。
「駄目だ、全然答えが出ない……」
ボヤきつつベッドを起き上がり、意味も無くパソコンを起動してみれば。
検索ページのお勧め欄に、ゲーム内で“シロさん”にプレゼントしたあの銃のモデルガンのページが表示された。
どうやら何かしらのセール対象になっているらしく、今だったら普通よりお安く手に入るらしいけど。
通販サイトを開いてから、思わず溜息が零れた。
「違うんだよなぁ……そうじゃないんだよ。もしも白川さんがシックスだった場合、コレをプレゼントした所で……喜んでくれるかもしれないけど。違うんだよなぁ……」
部屋に一人だと言うのに、ブツブツと呟いてしまった。
この銃をゲーム内で渡した時、あの子は凄く嬉しそうな顔をしたんだ。
とても柔らかくて、思わず目を奪われる優しい微笑。
あの時の顔がもう一度見たくて、何度も件のモデルガンのページを開いてしまうけど。
もしも本当に彼女がシックスなら、そもそも“土俵が違う”。
相手は賞金首だし、これだけ有名になっている状態。
ゲーム内で手にしている銃は、愛用しているソレ等は全部特別な物。
最初のハンドガンだって、この前のアップデートから手にしている武器だって。
“シックスの為にある”と納得させる、桁違いの存在感を放っているのだ。
こんな状態で、もはや古いとも言えるモデルガンをプレゼントしたところで……周りと比べて、俺の存在感が希薄になる気がしてならない。
なのでいつまで経っても購入ボタンが押せず、ずっとウジウジしていると言う訳だ。
多分喜んでくれる、けど違う。
ただただ彼女が喜ぶ顔が見たくて、驚かせたくてプレゼントを贈りたいのに。
これまでに無い程バイト代を貯め込んでいるし、兄貴に借りたお金を使わなくてもすぐに購入できる状態にあるというのに。
「絶対違うって、今だと思っちゃうんだよなぁ…………ん?」
ウジウジしながらも、件の銃を眺めていれば。
通販ページの端っこに、また別のオススメ商品が表示されていた。
俺が購入を悩んでいたソレと同系統、そしてソレ等のカスタムパーツ各種。
ジッとそちらに視線を送りつつ、暫く考えた後。
「“俺が作った銃”でも……喜んでくれるのかな」
とてもじゃないけど、今現状の俺では隣には並べない。
それでも特別になりたい、彼女に特別だと思って欲しい。
そのアピールとしては……“俺が白川さんの為に作った銃”だったとしても、喜んでくれるのだろうか?
コメント
1件
うわああ第124話…!!もうね、冒頭から主人公の悩みが深すぎて胸がぎゅってなったよ😭💕 デート楽しそうでこっちまでほっこりしたのに、まさかあの射撃シーンで白川さん=6key疑惑が急浮上!? しかも彼女の笑顔思い出して「銃を向けられない」ってとこがもう…切なすぎて泣く。主人公の「俺の目的地ってどこ?」に一緒に悩みたい気持ちでいっぱいです。でも“自分で作った銃を贈る”発想、めっちゃ素敵だし応援したくなる…! 次が待ち遠しいよ〜🌸