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霊華家に担任である相澤とオールマイトが家庭訪問に訪れた。家に親は居なくて代わりに影で具現化してる他人格の仮面さんが親になってるらしい。ソファに座る船長は目に光が宿っているものの、手には黒い手袋がつけている。膝の上には可愛らしい小熊と白いカラスと戯れていた。相澤とオールマイトは寮の説明をするが、船長が不気味な動物と戯れていることが気になって仕方ない。雄英に預かる生徒を敵に狙われ攫われてしまい、その現場を見ていた仮面さんに信頼は得られないと踏んでそれなりの覚悟でやって来た。一番難解で苦戦するだろうと。理解を得られるまでどんな罵倒も嫌味も受け入れるつもりだった。
【よろしくお願いします】
なのに予想に反して色良い返事を貰ってしまう。
「あの…本当によろしいのでしょうか」
【ん?ああ寮でしょ?ありがたい♡】
仮面さんの話を黙って聞く。親代わりとして子を案じる本音を、覚悟を受け入れるために。
【だから会見での言葉が嬉しかったんだよね。アタシ達以外で、学校は船長を見てくれてるって。不安だったけど、こうして帰ってきてるワケだし♡しばらく風当たりは強いかもしれないけど信頼して任せる♡】
「……」
【ね〜?クマリンちゃん♡】
《クワォ!》
【クマリンちゃん可愛い♡♡カラスと戯れてる船長も最高♡ それと…船長のお願いを、声を必ず聞いてほしい】
「もちろんです。私達の監督不届きでこのような事態になってしまい、霊華少女にはこれから肩身狭い思いをさせてしまいます。むしろ私達にできることなら、出来うる限り応えていきたいと考えています」
【ありがと。先生方にご迷惑かけると思うから、絶対に守って欲しいことだけ伝えるわ】
「絶対に……守って欲しいこと?」
【そう。まず、船長は悪霊に取り憑かれてるわ。よく眠れないと思うけれどまぁ…夜に頼ってきた時、相手してあげる。それに、最近は疲れが溜まりすぎて情緒もおかしくなってるから特に気をつけて。最後に…白い女の子を見ると思うけど見つけたらここは海じゃないよ。とだけ教えてあげる。骸骨や人魂を見たらおやすみとだけ言う】
「それにどういう意味が?」
【船長についてる幽霊はみんな怨霊だったり死体だから安心させないと暴走して何をしでかすか分かったもんじゃないから】
「分かりました。生徒には伝えても?」
【…むしろお願い。船長も気が参ってどんどん寝不足と情緒不安定、挙句の果てには殺気振りまいて幽霊撲殺しそうなくらい怖いんで。船長はドSだし…けどそこがいい♡】
「最後らへんは7割私情ですね」
【船長〜?それでもいい?】
「別に…いい」
【決まりね♡】
雄英敷地内、校舎から徒歩5分の学生寮ハイツアライアンス。でかでかと1-Aと掲げられた看板がこれから過ごす寮となる。
「よーせんちょう!久しぶりだな!!」
「船長!よかった、無事だ!!」
「めっちゃ心配したんだぜ俺ら!!」
「お前ら女にくっつくな!寄るな!暑苦しいんだよ!」
寮について早々クラスに絡まれる。自分の置かれた立場を理解してるから甘んじるが流石に限度がある。しばらく囲まれて各々喋り出し、会話が振られた時にだけ返事をしていると担任が姿を現した。
「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何よりだ」
寮の前に集まったA組を見ながら淡々と話す。それにしても夏なのに変わらずの黒服。暑くない?
「皆入寮の許可降りたんだな」
「私は苦戦したよ…」
「フツーそうだよね…」
「2人はガスで直接被害遭ったもんね」
「無事集まれたのは先生もよ。会見を見た時はいなくなってしまうのかと思って悲しかったもの」
「うん」
「………俺もびっくりさ。まァ…色々あんだろうよ」
なるほど。敵に雄英は普段通りしているのを見せるのと、寮制にしたのは安全の保証とスパイを見つけるためか。
「さて…!これから寮について軽く説明するがその前に一つ、当面は合宿で取る予定だった仮免取得に向けて動いていく」
「そういやあったなそんな話!!」
「色々起こりすぎて頭から抜けてたわ…」
「学生寮は1棟1クラス。右側が女子、左側が男子と分かれている。ただし1階は共同スペースだ。食堂や風呂・洗濯などはここで行う」
寮の中に足を踏み入れると、学生寮としては十分過ぎるほどの設備と広さ。寮っていうから狭いと思ってたけど案外広い。まぁ、私の船や仮面ちゃんの家よりは狭いけど
「おおおお!」
「中庭もあんじゃん!」
「広っ!綺麗!そふぁぁぁ!!!」
「豪邸やないかい」
「麗日くん!?」
「聞き間違いかな…?風呂・洗濯が共同スペース?夢か?」
「男女別だ。おまえいい加減にしとけよ?」
「…はい」
「部屋は2階から。1フロアに男女各4部屋の5階建て。1人1部屋。エアコン、トイレ、冷蔵庫にクローゼット付きの贅沢空間だ」
「ベランダもある。すごい」
「我が家のクローゼットと同じくらいの広さですわね…」
「豪邸やないかい」
「麗日くん!?」
「部屋割りはこちらで決めた通り。各自、事前に送ってもらった荷物が部屋に入ってるから。とりあえず今日は部屋作ってろ。明日また今後の動きを説明する。以上、解散!」
「「「ハイ先生!!!」」」
「船長!片付け終わったら部屋見に行っていい?」
「は?」
私の部屋は4階隣に空き部屋があるわ。
自分の部屋に入って積まれてる段ボールに手をかけようとした瞬間。頭からぽて、と丸いものが段ボールの上に降り立つ。
《クゥ〜》
「また頭の上に乗ってたの?クマリンちゃん。手伝ってくれない?」
《ガァ!》
「かまわないけど、私の部屋木屑まみれしないでね?」
《ク!》
ご飯も食べたしお風呂も入った。時間も時間だし、荷解きも意外と体力使った。いや、そこまでは使っては無いけど眠い。電気を消して、枕元に丸まったクマリンちゃんを少し移動させてベットに入る。明日から色々準備しないと。
ペタッペタッペタッ
《どこ…何処にあるの……》
白い小さな子供の弱い声は誰にも聞こえずに闇を彷徨った