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ギデオンが少し|屈《かが》んでリオと目線を合わせる。
「大丈夫か?俺がわかるか?」
「わかる…ギデオンだ」
「よし」
ギデオンが笑った。
リオの鼓動が早くなる。そしてだんだんと思い出してきた。
そうだ、ケリーに薬が付着した針を刺された。そして夜に東の門へ来るように言われ、訳が分からないまま、その通りに来たんだ。
そのことをギデオンに伝えた。
ギデオンは、リオの頬に添えていた手を今度は頭に乗せ、「よく思い出せたな」と優しく撫でた。
リオは、なんだか泣きたくなった。ケリーの罠にはまったことが悔しくて情けない。そんなリオを責めずに優しくしてくれるギデオンに申し訳ない。
ギュッと唇を|噛《か》んで我慢していたけど、リオの頬にぽろりと涙がこぼれ落ちる。
すぐに袖で拭いたけど、ギデオンには見られていた。
「気にするな。悪いのはケリーだ。アトラス、ロジェ、ケリーを連れて行け。ケリー、おまえは領主付きの騎士を解雇する。故郷に戻り、二度と城下へ入ることを許さぬ」
「ギデオン様!」
ギデオンが厳しく言い渡す。
ケリーが抗議の声を上げたが、それには反応せずに、ギデオンはリオを抱えた。
「えっ?ちょっ…ギデオン!」
「なんだ」
「おろしてっ」
「おまえはまだ催眠状態だ。足下が危なっかしい。部屋まで運ぶから大人しくしていろ」
「…はい」
リオは素直に頷いた。
またもや迷惑をかけてしまっている。ギデオンの手を|煩《わずら》わせてしまっている。これ以上は本当に申し訳ない。だから素直に身を任せて、部屋のベッドの上まで運んでもらった。
部屋に戻ると、アンが走り寄ってきた。
リオがベッドに下ろされるなり、リオの膝に飛び乗って「アン!」と吠える。
リオはアンの全身を撫でながら「ごめんな。心配してくれてたんだな」と謝った。
「ギデオンもありがとう。でも、よく俺があそこにいたの、わかったね?」
ギデオンがリオの隣に座って「当然だ」と片眉を上げる。
その顔がかっこいいなと、リオは思わず見とれた。
「俺が安眠できているのは、リオが隣で寝ているからだ。それはおまえもよく知っているだろう?だからリオがいなくなれば、すぐに気づく。今夜もおまえがベッドから降りた直後には気づいていた」
「え…こわ…。それってさ、俺が用を足しに起きた時も気づいてたってこと?」
「そうだ」
「こわ…」
リオは少しだけ引いた。つい先程かっこいいと思ったけど撤回する。
ちょっと気持ち悪くない?どんだけ俺が必要なんだよ。なんかすげー愛されてるように思え…て……って違う!単に俺がいないと眠れないっていうギデオンが変態なだけだ!しかし、俺がいなくなったらどうすんだろ。また不眠症で目の下に|隈《くま》を作って不機嫌顔になるのか?うーん。俺がいなくても眠れるようにしていかないと。
「リオ」
「ん?」
リオが考え込んでいると、ギデオンが顔を覗き込んできた。