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薄暗い会議室に、狩り手全員が集まっていた。
法師の琵琶が微かに音を立て、観音が何かを口ずさむ。南無は無表情で椅子に座り、渋谷は退屈そうに壁に寄りかかっている。
「…で、何のためにこんなに全員を集めたんだ?」
石動が呟くと、法師が静かに応じた。
「…教皇様がお越しになります。」
その一言に場の空気が一変する。
「教皇?」
石動が首を傾げると、観音が目を伏せて答える。
「狩り手を創設した方よ。…私と法師しか、直接会ったことがないけど。」
渋谷が興味なさそうに口を開く。
「要するに、俺たちの親みたいなもんか?」
「親なんて生易しいもんじゃないよ。」
観音の声には珍しく緊張が混じっている。
「…教皇様の存在は、私たち全員の根幹に関わるものです。」
法師の敬語がさらに堅くなる。
南無はいつも通りの表情を崩さないが、その手がテーブルの上で微かに震えているのを観音が気づいていた。
突然、扉が重々しく開いた。
一同が振り向くと、白いローブに身を包んだ男が現れる。
教皇――いや、彼の姿はただの「人」ではなかった。
長い年月を生きた者だけが持つ、圧倒的な威厳と存在感。
その目はまるで全てを見通しているかのように光っている。
「久しいな、法師、観音。」
教皇は低く、しかしよく通る声で言った。
「教皇様…」
法師が静かに頭を下げる。観音もいつもの落ち着いた態度を崩し、深々と礼をした。
他の狩り手たちも、つられるように頭を下げる。
だが、南無だけは動かない。いつもの冷たい目で教皇を見つめていた。
教皇が視線を向けた瞬間、南無の表情が変わった。
普段は冷徹で誰にも媚びない彼女が、その場に立ち尽くし、震えている。
「…君が南無か。」
教皇は静かに南無の方へ歩み寄る。
「その目、いいね。」
教皇は微笑んだが、その笑みは温かいものではなかった。まるで試すような、冷たい笑みだった。
南無は視線を逸らせず、かすかに口を動かした。
「…教皇様。」
その声は、狩り手たちがこれまで聞いたことのないほど弱々しいものだった。
「君たちが、今の狩り手だね。」
教皇は一同を見渡した。
「なかなか面白い連中だ。だが、少しばかり散らかりすぎているように見える。」
その言葉に、渋谷が不満げに眉をひそめた。
「俺たちは現場でちゃんとやってるつもりだが?」
教皇は彼を一瞥すると、静かに言い返す。
「君たちは現場を『やっている』。だが、勝利を『作っている』わけではない。」
その場に重い沈黙が落ちる。
教皇は椅子に座ると、狩り手全員を見渡し、宣言する。
「これから新たな異能者集団との戦いが始まる。『神域』と名乗る者たちだ。」
「神域…?」
石動が呟くと、教皇は頷いた。
「彼らは、私のかつての仲間でもある。」
その言葉に、全員が驚きの声を上げる。
「お前たちは、これから彼らと対峙する準備をしろ。今回の戦いは、これまでのどの戦いよりも過酷なものになる。」