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例のショート動画でユウマが「18になったら~」ってセリフが頭から離れねぇよぉ~😭となりこの話を書きました笑。
報われないわけじゃないけどユウハカが結構辛い思いします。イチャイチャしないしキュンキュンしません。くそ長いです。飽きます。
ユウハカ18歳(付き合って1年くらい)
捏造しかない(勝手に物語終わらせてる部分も少々あります)
3ヵ月に1回…死にたくなる日が来る。
頑張って生きてんのに…頑張って夢持ってんのに現実突きつけられてさ。
効果なんてねーのに…飲みたくねー薬まで喉を通さなくちゃならねぇ。
お医者さんは一切悪くない。その人達は俺に事実を使えることが仕事だ。…俺に嘘言える訳ねーのも分かってる。
18歳
…その年齢になると何が出来るようになる?
法律上、この国の人間は18歳で成人を迎える。
選挙に参加することもできるようになり、完全に社会では大人として扱われる。
言ってしまえば18年生きたら、身体的に誰でも大人になれる。
だけど、心はどうだろう。
俺の心は、しっかりと大人になって生きるのか
それとも
子どものまま死ぬのか___。
ユウマside
「ユウマ!!お誕生日おめでとう!!」
Happy Birthdayと筆記体で書かれた旗がパッと目につくリビング。一斉にクラッカーの音が聞こえた…
…と思ったら
「なんだよ…これ笑」
「ボケナス。パイ投げに決まってるでしょ?」
「いやそれは分かってるんだけど…まぁサンキューみんな。毎年の事ながらすげー嬉しいよ。」
「ほら!!ケーキ食べよ食べよ!!」
テレビの音を横目に他愛のない会話が続く。俺の話、それぞれの今日あった出来事、視聴者さんの反応、明日の動画のこと。
それを俺は誕生日席で聞いたり話したり…悪霊達がボケたのをたまにツッコんだりする。
こんな状態がいつまでも続けばいいなって思う。
「ハカちゃんに続きユウマももう18歳か〜。」
姉貴の声がいつもよりもこだまして聞こえる。普段からずっとなっている耳鳴りが、この瞬間止んだ気がした。それと引き換えに1年ちょっと前に己の口から発した言葉を思い出した。
先生。俺…あとどれ位生きられますか。
俺は18という数字が怖いし大嫌いだ。
この言葉と18というただの数字が俺の心をえぐり続ける。家族や大切な人への迷惑、毎日の呪いの苦しさ、やり残したこと、そして死への恐怖。いくつもの項目が何回も枝分かれして心の壁に新たな傷を作り、深く突き刺さっていく。通っている鮮血はいつまでも外に溢れてこぼれ落ちる。
今日の2月13日は、まさに天国と地獄を同時に味わなくちゃいけないんだなって今更ながら思う。家族に囲まれて…大事な彼女も隣にいて…幸せなはずなのに、どこか泣きたい気持ちだ。
そんなことを思いながら、苦いようで甘いチョコケーキの一欠片を口に入れる。
「ユウマ。こっち向いて。」
「え?…ハ、ハカ…?」
ハカの手が頬に触れる。
こ、こんなに姉貴とか見てんのに…こっ…ここで…?
「ボケナス。さっきのパイ投げのクリームついてるから…」
「お、おう…サンキュー。」
さっきの気持ちとは裏腹に今度は嬉しいような恥ずかしい気持ちが一気に込み上げたと思ったら、ハカの右手の指輪が光る。…付き合ってる1年の記念日にお揃いでハカがくれた大切な指輪だ。それを見ると、いつもなら体温と同じ存在の指輪のネックレスの温度が、一気に下がった。
その瞬間、傷だらけの汚い心が何かを燃料にして燃えていく感じがした。
誕生日会の終了後から、その燃える心は早速俺を行動に移させた。
「姉貴、ちょっといいか?」
「ん?なになに?誕生日だから久しぶりにお姉ちゃんと一緒に寝たいって?」
「ちげーよ。…まぁ、ちょっと交渉したいんすけど」
「…交渉?」
決心という燃料は、どんどん燃えていく。
2週間後
「クソっ…こんな強ぇの久しぶりすぎるんですけど!?こっちの身にもなれって!!!!」
「ボケナス!!憑从影が私たちの都合にレベルとかその他もろもろ合わせてくれるわけないでしょ!?頑張りなさい!!!」
いくら俺たち憑影が頑張って災害級憑从影や悪童六鬼に鋭い爪を引っ掻いても、憑从影たちは爪痕を抱えてもなお何の罪もない多幸な民を襲って命を奪う。現実的に考えて、こんな不幸まみれの俺なんかがこいつらを殲滅させるなんて無謀な夢なのかもしれない。
だけど_____
「私が足止めする!!その隙に朧火を引っかけていけ!!ボケナス!!」
「おう!!サンキュー!!」
「呪受爆!!」
「異能力 百式の弐 朧火!!」
自分の手から黒炎が放たれる。死霊に寄生され愚物になってしまった頭ん中を掻き乱してかち割る程の辛い幻影を見せられて、悲鳴をあげて踠き出す。何回も何千回も見てきた景色だ。
最初はめちゃくちゃ辛かった。俺がやっている事はきっと世界で1番苦しみを与える拷問だからだ。
殴られるとかそういう肉体的な拷問よりも、心理的に辛いことを行う精神的な拷問の方が軽いのではないかと考える人も多いと思う。だけど実際は違う。
友達や家族ですら人間の全てを知ることは不可能だ。なぜなら人は隠したがり、さらけ出すことを怖がり1歩下がってしまう。それを無理やり外部の人間が知ろうと苦痛を与えられるどうなると思う?
肉体的な苦痛は死なない限り徐々に治ることが多いかもしれない。だけど、精神的な苦痛はいつまでもいつまでも死ぬまでトラウマとして心をえぐり続ける。
その精神的な拷問を俺は武器として、殲滅の在り方として今敵にぶつけた。これは情報を吐かせる為じゃなくて、人に寄生した死霊を弱体化して取り出す為、口では絶対に言えないような映像を頭に映し、拷問する。
寄生された人たちはほとんど正気を失う。だけど憑影はその人達の生身の体に傷をつけて戦うしか選択肢はない。…そうなると俺の見せた映像もきっとその人たちの頭に残ってトラウマを植え付けてしまうんじゃないのかって思う。
「…憑いてこい。」
それが拷問の解放の合図だ。
俺だって本当はこんなことしたくねぇ。使える手段をよく考えて、もっといい方法ねーのかってめっちゃ考えた。
だけど無理なんだ。仕方のないことなんだ。
「…ウマ!!ユウマ!!!!」
「救護班いる!?救急来るまで胸骨圧迫続けてって上から指示が出た!!今すぐ救護班と交代して殲滅部隊はあいつら殲滅して!!!!急いで!!早く!!」
「三途川隊員も残りの憑从影の殲滅を!!圧迫は我々が交代します」
「でも…ユウマが…!!」
「繰り返します!!第四殲滅部隊の黒神ユウマ隊員は戦闘不能のため戦線から離脱しました!!救護班にコードブルーをコールします!!直ちに黒神隊員の元へ向かい、処置を行ってください!!」
「ユウマぁぁぁぁ!!!」
俺はその人たちに中身のない無機質な優しさを配ることしかできないんだ。
ハルトside
この世界はいつもそうだった。
いつの間にか錯覚してる。自分の大切な人はこの先何年、何十年一緒にいてくれるんだって。
幽霊とか死霊という概念が存在していて、それに関わってる職業だから、尚更そうだよなと思ってしまう。死んでもいつかは幽霊として帰ってくるって。俺の傍にいてくれるんだって。
そんな状況が続いていく。
たまたま仕事が片付いて、帰ってた途中だった。駅から少し歩き、家に帰って家族の「おかえり」を聴くはずだったんだ。
振動する携帯を手に取って耳に当てた瞬間、身体中の震えが止まらなかった。握力が一気に抜けて、携帯が落ちそうだったのを反射的に抑えてた。
聴いたのは、電話越しの嫌にも聴き慣れてしまった救急車の音で…その次に聴いたのは、自分の呼吸の音と革靴から出る独特の足音だった。
来てしまったのか。この時が。
そう思った瞬間、普段なら呪いでしつこいはずの音の記憶が一瞬で消えた。
「身体的な原因は分からず…精密検査が必要です。」
音が再開したのは…ユウマの顔がレンズのピントのズレのようにぼやけた時だった。混乱してたし、その医者の言葉に対して何を答えたのかも分からなくて、なぜか病室が広く感じる。
医者の言葉には…聞き覚えがあった。
「ったく…誰か1人は病院にいるって言うから来てみれば…お前かよ。」
「…悪かったな。俺で」
文句を言ったくせにあいつは隣に座った。いつもならバカバカしい喧嘩に発展してるはずだが、今日はそういう気分じゃない。
「…ま、お前も当然覚悟はそれなりに決めてたと思うが…思ったより早く進んでたんだな。」
「……。」
「呪いであるからこそ…進化させればさせるだけ体は壊れていく。その症状は医学的に証明出来るものじゃない。痛み止めを飲んだってどんどん蝕んでいく一方だ。」
ナギが恐ろしい程に淡々と喋っていく。俺はそれに反応も何もせずにただ下を向いて呼吸を続けてたが、やっと口を開けることができた。
「ペラペラ喋ってるところ悪いけど…俺は生物が嫌いなもんでね。医学的にとか分かんねーんだわ」
「…っチッ。相変わらずお前は…」
「なんで…ユウマがあんな目に遭わなきゃいけねーんだよ…。『大切な人を守りたい』って立派な思い抱えた俺の息子が…なんで…。」
「…ふぅ…。いつも俺に『実家の方見てギャン泣き』とか言ってるお前がギャン泣きするとはねぇ。…俺は実家じゃねえぞ。」
「…るっせえ…。」
家族の前ではどれだけ辛くても涙を我慢していた反動が今すごく来ている。ギャン泣きするなんてダサい。世界一カッコ悪い。
よりによって大嫌いなナギの近くでなんてもっと最悪だ。今1番死にかけなのはユウマなのに、俺の方が瀕死になった気分だ。
必死に呼吸を整えても、嗚咽と涙が止まらない。
「…大声あげてもっと泣けよ。涙我慢してる方がだっせえぞ。」
「…は?」
その言葉がトリガーとなって、呼吸が完全に整う。馬鹿にされるのは分かってた。推理は得意だから分かってたはずなのに。
「アホか。自分の子どもが死にかけで泣かねぇやつはいねーよ。…子どもの前で泣きたくねーし、逆に子どもの方が泣いてるから…自分自身は泣けねーだけだっつってんの。」
「いや…そうなんだろうけど…。今ので涙も鼻水も止まったわ…。目の前で起こったことが理解できねぇ…。」
「…💢あーそうかよ。それはよかったですねー。こんな馬鹿心配して損でしたー笑。」
「…お前、昔からツンデレだよな。だって高校時代とかメグリちゃんと付き合うまでウニ並に…」
「うっせぇ!!!!体中の細胞全部壊死して死ね!!!」
「はははっ笑笑。言葉遣いが汚ないでちゅね〜笑。ハカちゃんはもっと可愛くツンツンしてますよぉ〜笑笑」
「娘と比べんじゃねぇ!!」
どこか懐かしく、面白くて、たまに寂しくて悲しくて…そんな数秒を過ごしていた。そんな数秒を、さっきの振動が遮った。今度はしっかりと握力が戻って、冷静に携帯を握る。
電話越しに聴こえる声は…さっきと違って久しぶりの幼馴染の声だった。
ハカside
何重奏か分からないくらいの大きな拍手の音とすすり泣く声。前を向くといつもとは違う髪型な先生と友達。そんな光景を見て、中学校の卒業式で前が見えなくなるくらい泣いたのを思い出す。
…今は涙の一滴すらも流れないくせに。
私の1個前の出席番号の席は空白で、名前を呼ばれても返事がなくて…椅子だけがポツンと寂しそうに置かれてたのを見ていると、自分の名前が聞こえて返事をした。
教室に戻った後も、皿屋敷先生の話を聞いてる時も、全然感傷的になれないのは初めてだったから…どうすればいいのか分からなくてただ下を向いて時間が経つのを待っている。そんな時間を過ごしてる時も…頭の中はユウマの心配でいっぱいだった。
…悪夢見てないかなとか、呪いで苦しくないかなとか…そもそもちゃんと呼吸して、心臓が動いてるのかなって。
昔から、ユウマはこう物静かで孤独な雰囲気を漂わせてた。誰も近づけない。ユウママや黒神先生、ミレイさんやマキちゃんでさえも近づけない…言葉では上手く説明できないけど、ただ1人心に閉じこもってるようなそんな時があったと思うんだ。
今この瞬間も…ユウマはずっと孤独なんだろう。私なんかじゃユウマの苦しみを分かってあげる事も和らげる事もできないから…。きっと顔を見たら涙が止まらなくなってしまう。こんな姿情けなくて…でもユウマに会いたくて…どうすればいいのか分からない。
卒業証書のファイルを握ると、右手の指輪の金属の固い感触が神経を通して脳に伝わる。脳はユウマの朧火を受けたみたいに映像を目の前に写してくれた。
「なぁ…ハカ。ペアリングって右手の薬指につけるもんなの?」
「え?」
「い…いや…結婚指輪とかは左手だから…なんで右につけてんのか純粋な疑問。」
「んー…どっちでもいいっていうのが一般的なんじゃない?私は何となくで右につけてるだけ。」
「お、おう…」
「あと…まだカップルだから。付き合ってるけど結婚してる訳じゃないし。…だけど…ユウマと同じのがよかったから…。ほんとのお揃いは…ちゃんと…左に…。」
「ハカ…」
「な、なんでもない。」
「____________________。」
そういえばあの時、ユウマは小声で何かを言ってた気がする。よく聞こえなかったし、恥ずかしかったから…同棲してるといえど早く家に帰りたくて急いでた。だけど…その時もユウマはあの独特な雰囲気を漂わせてた。私が隣にいたのに、ユウマは孤独だったのかな。
どこか遠くに飛ばされて…シャボン玉のように消えちゃいそうで怖い。
「ハカ〜!!」
「サナ…?」
「クラスで集合写真撮るんだって!!ハカも行こうよ!!」
「あ…うん!!行く!!」
集合写真…
ここにユウマがいてくれたらな…って思っちゃう。泣きそうになっちゃうからそろそろ辞めたいのに。
そう思った瞬間、ユウマの顔を一瞬忘れたような感覚に包まれた。
サナに連れられたのは…普段絶対に通ることのない…生徒玄関から1番離れてる職員玄関だった。薄暗くて寒い。外では桜のつぼみも開きかけなのにここだけ冬みたいだった。
「え…ここで集合写真なの…?」
「三途川さん。」
「出雲くん…。」
「僕…というかクラスのみんな、ユウマが今なんでここにいないのか事情を聞いたんだ。」
「な…なんで…。」
「みんなそれぞれの進路を歩むんだ。…明日からどこか行っちゃう人もいる。だから、今日ここで全員揃って3-Bとして集まるの多分最後なんだよ。」
「黒神くんも3-Bの一員ですから、集合写真は彼も映らなくちゃいけません。」
「まぁエモいストーリーは100SNSでバズるし、黒神も絶対寂しいじゃん?…三途川さんも大好きな彼氏と写真撮れなくて今にも泣きそーな顔してんのバレバレだよ笑?」
「まぁ…あいつ卒アルの寄せ書き0なの流石に可哀想だしさ。笑」
「ハカが心配過ぎてさぁ〜俺、ハカが一回もユウマに会いに行ってないのついバラしちゃったんだよねぇ〜。メンゴメンゴ〜。」
「ね、ハカ。黒神に会いに行こう。」
さっきまで薄暗くて寒かったはずの職員玄関が…急に明るくて暖かくなった。嬉しいはずなのに視界が霞んでみんなの顔がぼやけてしまう。
「みんな…ありがとう…っ!!」
「そうと決まれば急ぐぞ〜。ハルトも待ってっからな!! ナギ!!あんたの車どんだけ乗るんだ!?」
「アホか。こんないっぱい乗るわけねーだろ。軽トラ借りるかチャリでいけ。」
「じゃあ俺走るわ!!競走な!!」
「ちょ笑笑笑。クラウチングスタートで行くんじゃねぇ笑笑。陸上部出てるわ笑」
「おー!!頑張れ負けんな帰宅部笑笑。」
「ほら、行くよ!!」
サナに手を引かれて、病院の方向へ走る。さっきまで重かった足取りが風船のように軽くなるのをはっきりと感じた。
ユウマがいるのは5階。エスカレーターやエレベーター、階段でそれぞれ上り、ユウマの病室に着いた。
こんな大人数で病院に行くことなんて滅多にない。周りの視線とかそういうの気にしちゃって…普段の私ならこういう時は1人の方がいいって思うかもしれない。
だけど今は1人が怖い。周りの目の1億倍怖いから…こんなにたくさんの人が一緒にいてくれて嬉しい。みんながユウマの為に動いてくれた。
「ハルトはもう既にいるし、病院側に許可も取ってるから。…みんなの心の準備が出来たら入ってくれ。」
その一言でさっきまで賑やかだった声が一気に静まり返る。その沈黙が私を不安にさせたのもつかの間、振り返るとサナやオッキー、その周りにいるみんなの顔を見てゆっくりうなづき、扉を左にスライドした。
「いらっしゃい。…ハカちゃん。」
1歩病室に入った瞬間から…冷たい涙が止まらなくなってしまった。たくさんの機械が動いてるのを見て、うめき声じゃなくて静かな寝息を立てるユウマの顔を見て…色んなことを思い出した。
「ユウマが…っ…生きてる…っ…。」
いても経ってもいられず、ユウマにしがみついた。ほんのりと暖かい体温が白い布団越しに伝わる。死んだ人間の冷たさじゃない。
「三途川さん…。ずっと黒神に会いたかったんだろーな。」
「あは。イチャイチャ出来ないのはいやだしねー笑。」
「変なこと言うな…っ…。オッキー…。」
「さ、ハカ。黒神も卒業証書貰うんだよ。…ちゃんと見守らなきゃ。」
「うん…。お願いします…先生。」
「コホン…卒業証書 第29096号。黒神ユウマ。 20xx年、2月13日生まれ。本校の全課程を修了したことを証する。20yy年3月6日…3年B組担任、皿屋敷リカ。
…私の生徒として…一緒に今日まで歩いてくれて…ありがとう。黒神。」
病室中に拍手の音が広がる。さっきまで険しい顔をしていた黒神先生が、パパが私を見る時の様な目でユウマを見ている…
その時だった。
「ハ…カ…。」
ずっとずっと聞きたかった声が小さく聴こえる。それを聴いた瞬間、桜のつぼみがパッと開いたように驚きを隠せなくて動揺してる自分がいた。
「黒神…!!!」
「しー。一旦ユウハカを2人きりにさせてあげなくちゃね〜。」
「ちょ!!オッキー!?」
「…ユウマさぁ〜。遅すぎなんだよねぇ笑。…まぁ精一杯頑張ると思うから俺らは外に出るんだよ〜。」
「え…?」
さっきとは違い、今度は暖かい涙が止まらなくなる。周りの空気も驚きに包まれるのを感じたと思ったら、ただただ2人だけの空間が広がっていくように感じた。
「ユ…ユウマ…っ」
「ごめん…ハカを…俺が…泣かせ…ちまったよな…。」
「何してんのよ…っ。勝手に死にそうになってさぁ…っ。」
「…ちゃんとあとで…怒られるって…分かってるよ。」
「ボケナス…っ。何回死にかければ気が済むの…。」
「ハカ…。」
ユウマに頭を撫でられる。力は弱くて…だけどそれ以上にぽかぽかしてて…なんとも言えない気持ちになった。
「話が…あるんだけど…いいか…?」
「…なに?」
「俺…さ…。ガキの頃から…こんなんで…ハカに…いっぱい迷惑かけたよな…」
「そんなこと…ないしっ…」
「…だけど…ハカは…いつも俺を気にかけてくれて…ほんとにうれしくて…付き合ってからは…もっと幸せ…で…ずっと…ずっと俺はハカに救われて…来た…。」
「ユウマ…。」
「今みたいに…俺は頻繁にこうなったり…するかもだし…長生き…できねぇかもしれない。一緒に…いられる時間も…この先そんなに…残っていない…かもしれない。」
「…だけど…俺は…君が…っいいって…言ってくれる…なら…俺と今を生きたいって…思ってくれるなら…。俺も…1歩勇気を出したいって思えるんだ。」
「え…?」
「姉貴か…いや、絶対親父だ…こんな所に…置くなんて…親父には隠せねぇな……ったく。ぜってーバレちまうのに。」
ユウマが棚の方に向かって喋りだしたかと思えば、両手で持てるくらいのサイズの紙袋を棚から何かを取り出した。
その「何か」を見た瞬間、さっきまで流れていたユウマのあの独特な雰囲気が変わり、それに飲み込まれる。
「だから…ハカ…こんな俺でよければ…
俺と…結婚してください。」
ユウマの手は震えてた。それでもユウマは…しっかりと小さな箱を持ってこっちを真っ直ぐ見てくれた。光に照らされて紫色の綺麗な目から雫の宝石が溢れる。
あまりにも美しく人間味のない顔をしたユウマを見つめるばかりで…しばらく何も言えなかった気がする。だけど…そんなユウマは数秒の間天に昇っていく気がして、私も決心がつく。
手の温もりと一緒に、手から指輪が地面に吸い寄せられ、小さくて大きな音を立てる。大人の声とうるさい機械音がやまない。私はどこかへ突き飛ばされて、冷たい廊下へ座り込んだ。だけど背中は暖かい。
「_______。」
私が決心として言葉にした音を聞いたユウマは、さらに綺麗な顔を見せてくれた。
「ボケナス…生きろってば…っ」
「…オッキー…あっちで何があったんだろ…?三途川さんさっきよりギャン泣きだけど」
「え〜?俺もここにいたけど〜?笑。」
「いや、でも…オッキーなんか知ってそうだったじゃんさっき。」
「たしかに!!やっぱ黒神に取り憑いてるからなんでも知ってそうだし。」
「…知らないよ。俺は…何も。」
「え?」
「なんでもなーい。というかせんせー。これ写真今日は無理そうだねぇ。」
「…そうだな。…こんな状況じゃね。
はい、みんな今日は帰ろう。気持ちはすごい分かるが病院に長居するのもよくないしな。駅も近いから気をつけて帰れ〜」
「ちょ!!まだ写真撮ってねーじゃん!!」
「写真は…
お前らのことだ!!フッ軽でも全員揃いそうだしまた今度な!!!!笑」
「なにそれ〜笑笑笑。」
月日は流れる。
「待つ」という単語を知らずに走り続ける。そんな月日に私達は目まぐるしくついて行く。時にはバネとなり重い足枷となる「過去」という靴を履きながら。
今こうやって呼吸してるだけでも、人生という砂時計の砂はどんどん下へ落ちていく。その砂時計は突然割れるかもしれないし、元々小さいものや大きいものだったりする。だけどいつか必ず砂は落ちきる。ひっくり返すことはできず、1ターンで終わりだということに変わりはない。そうやって私達はたくさんの段階を踏んで死へと向かう。
「ハカ…。」
「パパ…来るの早いね。私達も着いて1時間も経ってないのに…」
「そりゃ当たり前だわ。3時起きだよ俺。」
「早すぎでしょ笑笑。…まぁ…私も未だに信じられなくて寝ても寝た感じがしないな…。隈とか化粧で上手く隠せるか心配笑。」
「ハカ…」
「でも、今日は大事な日だから…ちゃんとしなくちゃ。ユウマだって…それを望んでるし…」
「泣くのはまだ早いぞ?…せめて前に出て話す時に泣け?…しっかし…ここまで色々大変だったわ…。」
「え?何が?交通費?」
「違うわ!!死にかけの時にプロポーズて!!遅いし、タイミングだし…っはぁ…お前ら災害級より相手疲れるわ…笑。」
「な…!!パパが口出しすることじゃないでしょ!!それに憑从影と一緒にしないで!!」
「ちょ…!!ハカ動くな!!…今アイロンやってんだから火傷するぞ…!?」
「あ、ごめん!!」
「というか博士…俺の前でそういうこと言うのやめてもらっていいすか…?今失敗したら取り返しつかないんで…」
「あ?お前さぁ…お義父さんと呼べって何回も言ってんだろぉ?」
「今更言えるわけないだろ!!」
「ねぇほんとに出てって!!黒神先生近くにいると思うから一緒に待機!!」
「はいはい…分かったよ。両親への手紙待ってるから」
「もう!!」
部屋が静かになって3秒くらいで黒神先生とパパの話す声が聞こえたと思ったら今度は喧嘩してるっぽい声が聞こえた。
「はは…あの2人…仲がいいんだか悪いんだか…」
「最重要任務って2人とも言ってた気がする…笑。」
「えっぐ…笑。てか、今更なんだけどなんで俺がハカのヘアセットやってるんだ…??結婚式なんだからプロの方にやってもらう方が…」
「ボケナス。節約のために決まってるでしょ。元一人暮らしを舐めないで。」
「やっぱお前…ケチなとこあ…」
「何か言った?」
「…何でもない…ほ、ほらあと前髪だけだからこっち向け。」
「う、うん。」
まだ何も着飾ってない、いつもの私服で職人のように髪をセットしてくれる。もう既にこんなにかっこよくて見惚れてるのに、今から更にかっこよくなっちゃったら今度は私の心臓が止まっちゃう。
今日の結婚式耐えられるかな…。
「よし、スプレーは自分でかけてな。」
「あ、ありがとう。無茶言ったのに…」
「おう。…やっぱりハカは流行りとかわかんねー俺なんかのおまかせでも…様になってて羨ましいわ。」
「え…?それって…」
「…なんでも似合う…ってことだよ。
…っあ!!好みじゃなかったら…すまん。」
「別に…私もそういうのわかんないし…」
沈黙が流れる。だけど案外こういう時間も好き。ユウマと一緒にいられるなら…
「じゃあ…私ウェディングドレス着てくる。ユウマもヘアメとか…」
「お、おう。そうだな。…行ってくる。ドレス…楽しみにしてるから。」
「う、うん…。じゃ、また。」
大人になっても、望むならおばあちゃんになっても…私はユウマの目に映る世界で1番可愛い女の子になりたい。だから…どんな時でも無頓着を演じる。できる限り。
だけど…今日だけはドレスは内緒にして、ユウマを驚かせたい。ちょっとだけ背伸びしたい。
この気持ちはバレないように、精一杯がんばろうと思う。
覚悟しててね。ユウマ。
大人の定義を何度も考えた事がある。法的に18を超えたら大人とみなされることに疑問を持った。18になったら完璧に大人になれるのかと言ったら…別にそうじゃない。かと言って18を超えてなお心が子どもだったら大人じゃないという訳でもない。そんな精神を勝手に√18って俺は名付けた。
√18は式で表せないくらい不規則な関数のように、ごっちゃごちゃな変域のように何度も変化した。それとシンクロして俺の感情も子どものようになったり、大人のようになったりする。それが変化していく度に…自分の存在意義とか、周りの目とか、短い命の終わりとかそういう難しい事をたくさん考えてしまう。√18に俺は何度も苦しんだ。
「そんな精神…持ってても苦しいだけ。」って…クジラみてぇなでかい生物に飲み込まれてなかったことにしちまおうってさ。
だけど…今ならわかる気がする。その精神をなかったことにしたらきっと背伸びし続けたまま大人になって骨が折れちまうんだって。
だったら捨てるより超えてしまおう。それを乗り越えるためにひとつだけハードルを跳んで….俺は大人になれた。
大人になったと感じるのも、そのきっかけもハードルの超え方も人それぞれ違う。だから世の中には18を超えていても「大人」という単語では片付けられない様々な人がいる。俺もその1部なんだって気づいた。
そして、この精神の乱れは_______
「ボケナス、まだ緊張してるの?」
「い、いや…違くて…まぁ違わないけど…それ以上に…」
「何よ?」
「ずっと…堪えててさ…。ハカが…めちゃめちゃ綺麗だったから…俺…もう泣きそう…」
「ちょ!!ボケナス!!こんなとこで泣くんじゃないわよ!!」
「ご、ごめん!!頑張って堪えるから…」
「だって…私もユウマが…」
「え?」
「今日のユ、ユウマ…今まで見た中で1番かっこいいから…幸せ過ぎて…私だって」
「ハカ…」
「ま、まぁお互い様ってこと。」
ハカの紅くて綺麗な目がぼんやりとした鏡となる。
そうか…俺はこんな素敵な子と…今日…
「さ、行くよ。ユウマ。」
「ああ。」
ハカの小さな手を優しく握る。それと同時に音楽が流れ、式場の扉が開く。
待っていたのは…数え切れないほどの色とりどりの光と「ありがとう」だった。
俺たちは、ここで永遠の愛を誓う。
たとえ、俺の砂時計が1秒後に壊れるとしても。
生きることを諦めても。
いつも読んで下さりありがとうございます!!今回は特にタイトルとかほんの少しだけ考察しがいのあるように工夫しました!!長いですがぜひ自分なりに解釈してみてください!!
※補足
ユウハカの学科は2年生からクラス替えが無い設定です。
軽い設定(捏造)
九十九高は普通科の文系理系以外にも国際系という英語に特化したクラスや探求科という探求活動に特化したクラスがあります。合計8クラスです。
A組→国際科文系
B組(ユウハカのクラス)→国際科理系
C組→探求科文系
D組→探求科理系
E組→普通科文系
F組→普通科文系
G組→普通科理系
H組→普通科理系
ユウハカ2人とも英語得意そうだったので国際科にしました!!修学旅行は海外です!!
殲滅部隊の救護班について
養成学校の生徒(主に守護系)や殲滅の仕事が怪我等でできなくなってしまい引退してしまった人達が所属してます。また、ユウマのように異能力が暴走してしまう隊員もいるので万が一に備えて100%異能力者で構成されてます。もしマキが戻ってきたら戦闘に復帰するのもありですが、救護班に形として所属する可能性もありますね!!
コメント
1件
ああもう…刺さりすぎて言葉にならないわ。ユウマが18歳になった日の幸せと、その裏でずっと抱えてきた死の恐怖が同時に描かれてて胸がギュッてなった。病室でクラスメイトが卒業式をやってくれたシーン、そしてプロポーズ…あれは反則だよ。弱ってるのに震える手で箱を差し出すユウマと、泣きながらも決心するハカ、その対比が美しすぎた。√18っていうタイトルの意味も、最後で「超えたんだ」って腑に落ちた。長かったけど、その長さに全部意味があったわ。本当にいい話をありがとう。