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強い日差しが照りつける、白浜の夏。 七月下旬には二次選考がweb上で公開となり、百二十一作より四十九作へと絞られる。
その中でこいつの作品はまだ残っており、八月下旬には三次選考の発表となる。
その結果に「頑張って生きないと」と口にしていたこいつだったが、八月上旬より体力が落ち寝込むことが増えた。
理由はこの暑さらしく、いくら空調管理された室内でも病人の体力を奪っていくらしい。
確かに母さんも、夏に大きく体調を崩していたと過去を思い起こす。
「なあ」
「何?」
こいつの目が覚めているタイミングで話しかけたことは、会いたい人はいないのかということだった。
「……居ない……かな?」
力無く笑い、ギュッと目を閉じる。
友達に会いたいんだな。
こいつの母親から聞いた話によると高校二年生の夏に通院治療は限界だと告げられたこいつは、学校を辞め友達との関係も断ち、一人姿を消した。
こいつがそうしているのは、おそらく癌治療を機に出会った友人の影響だろうとのことだった。再発により治療を始めた際、通院中に出会い仲良くなったらしく連絡を取り互いに励まし合っていたが、急に連絡が取れなくなった。
治療が辛いのかとそっとしていたらしいが、その後に知った友人の死。同じ病気を抱える戦友が居なくなったことに加え、仲良くしていた友人が若くして亡くなった。それは強い衝撃であり、また友人は癌と戦うこいつに気を使い死を伏せて欲しいと頼んでいたらしく、こいつは徹底的に隠したいと母親に頼んでいたらしい。友人を傷付けたくない。その一心だろう。
だからこいつは、母親のみに送られる決意をした。それほど友人が大切なのだろう。
「俺は話してくれなくて、正直腹立った」
ボソッと本音を溢した。
「あ……。ごめんね」
「お前が一人で苦しんでいたのに、気付かなかった自分にはもっと腹立った」
そんな言葉まで。
「友達を傷付けたくない気持ちはなんとなく分かるし、迷惑だと感じているのも分かるけどよ。本当にそれで良いのか? 後悔しないか?」
目を開けたこいつは、唇をギュッと噛み締めている。「会いたい」、その言葉を必死に飲み込んでいるのだと伝わってくる。
「俺から話して良いか? 勿論押し付けにならねーように、事実だけを話すから。お前が会いたいと願っていることを言わずに、あいつらが会わせて欲しいと言ってきたら。それだったら迷惑じゃないだろう?」
「で、でも……」
目を閉じ、首を横に振るこいつ。
「もし俺だったら、達也が病気で何も言わずに居なくなったら辛いな」
「え?」
「たとえ絶縁していてもよ、最後ぐらい顔を合わせたいじゃねーかよ? あの時のことぶちまけて、相手の言い分聞いて、話し合いたいじゃねーかよ。死んじまったらアイツを許すことも、アイツの気持ちも、仲直りも出来ないだろ? まあ、向こうがどう思ってるかにもかかってくるがな」
小さく出た溜息は、アイツへの思いと共に消していく。それは俺の自己満ってやつだよな。
「だけどお前は違うだろ? 仲良くしていたじゃねーか? ……二人には、なんて言って別れたんだ?」
「留学するってメッセージ送って、ブロックしたの……」
「そうか。話して良いか?」
こいつは小さく頷き、俺に背向けて布団を被る。その小さな背中は震えており、俺はそっと病室を去った。
ずっと我慢していたのだろう。
俺はあいつの母親に事の経緯を話すと涙ぐみながら、主治医に許可をもらうと話していた。やっと出来た友人だったからこそ、大切に想っているのだろう。
そう漏らした言葉に、吉永未来は俺が思っていた陽キャではなかったと思い知った。
朝だというのにカッと太陽が照り付ける八月末、ジリジリとした暑さが続く中に始まった二学期。朝より汗が止まらないのは、この暑さのせいだけではない。俺は高校生になって、初めてのことを今からしようとしている。
始業式が終わり各々と帰っていく姿に、俺は二人の女子を呼び止めた。
「……え?」
「何?」
奇怪な表情を浮かべ一歩引く、女子達。
まあ、当然だよな。いつも周りを睨み付けている俺がこんなに吃って、オロオロして、声をかけてくるんだから。
女子と話すのは、こんなに難しいことだったのか。
いつもあいつは色々話しかけてくれていたから、全く気付かなかった。バカだな、本当に。
「ねえ、話ないなら帰って良い?」
そう言って顔を合わせる二人は、目を泳がせ学生カバンを強く握り締めている。
ヤベェ、完全に怖がらせてしまったようだ。
「よ、よ、……吉永未来について。なんだけど、は、話聞いてくれないか?」
「……え?」
先程までの表情とは打って変わり、二人は距離を詰めてきた。