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俺達2人は、小鬼こおに洞穴ほらあなから1度離脱することにした。

なるべく最短距離で上の階層へと引き返し、その日の夕方に地上へ到着。

テントを設営して1泊し、翌日の昼過ぎにはエイバスの街の正門まで戻って来た。


「「おつかれさまでーす」」

今日も門前で仕事中の守衛・ウォードに、揃って挨拶する。


「おつかれさん。お前ら小鬼の洞穴どうだったよ?」



何気ないウォードの言葉に、顔を見合わせる俺とテオ。



「その事なんですけど……ちょっと急ぎで相談したいことがありまして」

「ん? 別にいいけどよ、早くても今日の仕事が終わってからになっちまうぞ?」

「大丈夫です!」


ウォードと夜に会う約束をした俺達は、正門を後にし、街の中へと入っていく。






「ふぅ……あ~~緊張したっ!」

門が見えなくなったところで、テオがすっきりした笑顔になった。



あまりの変わりっぷりに俺は思わず苦笑い。


「ウォードさんの前じゃ、テオはいつも借りてきた猫みたいになるな」

「だって何かあるとすぐ俺を怒るんだぜ? そりゃおとなしくもなるだろ」

「怒られるような事するからだろ?」

「うぅ……まぁでもウォードが力になってくれるならホント頼もしいよなっ!

「そうだな。オークジェネラルの時も凄かったし」


かつてはテオとパーティを組んでいた冒険者であり、そして俺達が手も足も出なかった強敵のオークジェネラルをあっさり倒してしまうほどの実力の持ち主であるウォード。

もしも彼の協力を得られたなら……攻略成功率は大きくアップするはずだ!






続いて冒険者ギルドへとやってきた俺達。

人もまばらな中、掲示板に貼られた紙を整理していた『彼』に声をかける。


「よぉ、テオにタクトじゃねぇか!」

振り返って野太い声を出したのは、ウォードと同じくテオと旅をしていた元冒険者で、現在はエイバス冒険者ギルドのギルドマスターを務めるダガルガだった。


ぺこっとお辞儀をする俺。

嬉しそうに軽く手を上げて挨拶するテオ。


「お前らがこの時間にギルドへ来るなんざァ珍しいな!」

ダガルガはいったん仕事の手を止め、俺達へと話しかけてきた。

「いつもと違って、今日はダンジョン帰りだからさっ」

「おうそうか! ドロップ品なら大歓迎で買い取るぞ、何かあったらよろしくな!」

「ありがとー」


しばらくテオと2人で喋っていたダガルガが、俺のほうを向く。


「で、タクトの調子はどうだ? 剣の腕は上がったか?」

「はい、おかげさまで少しは。小鬼の洞穴の雑魚ゴブリンぐらいなら、何とか倒せるようになりました」

「そうかそうか! まぁそれだけ出来りゃ食うには困んねぇだろ、よかったな!!」

「あ……アハハハ……」


俺の口から思わず乾いた笑いがこぼれた。

ダガルガへは『記憶喪失の見習い剣士』で通していたのを、今の今まですっかり忘れていたのだ……。





……勝手に1人で気まずくなった俺は、本題を切り出すことにした。


「ところでダガルガさん、今ちょっとお話できますか?」

「おう、なんだ?」

「あ……えっと……」


つい辺りを気にしてしまう。

現在ギルド内は空いているとはいえ、全く人が居ないというわけではない。

もし聞かれたら……と思うと、この場で話すのは気が引けた。



「どうしたんだ?」

変わらぬテンションでたずねてくるダガルガ。

見かねたらしいテオが、ダガルガの耳元へ小声で言う。

「……人に聞かれたくない話なんだ。ここだとちょっと」

「……難しい話か?」

よく分かっていないながらも、同じく小声で返すダガルガ。

テオは「うん」と答え、さらに一言添える。

「たぶん……ダガルガがギルドマスターになってから、1番の大問題かも」

「……そうか」


真面目な顔になったダガルガは、腕を組んで考え始めた。

ややあって、考えがまとまったようにうなずく。


「よし分かった! お前らついて来い!」

そう俺達に言うなり、ギルドの奥のほうへと歩き出した。




案内されたのはギルドマスター執務室。


やや広めの室内には、書類がどっさり載った木製ワークデスクが1組。

そして革張りソファやテーブルが置かれている、8人は座れそうな応接スペース。



応接スペースの大きなソファに俺達を座らせ、自分も空いた席にかけると、ダガルガは真面目な顔で言う。

「そんじゃ、話してもらおうか!」






「……マジで大問題じゃねぇかよォ……」

俺がメインとなり、ところどころテオが補足を入れる形で、「実は俺・タクトが、異世界から来た勇者であること」「暗殺等から身を守るため、勇者であるのを隠していたこと」「ダンジョン・小鬼の洞穴のボス部屋でおきた出来事」等をざっくりかいつまんで説明したところ、ダガルガは頭を抱えてしまった



「騙してしまい本当にすみません」

「いやまァその状況ならしゃあねぇよ……むしろこっちが助けてもらう立場だしな」

「いやいやそんな、俺じゃまだ実力不足ですから」

「これから強くなりゃ済む話だろ? 【光魔術】を使えるのは、勇者であるタクト、お前だけなんだ。別の世界から引っ張り込まれたとこわりぃんだけどよ……この世界リバースの事よろしく頼むぜ、勇者様!

「は、はい!」


目を見て真剣に話すダガルガの言葉に、思わず背筋がピンと伸びる。


「……ところでよォ。今の話、どの辺まで漏れてんだ?」

「えっと、全部知ってるのは俺とテオだけです。あと、原初の神殿のエレノイア様とイアンは『俺が勇者だ』ってことだけ知ってます」

「エレノイアの嬢ちゃんもグルかよ! ん? ……そういえばテオ、なんでお前はタクトの正体知ってんだ?」

「ん~っと、タクトに初めて会った時に、自分で気づいちゃって!」

「なッ……」


短く驚いたダガルガは、ふてくされた表情になる。


「……納得いかねェ」

「しょうがないじゃん、事が事なんだし――」

「水くせぇんだよ!」


なだめようとしたテオの言葉を遮るように、語気を荒げるダガルガ。


「確かにタクトはしょうがねェ、この世界に来たばっかりだしよ。でも、テオや嬢ちゃんは別だ! 少なくとも俺はな……2人とも、小っちゃい頃から知ってる大事な大事な家族みてぇな仲間だと思ってんだよ! 事が事だからこそ、隠し事なんかしねぇで最初っから頼りゃいいじゃねぇか!



しゅんとしたテオは「……ごめん」と、小さな声で謝る。

「分かりゃいいんだ」と笑って返したダガルガは、俺の方に向き直って言う。



「タクト、お前もだ。何かあったら遠慮せず俺に言ってくれよ!」

「……はい!」

「いい返事だ! まぁ、まずは小鬼の洞穴を何とかしねぇとな」


そうニヤっと笑うダガルガが、改めてとても頼もしく思えたのだった。






ダガルガとはエイバス冒険者ギルドのギルドマスター執務室でしばらく話したあと、ウォードと同じく夜に再び会おうと決めた。


業務中であったダガルガは仕事に戻る。


俺達2人はダンジョンで手に入れたドロップ品をギルド窓口で売却後、休息がてらしばらく街で時間をつぶしていた。






その夜。

まず先にウォードと落ち合った俺とテオは、自分達が泊まる宿屋・野兎亭の客室へと彼を連れて行き、諸々の事情を説明する。


「……っていうわけなんです。ウォードさん、力を貸してもらえませんか?」


説明が終わったところで、黙って聞いていたウォードは重い口を開いた。


「……力を貸すとか貸さないとか以前の問題としてよ……その話、本当なのか?

「え?」

「言っちゃ悪ぃが……お前が勇者だってのが信じられねぇんだ

「そ、それは……」


ウォードの言葉が、胸にずしっと突き刺さる。

特に助けてもらったあの2回――空腹で死にそうだった姿、オークジェネラルに追われる姿――を見られている以上、俺の言葉に説得力があるわけがない。



「タクトは本物の勇者だよっ! ステータスの称号に『勇者』って書いてあるの、【鑑定】スキルでちゃんと確認したし!!」

テオが必死に加勢してくれるものの、ウォードは表情を崩すことなく否定する。

「確かに【鑑定】は便利なスキルだがよ……それを簡単に覆しちまう【偽装】とかいうスキルがあると言ってたのは他でもない。テオ、お前じゃねぇか

「あ……」

テオの目が泳ぐ。

どうやら心当たりがあるらしい。

「だからよ、ステータスの情報だけじゃ裏付けにはなんねぇな」

「……」

テオは何も言い返せなくなってしまった。




さすがに気まずいと思ったのか、ウォードは少し笑って言う。


「ま、タクトが勇者だって証拠を、この目でしっかり確かめられたらよ……力でも何でも貸してやるさ」

「証拠……」



エレノイアやイアンの時は『神様からのお告げ』があった。

テオは自分から、俺が勇者であると確信して動いていた。

そしてダガルガは……ただ真っすぐに信じてくれた。


だけど、この世界の人にとって『勇者』は特別な存在だ。

むしろ俺が何もせずとも信じてくれた今までが特殊であって、普通はウォードのように「証拠を見せてほしい」と思うものなのだろう。


――勇者である “証拠”。

というかそもそも勇者って何だろう……。


ここまで考えたところで、俺はあることに気付いた。




「「【光魔術】!」」


どうやら同時に同じことを思いつき、同時に言葉を発したらしい俺とテオ。

お互い目が合い苦笑い。



【光魔術】は、この世で唯一『勇者』だけが扱える魔術である。

そして『勇者』とは、【光魔術】が扱える者のこと。


『勇者』と【光魔術】は切っても切り離せないものなのだ。





同時発言に少し驚いた顔をするウォードだったが、気を取り直したように言う。


「……そうだな。【光魔術】見せてくれるってなら……信じるぜ」



俺は黙ってうなずき、瞳を閉じて詠唱の準備を始める。


ウォードに信じてもらいたい。

そんな気持ちからか、いつもより不思議と気合いが入っているような気もする。


しっかりと集中力を高め、そして唱えた。


「……光よ集え。ライトオーブ」




――ポウッ


俺の詠唱にこたえるように現れたのは、ひときわ白く輝く光の球

言葉を失ったウォードは、ただただポカンと目の前の光球を見つめていた。





「これで、信じてもらえましたか?」

「……ああ」


若干戸惑いを残しつつ、ウォードは言葉を選ぶようにゆっくり口を開いた。


「……疑って……すまんかった」

「いいんです! 逆に、疑ってもらえたからこそ気づいた事もありますし」

「そ……そうか?」

「はい! ……あの、ウォードさん

「なんだ?」

「改めて、俺達に力を貸して貰えないでしょうか?」

「……おう。出来る限りやらせてもらうぜ」


俺とウォードは、笑顔でがっちりと握手を交わすのだった。

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