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『 雪 』@夏休み期間毎日投稿
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成瀬りん
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たーくん
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しばらくダガルガと話したのち、夜にウォードも交えて再び会う約束をした。
業務中だった彼は、いったん仕事に戻る。
俺たちはドロップ品をギルド窓口で売却してから、休息がてら時間をつぶした。
その夜。
まず先にウォードと落ち合った。
俺とテオが泊まる宿屋『野兎亭』の客室に連れていき、諸々の事情を説明する。
「……っていうわけなんです。ウォードさん、力を貸してもらえませんか?」
黙って聞いていたウォードが重い口を開いた。
「……力を貸すとか貸さないとか以前の問題としてよ……その話、本当なのか?」
「え?」
「言っちゃ悪ぃが……お前が勇者だってのが信じられねぇんだ」
「そ、それは……」
ウォードの言葉が、胸にずしっと突き刺さる。
特に助けてもらったあの2回――空腹で死にそうだった姿、オークジェネラルに追われる姿――を見られている以上、俺の言葉に説得力があるわけがない。
「タクトは本物の勇者だよっ! ステータスの称号に『勇者』って書いてあるの、【鑑定】スキルでちゃんと確認したし!!」
テオが必死に加勢してくれた。
だが、ウォードは表情を崩すことなく否定する。
「確かに【鑑定】は便利だがよ……それを簡単に覆しちまう【偽装】とかいうスキルがあると言ってたのは他でもない。テオ、お前じゃねぇか」
「あ……」
テオの目が泳ぐ。
どうやら心当たりがあるらしい。
「だからよ、ステータスの情報だけじゃ裏付けにはなんねぇな」
「……」
テオは何も言い返せなくなってしまった。
さすがに気まずいと思ったのか、ウォードは少し笑って言う。
「ま、タクトが勇者だって証拠を、この目でしっかり確かめられたらよ……力でも何でも貸してやるさ」
「証拠……」
エレノイアやイアンの時は『神様からのお告げ』があった。
テオは自分から、俺が勇者であると確信して動いていた。
そしてダガルガは……ただ真っすぐに信じてくれた。
だけど、この世界の人にとって『勇者』は特別な存在だ。
むしろ俺が何もせずとも信じてくれた今までが特殊だったのだ。
普通はウォードのように「証拠を見せてほしい」と思うものなのだろう。
――勇者である証拠。
というかそもそも勇者って何だろう……。
ここまで考えたところで、俺は気付いた。
「「【光魔術】!」」
どうやら同時に同じことを思いつき、同時に言葉を発したらしい俺とテオ。
お互い目が合い苦笑い。
【光魔術】は、この世で唯一『勇者』だけが扱える魔術。
そして『勇者』とは、【光魔術】が扱える者のこと。
同時発言に少し驚いた顔をするウォードだったが、気を取り直したように言う。
「……そうだな。【光魔術】見せてくれるってなら……信じるぜ」
俺は黙ってうなずき、瞳を閉じた。
ウォードに信じてもらいたい。
そんな気持ちからか、いつもより不思議と気合いが入る。
しっかりと集中力を高め、そして唱えた。
「……光よ集え。光球」
――ポウッ
俺の詠唱に応え現れたのは、ひときわ白く輝く光の球。
言葉を失ったウォードは、ただただポカンと目の前の光球を見つめていた。
「これで、信じてもらえましたか?」
「……ああ」
若干戸惑いを残しつつ、ウォードは言葉を選ぶようにゆっくり口を開いた。
「……疑って……すまんかった」
「いいんです! 逆に、疑ってもらえたからこそ気づいた事もありますし」
「そ……そうか?」
「はい! ……あの、ウォードさん」
「なんだ?」
「改めて、俺たちに力を貸してもらえないでしょうか?」
「……おう。できる限りやらせてもらうぜ」
俺とウォードは、笑顔でがっちりと握手を交わすのだった。