私
にとって学校生活とは退屈極まりないものだった。
特に面白い事なんて何もないし、ただ毎日同じような事をして過ごしているだけ。
授業中に当てられても答えられる自信はないから真面目に聞いていない。
先生の話を聞き流しながら窓の外を見つめてボーッとしている時間が私の一番幸せな時間かもしれない。
でもそれも今日で終わりを迎えることになる。
あの女のせいで……。
「沙耶架さん!」
教室中に響き渡る大きな声で名前を呼ばれてしまい、視線が一気にこちらへと集まってくる。
声の主はもちろんこのクラスの委員長を務めている少女であり、ポニーテールにした髪を揺らしながら駆け寄ってきた。
「今日の昼休み空いてる?」
彼女の口から出てきた言葉は予想通りのもので、私は内心うんざりしながらも平静を装ったまま口を開く。
「何か用事があるんだけど」
本当は予定など無いのだが、面倒臭い事になる前に断るに限る。
だけど彼女は私が素直に従うはずもない事は分かっていたようで、それを踏まえた上で話を続けた。
「ちょっと相談したいことがあるんだよね」
その瞬間、俺の世界が変わった。
「いやー今日もいい天気ですね!」
「……ああ、そうだね」
今朝はいつも以上に元気な小春ちゃんの声を聞きながら俺は空を見上げる。
雲一つない青空が広がり、太陽が眩しいくらいに輝いていた。
今は六月の上旬であり梅雨真っ盛りの時期であるが、幸いなことに今日は雨の心配はいらないようだ。
それどころかこの分だと気温が上がりそうな気がする。
夏服の衣替えが近いとはいえ、暑いのはあまり得意ではないので少しだけ憂鬱になってしまう。
「さて、そろそろ行きましょうか?」
「うん、そうだね」
俺たちは学校に向けて歩き出す。
普段通りの通学路を通っていき、途中で見慣れた顔ぶれに出会った。「おっ! おはよう、沙耶ちゃん!」
最初に元気よく挨拶してきた少年の名は新島翔。
中学1年生から付き合いのある友人の一人だ。
身長はやや低めだが人懐っこい笑顔が特徴的で、いつも誰かしらに囲まれている人気者でもある。
ちなみに彼の隣にいる少女は彼の幼馴染みらしいのだが……何故かこちらを睨んでいる。
彼女の名は神楽坂優衣といい、こちらは高校に入ってから知り合った仲なのでそこまで親しくはない。
ただ彼女もまた学園では有名な存在として知られており、成績優秀かつスポーツ万能であるため、まさに才色兼備という言葉が相応しい女の子だと思う。
ちなみに僕たちは全員同じクラスに所属している。
「やあ、今日も良い天気だね」
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