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はれる.
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
「それじゃ、結果報告といこうか。」
翌日の夜。
カフェに集まった9人。
阿部を中心に、神奈川で起こった出来事の報告会が始まる。
「……つまり、俺らは宣戦布告を受けたってことだね。」
5人の話を聞いて、岩本が話をひとまとめにする。
その声で、緊張が強まる。
芙月が姿を現したことによって、相手にしなくてはいけない敵が明確に増えたのだ。
「次に、芙月について深堀しよう。」
緊張した空気の中、阿部が話を進行させる。
「俺が気になったことは、本当に芙月とフードの男が繋がっているのか。」
「……?そこは協力してるんじゃないの?」
阿部の違和感に8人はキョトンとする。
今までの話し合いでも芙月とフードの男は協力関係であることを前提で話してきた。
それに、そこが繋がっている証拠として、フードの男に深澤の存在がバレているではないか。
不思議そうにする8人に、阿部は少し微笑む。
「じゃ、説明するね。」
「まずは違和感1つ目。フードの男と芙月は本当に”仲間”なのか。」
阿部は指を1本立てる。
「もし”仲間”だったら、なんで芙月は漆黒の龍の所有者を聞いてきたの?」
「……!そういうことか!」
その説明で、ラウールが気づく。
「もしそこが”仲間”なら、フードの男は芙月にふっかが所有者って伝えてるよね?」
ラウールの反応に嬉しそうに阿部は笑う。
その言葉に、7人もハッとする。
「次、違和感2つ目。芙月は本当に俺らとフードの男の戦いを見ていたか。これは”真”だね。」
次に、阿部は2本目の指を立てる。
こっちはどうやら真実のようだ。
「漆黒の龍の噂を流してるのは、芙月だよ。それは、本当に見ていたから。でも、どうしてふっかが所有者だって気づかないんだと思う?」
阿部は、8人に問いかける。
ラウールはもう答えにたどり着いてるようで、他7人から答えが出るのを待つ。
そして、
「……その場にいたんじゃなくて、何かを通して監視していた…?」
深澤が、ぽつりと呟く。
それに、阿部はにっこりと笑う。
「お見事!大正解!」
「で、でも!何で見とったん?」
だが、向井の言う通りだ。
戦い後、修復作業を行っていたが、カメラや何か監視するようなものは何も無かったはずだ。
その疑問に阿部はよく気づいたね、という表情をする。
「いたじゃん。漆黒の龍が生まれる瞬間を、俺らと一緒に目撃して、その後は消えたものが…」
「フードの男に操られてたふっかの式神!!」
渡辺が大きな声で叫ぶ。
阿部は満足そうに笑う。
「その通り。大量の式神の中に、1匹だけいたんだよ。操られる振りをしてあの戦いを監視させていた芙月の手下が。」
その答えに、阿部、ラウールを除く7人は凍りつく。
「そうなると、漆黒の龍の姿を見ただけで出現方法は分からないからね。これで説明がつくでしょ。」
阿部は、芙月の戦法を考えて苦笑する。
「それで、”フードの男と接触する”ことにした。」
「……え?」
続いた阿部の言葉に固まる。
先程、フードの男と芙月は仲間ではないという話をしたばかりだが…?
8人は目を丸くする。
「みんな、”仲間”と”協力関係”っいうのは、全く違うものなんだよ。」
そんな8人を見て、阿部は楽しそうに笑う。
「協力関係だから仲間なわけではない。あくまで利害の一致…一時的なものなんだよ。…つまり」
不思議そうにする8人に、よりわかりやすい言葉で伝えようとする阿部。
「芙月もフードの男も”裏切る前提”で協力関係にあるってこと。」
その意味を理解したのだろう。
8人の表情には色々な感情が浮かんでいた。
信じられなさ、不快感、嫌悪、衝撃…
「2人とも、狙ってるのは漆黒の龍だね。その先にある、願いを叶えるために。」
阿部の言葉に頷く8人。
「でも、漆黒の龍は1匹だけ。2人で分けるなんてできないよね?」
うんうんと、2度頷いてみせる8人。
「それに、願いだって違うだろうしね。つまり、漆黒の龍を手に入れられるのは1人だけ。」
「絶対に裏切る必要があるのか。」
納得したように佐久間が呟く。
「うん。だから、お互いがお互いを利用してるんだよ。」
阿部は、真剣な表情で話す。
「フードの男は、ふっかが漆黒の龍の所有者であることを隠してる。それを言ったら、芙月に奪われるからね。そのかわり、芙月にふっかを探させたわけ。でも、芙月もきっとそれがわかってるんだと思う。…今は、フードの男が優勢でも、いつでもその盤面がひっくり返る可能性はある。」
阿部の説明を、ひとまとめにしてみよう。
つまり、それは………
「……“ふっかの争奪戦”…」
苦々しく、阿部が呟く。
全てが漆黒の龍、深澤に向いている。
盤上の中心にいるのは、フードの男でも芙月でも、他の小さな勢力でも、Snow Manでもdominatorでもない。
漆黒の龍の所有者である深澤なのだ。
重い沈黙。
誰も言葉を発することができない。
周りにいる勢力が大きすぎるではないか。
それに、その中心にいるのは深澤だ。
この大きな勢力の中から、深澤を守りきることは可能なのか?
そんな不安と緊張が、深澤を除く8人の中に渦巻いていた。
「………つまり、俺が獲物ってことだよね。」
沈黙の中、深澤は凛とした表情で言葉を放つ。
その様子に、8人は目を見開く。
深澤は、瞳に強い意志を抱いていた。
深澤は、強くなっていたのだ。
あの頃の、誰にも頼れずに塞ぎ込んでいた深澤はいなかった。
「……ふっか…」
岩本は、小さく名前を呼ぶ。
その声は、深澤には届かない小さな声だった。
深澤は、強くなっている。
岩本にとってはそれは嬉しいことだ。
深澤は変わろうとしている。
強くなっている。
それなのに……
自分から深澤が離れてしまう恐怖と焦りが、岩本の胸の中に渦巻いている。
「…あ、そういえばさ。」
これからの予定について組んでていた時、渡辺が、ふと思い出したように発言をする。
8人の視線が渡辺に集まる。
「俺らの”特性”について考えてみねぇ?」
渡辺は、真白から聞いた”特性”の話を始めた。
「俺らにも、特性が…」
真白の話を聞いていなかった、渡辺、深澤を除く7人が感心したようにつぶやく。
今まで、特性は特定の人物のみが持つものとされてきた。
だが、その条件が変わったことによって、特性に対する必要性が変わる。
「…と言っても、特性なんてほぼ個性と一緒なんでしょ?能力でもないんだったらわかる気しないんだけど?」
ラウールがしばらく考えてみて言う。
他のメンバーもそうだ。
少し考えてみたが、全くわからない。
「……ねね、ふっか、1回式神出してよ!」
そんな中、佐久間が急に深澤に声をかける。
「式神?別にいいけど…何がいい?」
「なんでもいい!とにかく出して!」
佐久間の行動に疑問を持ちながら、深澤は式神を召喚する。
猫、うさぎ、リス、犬…
とりあえず小さめの動物を出してみた。
佐久間はすぐに式神に駆け寄り、手を差し出したり、撫でてみたりする。
式神はすぐに佐久間に懐いたようで、気持ちよさそうに目を瞑る。
その様子に、深澤は少し驚いたように目を見開く。
「へぇ、式神がこんなに俺以外に懐くんだ。いがーい!」
「でしょ?多分だけどさ、これが俺の”特性”なんじゃない?」
佐久間は、笑顔で答えた。
「なるほどね。佐久間の特性は”動物は友達”ってとこかな。」
阿部が納得したように頷く。
「うん!らぶアニマル、みんな親友!ってこと!」
佐久間が式神を腕に抱えながら笑う。
その後、佐久間の特性の発見によって話は前進した。
「こーじの特性は、”甘えん坊”なんじゃない?」
「それか、”フレンドリー”かな。味方、敵関係なしで距離感が近い!」
「ラウールは、”頭の回転の速さ”?」
「阿部の能力とは別のやつでね。あとは、語彙力とか。」
「それか”身長”じゃね?」
「それは特性じゃなくない?わら」
「舘さんは、”料理”じゃないかな?」
「たしかに!めっちゃ料理うまいもんな!」
「翔太は、”声”だと思うよ。」
「は?なんでだよ?」
「綺麗な声してるからね。あとは、ワードセンスとかも含めて?」
「わかる!」
「めめは、”顔”ちゃう?!」
「”顔面国宝”ね。たしかに、それで敵も惚れさせることができるかも。」
「そう?ありがと。」
「あべちゃんは…“あざとい”だ!!」
「たしかにたしかに!!」
「あざとい警察だー!!」
「ふはっ!なにそれ?笑」
楽しく、お互いの特性が何かを考える。
その中で…
「じゃあ、照とふっかはなんだろ?」
岩本と深澤の特性について悩んでいた。
「照もふっかも、なんでもできるし…」
「……特性しかなくない?」
そう、岩本と深澤は才能しかない。
その中から特性を選ぶ?
難問すぎる。
「照は、”カリスマ性”なんじゃない?」
深澤が、岩本の瞳を見つめながら柔らかく笑う。
「それこそ、このチームのリーダーを決める時も誰も照に反対しなかったし、照の指示でまとまってる。まさしくカリスマじゃん!」
深澤の明るい笑顔に、岩本は鼓動が跳ねるのを感じた。
深澤のこの笑顔は、冗談ではなく本気の笑顔だ。
岩本は、赤くなった顔を隠すように少し目線をずらす。
照れている岩本に、深澤以外のメンバーは気づいている。
温かい眼差しで岩本のことを見つめる。
深澤だけが、当然のことと言った顔をしている。
それが、岩本にとってはさらに照れる要因となるのだ。
「……ふっかの特性ってさ…」
ふと、阿部がひらめいたように深澤の顔を見つめる。
「…?え?何?」
真剣に阿部に見つめられ、少し後ずさりする深澤。
阿部は至って真剣な表情のまま、呟いた。
「……“魅了”だったりしない?」
その言葉で、深澤を除く7人はハッとする。
「………ぇ?いやいやいやいや!!待ってって!なんでそうなんの?」
8人からの肯定の視線を受け、深澤は困惑する。
証拠としては、十分にあるのだ。
「まず、ふっかは小さい頃に伝説の大烏を味方につけた。」
「そして、フードの男に目をつけられた。」
「フードの男だけじゃなくて、今はみんなからの注目の的。」
「それに、dominatorのボスである真白にもたいそう気にいられて。」
「俺らもふっかのことが好きなわけで?」
「もちろん、ふっかのこと嫌いな奴なんて居ないわけだし。」
「それに、どこか守りたくなる雰囲気がある。」
「さらに…色気もある!!」
メンバーからの証拠に、追い詰められていく深澤。
最後には、顔を真っ赤にしてしまった。
「でも、魅了ってなるとかなり厄介ではあるよね~。」
「この状況も、それが原因って考えられるわけだし。」
顔を隠す深澤をしばらく8人でいじり倒した後に、急に真面目な空気にもどる8人に、深澤はもう情緒が不安定だ。
カランカランッ
その空気の中、カフェの扉が開く音がする。
「…?申し訳ありません。この時間帯は営業時間外で…」
すぐに宮舘が扉へ向かうが、そこにいたのは営業時間を知らなかった客ではない。
「ご機嫌よう。今晩は、月が見にくいですね。ここへ来るまで時間がかかってしまいました。」
笑顔で一礼をする。
お嬢様のような雰囲気を纏う、美しく丁寧な女性。
深澤、阿部、渡辺、目黒、向井は知っている。
そこにいたのは、芙月だった。
芙月は、特に気にせずにそのままカフェの中に入り、空いている席に座る。
その行動が、あまりにも自然すぎて誰も止められなかった。
そもそも、岩本、佐久間、宮舘、ラウールからしてみれば、彼女が誰なのかも分からない。
それでも、”とても危険”であることだけは、本能でわかっていた。
真っ先に考えることは、今までの会話が聞かれていないかどうか。
もし、聞かれていたとしたら……
深澤が漆黒の龍の所有者であることがバレている。
警戒を強める9人。
だが、芙月は笑顔のままだ。
「ふふ、そんな警戒なさらないでください。私は、攻撃する気はありませんので。」
その異質さが、さらに警戒を強めさせる。
「じゃあ、何しに来たんですか?」
阿部が瞳を鋭くさせて問いかける。
「何をしに来た…そうですわね。この前はそこの5人の方々にしか自己紹介がてきていなかったと思いまして、今度こそは皆様のお顔を拝見した方が良いと思い、ここへまいりました。」
笑顔のまま、芙月は立ち上がる。
「私、芙月と申します。今後、皆様の物語に長く関わることになるでしょう。どうぞお見知り置きを。」
そして、深々と頭を下げる。
「…ここには、dominatorのおふたりはいらっしゃらないのですね。」
芙月が周りを見渡しながら、9人に問いかける。
9人は、黙ることしかできない。
だが、芙月は自分のペースで話を進めていく。
「それは、好都合ですわ。私はずっと、Snow Manと話したかったのですもの。」
にっこりと、誰もが惚れるような笑顔に9人は背中に冷たいものが流れる感覚を覚えた。
「皆様、あの”フードの男”と戦ったのですよね?」
芙月が、会話を支配していく。
もはや、これは会話ではない。
芙月が支配する尋問だ。
沈黙を肯定と判断する。
何も言わなくても、僅かな表情や空気の変化で判断する。
また、沈黙を肯定と捉え、芙月は話を進める。
「本当に素晴らしいですわっ!私、皆様の”友情”とやらを見て、とても”感動”いたしました!」
芙月は、瞳を輝かせている。
「皆様があつくぶつかり合う姿…それによって生み出される”力”の数々!興味が尽きませんわ!特に、あの”漆黒の龍”。」
漆黒の龍。
その言葉だけは、興奮していた彼女のトーンが下がる。
それが、怪しく、はっきりと響いた。
息が詰まるような威圧感。
9人は、口を閉じたまま、何も喋らない。
…何も、喋れないのだ。
芙月は、すぐに笑顔に戻る。
「知っているのでしょう?漆黒の龍の所有者を。」
詰め寄るような、逃がさない、といった笑顔。
芙月は、どんどん9人との距離を詰めてくる。
「………漆黒の龍は、死んだ。」
重い空気の中、深澤の声が響く。
「…死んだ…?」
芙月が、瞳を鋭く光らせながら深澤を見る。
「もう、存在してないんだよ。」
深澤は、震える身体を押さえつけ、目を逸らさずに芙月を見つめ返す。
その身体を、岩本は支える。
そうしないと、深澤はここで倒れていただろう。
「……ふふふふ。」
芙月は、口元に手を当てて笑う。
そして、
「なら、もう一度出現させれば良いのではないでしょうか?」
にっこりと笑ってみせた。
その言葉で、9人は固まる。
それは、深澤の心の傷を再び再現させることであり…
回復しかけている深澤を壊すことだ。
フードの男が1度壊した心を、芙月が再びこじ開けようとしてくる。
「……やはり、皆様は所有者を知っているのですね?」
その様子を見て、芙月は怪しく笑う。
そして、1度深く礼をする。
そのまま、扉へ向かっていく。
「今夜は、とても素敵な夜でした。ほら、月も顔を出しているわ。祝福を受けているのでしょう。」
芙月の言う通り、雲に隠れていた月が姿を現していた。
その光が、怪しく芙月を照らしていた。
「また、お会いしましょう。失礼いたしますわ。」
最後に、しっかりと深澤を見つめて、芙月は暗闇に溶けていった。
全員が、黙り込む。
芙月がいなくなり、静かになったカフェの中。
ようやく呼吸をすることが許された9人。
「………っはぁ…!!」
急いで息を吸い込む。
酸素が足りなかったようで、頭がまだチカチカする。
「ふっか、ふっか…!」
岩本は、すぐに深澤を抱き抱える。
「はぁ…はぁっ……!はっ…」
深澤は、呼吸すらまともにできていない。
息を乱しながら、岩本の腕の中に身体を預ける。
雲に隠れていた月は、はっきりと顔を出していた。
月の光は、カフェを照らし出していた。
まるで、探していたものを見つけたように。
コメント
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読み終えました……いやあ、今回も重くて、でも熱い回でしたね。 まず阿部の「協力関係と仲間は違う」っていう分析、すごくロジカルで鳥肌立ちました。芙月とフードの男が互いに裏切る前提で動いてるって、物語の緊張感が一気に増しますね。深澤が「獲物ってことだよね」って冷静に言い放ったシーン、彼の成長を感じて胸が熱くなりました。 そしてラスト、芙月が直接カフェに現れる場面は息をのみました。彼女の“宣戦布告”というより“品定め”のような振る舞い、怖かったです……。深澤の心の傷をえぐるような台詞には本当に腹が立ちましたが、岩本がすぐに支えたのがせめてもの救いでした。 特性の話も楽しかったです!佐久間の「動物は友達」とか、あべちゃんの「あざとい警察」には思わず笑いました。読後感がずしりと重いのに、キャラ同士の軽妙な掛け合いが効いててメリハリが効いてました。次が気になります。