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ネオンが妖しく輝く街。
私は、長く、鋭いそれを強く握りしめていた。
目の前にある、赤ワインをこぼした跡のようなものからは、目を背けて。
「あ、そういえばさあ」
帰ろうとしていた女子高生を、女子高生の友人は軽快な口調で呼び止める。
「なんかさ。ココの近くで事件?起きたらしいよ!ウワサによると、B組の紗奈が〜 」
声をひそめ、おもしろそうに話す。
「ごめん、今日バイトで」
申し訳なさそうにしながら、杏花が話を遮る。
友人である茜は、相変わらず軽快に続ける。
「あそっか、杏花バイトか!ごめんごめん、ファイト!」
いつも無邪気で明るく、優しい彼女のことを、杏花は微笑ましい気持ちで見守っている。
でも、彼女にもやはり“欠点”はある。
おそろいのヘアアクセを身に着け、彼女たちは楽しそうにおしゃべりを続ける。
「紗奈って、同じB組の、麻子のこといじめてたらしいじゃん?だから、誰かが──」
事件を、おもしろいアニメのように話す彼女たち。
でも、杏花にそれを否定することはできなかった。
「それでは次のニュースです 」
翌朝。
つまらないニュースを流し見ながら、杏花はため息を吐いた。
本当は今日、杏花が毎回楽しみに観ているバラエティー番組『おもしろい!現実』が、連休特番で放送されるはずだった。なのに、急に別の番組と差し替えになり、特番はナシとなった。
その別の番組がこれである。
「つまんないの」
「昨日、東京都港区にて女子高生が行方不明となる事件が発生しました。警察は家出の可能性は極めて低いと見ており、事件性が高いと見ています。少女のもとには、行方不明になる前、とある人物から『死ね』『消えろ』などと書いてあるメールが届いていたとして、警察は捜査を進めています」
そのニュースに、ビクッと肩を震わせる。
(え…?アレ、ウソだよね?まさか本当に…)
杏花は画面に映るテロップに釘付けになる。
だが、そのニュースはすぐに終わり、別の、有名人の新曲、観光地の賑わいなどを報じる楽しいものに変わってしまった。
(安城さん……。まさか麻子が?)
隣のクラスの、目立たない性格で大人しく、素直で真面目な親友。そんな麻子が事件に関連しているとは思いたくなかった。
(いやでも、これが安城さんの事件だっていう確証はないもん、麻子は…)
杏花は、自分の腕を掴み、深呼吸する。
しかし、杏花の青白い顔は、元の健康的な肌色には戻らなかった。
コツ、コツ、コツ。
行き場もなく、少女は彷徨い続ける。
鮮やかなワインカラーに染まった私服。
その手には、細長く鋭利なものが握られている。
少女は、一瞬だけ足を止める。
彼女の手を振り払った。
もし、その手を握れていたら、別の未来があったのかな?
考えを止め、少女は歩を進める。
コツ、コツ、コツ…
不気味な音が、深夜の歩道に響いていた。
あとがき
いかがでしたか?
朝の通勤時間や通学時間、バスや電車、新幹線などの移動時間などに、サクッと読める短編集があればいいなと思い至り、本作を書くことに決めました。
みなさんは、誰が犯人だと思いましたか?
杏花?茜?紗奈?麻子?アナウンサー?
もしよければ、コメントなどで教えていただけると嬉しいです!
書き始めで、やはり拙い文章になってしまいました。他にも、少しご都合主義な展開になってしまったのが反省ポイントです。
これからも執筆を重ね、更に上手くご都合主義を感じさせない展開にできるよう努力していきますので、よろしくお願いします!