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その時、特別支援学校一の美少女ベリンダ・ローズ・アフマディが走って駆けつけ、いつものハグを環にし、ギュッと抱きしめていた。
ベリンダがその時環の耳元で「環…この人たち…誰なの?」と微笑んでいた。
※幼い頃の聞こえる世界を体験している影響からか、ある程度の言葉を自然に話せるようになっているためです。彼女のバックグラウンドとしてはカナダブリティッシュコロンビア州バンクーバーで生まれ、幼少期の罹ったおたふく風のムンプスウイルスという病気の後遺症の影響で難聴になったと言われています。
環「His name is T」と言いながら、Tに指差しをして、両手の中指と人差し指をくっつけて、それ以外の指を握り、「トントンッ」と叩き、『Name』を表現。
環は拳を握り、親指を人差し指と中指の間に挟んで『T』を表現。
ベリンダも「My name is Belinda」と言いながら、右手で胸元に当てて、『My』を表現し、両手の中指と人差し指をくっつけて、それ以外の指を握り、「トントンッ」と叩き、『Name』を表現。 右手の親指を内側へ曲げて日本語の数字の文字の4のように『B』。 猫の爪や数字の5をイメージして、親指以外の指を、指の腹に乗せ、親指も同じように指の腹に乗せ、『E 』。
親指と人差し指を垂直に伸ばし、それ以外の指を握り、『L』 小指のみ、立ててそれ以外の指を握る『I』を表現。
人差し指と中指の2本で親指を挟むようにする『N』。 手のひらを相手に向けるように、人差し指をまっすぐ上に立て、それ以外の指を円のように丸くする『D』。 親指を横に立てて、それ以外の指を握る『A』を表現。
Tはハローのノリ(片手で額に当てて野球の敬礼をするように前方へ軽く出す動作)で、『Hi』と。 そして、『B・E・L・I・N・D・A』とベリンダを手話で表現するのだった。 右手の親指を内側へ曲げて日本語の数字の文字の4のように『B』。 猫の爪や数字の5をイメージして、親指以外の指を、指の腹に乗せ、親指も同じように指の腹に乗せ、『E 』。 親指と人差し指を垂直に伸ばし、それ以外の指を握り、『L』 小指のみ、立ててそれ以外の指を握る『I』を表現。 人差し指と中指の2本で親指を挟むようにする『N』。 手のひらを相手に向けるように、人差し指をまっすぐ上に立て、それ以外の指を円のように丸くする『D』。 親指を横に立てて、それ以外の指を握る『A』を表現。
※この手話はASLです。
環は手話を知らないムラクモのために、ASLでムラクモに指差しをして、両手の中指と人差し指をくっつけて、それ以外の指を握り、「トントンッ」と叩き、『Name』を表現。
そして、「M・U・R・A・K・U・M・O」と唇で言うのだった。
親指を手のヒラの内側へ曲げ、その後、それ以外の4本指で親指を被せるように曲げて『M』。
チョキのポーズをイメージして人差し指と中指をくっつけて『U』。チョキのポーズをイメージして人差し指と中指を絡ませて『R』。親指を横に立てて、それ以外の指を握る『A』を表現。
チョキのポーズをして親指を人差し指と中指の間に入れ、『K』を表現。チョキのポーズをイメージして人差し指と中指をくっつけて『U』を表現。親指を手のヒラの内側へ曲げ、その後、それ以外の4本指で親指を被せるように曲げて『M』を表現し、丸を指で『O』を表現した。
ムラクモは瞬時に自分の名前を伝えてくれたのかと見抜いた。
ベリンダが微笑みながら口語で「I SHOW-YOU HOME(家に案内するね)」と言い、親指で自分を指し、両手の指先をくっつけて屋根の形を作り、少し下げて『家』を表現。手のひらを上にして、自分の方から相手の方へ移動させるなど、『こちらへどうぞ』と言うニュアンスで表現した。
Tが右手の指を合わせ、それを顎に当て、それをベリンダに向けて『THANK YOU(ありがとう)』と表現して伝えた。
ベリンダが右手を前にして丸く円に包み込みながら『YOU‘RE WELCOME(どういたしまして)』と表現した。
環「それでいいよ、T。」
Tの心の声「投げキッスするイメージでASLでありがとうを表現するなんてびっくりしたよ。」
環「話してなかったけど…ちなみにうちらは在日イラン系カナダ人一家でね、俺はその養子なんだよ。前のクソ両親と違って俺に優しく接してくれるからいい人たちだよ。まあ一般社会だと俺のことを純日本人なのに、なんで両親が外国人なの?って言われそうだけどな。」
T「でも、この東京フリーク区は私とあなたみたいに色んな事情を抱えて移住してくる人を大歓迎するから助かりますよ。それにしても、あなたが身につけてる首飾りはファラヴァハルですか?ザラスシュトラ教のシンボルかつアイデンティティじゃないですか?」
環「よく知ってるなぁ、お前。」
T「歴史を勉強して覚えましたから。それからイランに対する敬意もありますので、『ペルシア、ペルシャ』と言う呼称は避けて、イランと呼んでも大丈夫ですか?ペルシャが付くものは『イラン猫、イラン絨毯』と呼びたいですから」
Tの心の声「ザラスシュトラ教って言うのは今から4000年以上も前に『最後の審判、天使と悪魔、天国と地獄』と言った概念を大きく提唱した世界最古の宗教だって言われていて、アブラハム様の宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)に大きな影響を与えたのに今では少数派の宗教になってしまった….何だか複雑な思いにほかなりません…」
環「頼もしいね。俺のイラン系カナダ人のお父さんとお母さんが喜んでくれるよ」
ベリンダがTを見てクスッと笑いながらASLで手を顎に当てて『ありがとう』のポーズをしながら、もう片方の手で頭を指差してクルクル回す手話=考え方が面白い**と表現していた。
そう言って、4人でアフマディ家に向かうのだった。
その時あるものを見つけるのだった。2つ立っている独特な形状だった。
T「これはトーテムポール?あの**『アメリカのアラスカの一部やカナダ寄りのファーストネーションズ(北米先住民)』の伝統的な文化財…」
環「実は俺らアフマディ家の遠いご先祖様にはトリンギット族の血が流れていてさ、その伝統を忘れないように先祖代々守り神として管理してるんだってさ。」
※トーテムポールと聞くとネイティブ・アメリカンの文化をイメージしがちですが、実は伝統的に制作して使い出したのが主にカナダブリティッシュコロンビア州からアメリカのアラスカ南部にかけた太平洋北西海岸エリアに住む先住民(ファーストネーションズ)のことを指します。
※北米全域の先住民が使うわけではなく、特にハイダ族、クワキウトル族(クワクワカワク)、トリンギット族など、沿岸部の巨木(レッドシーダー)を利用できる環境に住む部族特有の文化です。
したがって、アメリカ合衆国の大部分の先住民(平原の先住民など)が制作するものではなく、主にカナダ側(およびアラスカの一部)の先住民の文化と言えます。
そうしていく内に家の中に入るとエキゾチック溢れる中東イラン特有の雰囲気が湧いていた。
環「紹介するよ。俺のお父さんブレイクで、お母さんはレノックスだよ。」
ブレイク「よく来たね、みんな。アフマディ家へようこそ。初めての雰囲気にびっくりしたようだけど、ゆっくりして行ってね。」
レノックス「楽しみにしてるからね。」
そう言ってT、ムラクモ、環、ベリンダの4人は環とベリンダ姉弟の部屋へウキウキと訪れていた。
その部屋はカラフルで虹色を強調する色合いとなっていた。
T「この斧ってトマホーク?しかも伝統的な姿ですけど…」
環「どうやら俺の両親の遠い先祖に、チェロキー族の血を引いててさ、一族の誇りを忘れないように取っといてあるんだってさ。さっき話したトリンギット族とチェロキー族の血を引いてる在日カナダ人一家って訳。」
T「じゃあこのトマホークってチェロキー族が作った斧ってことですね? 歴史的にもヨーロッパと先住民の間の毛皮貿易の際に、鉄製の武器が手に入ったことで、斧を改良した。しかも、武器だけでなく、外交と儀式用としても機能していたってことですか…まあでも一般的に歴史的や交易観点からしたら、ネイティブ・アメリカンの方がトマホークの普及率は高かった…」
環「そうなんじゃねぇの?歴史には詳しくねぇけど、お母さんが言うには涙の道っていう残酷な歴史のせいで一部のチェロキー族たちが強制移住させられたのかな?ヨーロッパ人たちによって。それでバンクーバーのあたりに移動して、先祖のトリンギット族と出会い、受け入れてくれた。そして混血して行って100年後かな。それで当時のイラン系移民と結婚して俺らのルーツが出来上がった。」
ムラクモ「ここ東京フリーク区へ移住したのはどう言った動機があったんですか?」
環「ベリンダ姉ちゃんが幼少期にムンプスウイルスっていう病気の後遺症の影響で難聴になったのもあるし、俺らザラスシュトラ教を信仰しててさ、その日本のマツダ車が大好きでその由来がアフラ=マズダ様だってことを知って来日して移住したんだって。」
ベリンダがメモ帳に「私たちの血は、世界中の涙と笑顔でできているの」と書いてみんなに見せるのだった。
その時ベリンダが立ち上がり、壁際に飾ってある重厚感あるチェロキー族伝統のトマホークを握り、舞を踊るかのように武術を披露していた。
Tとムラクモはこの重い空気を受け止めて、暖かく見守っていた。
環「ベリンダ姉ちゃんは戦士としての一面があるんだよ。先祖たちが受けた迫害された思いとザラスシュトラ教という最古宗教ならではの不屈の精神を背負って誇りとして踊ってるんだよ」
Tの心の声「ザラスシュトラ教における善悪二元論のバトルの良い神アフラ=マズダ様と悪魔アーリマンの戦いを表現してるみたい…これは個人の葛藤と向き合って、自分の良い意志で生きて考える…これが本来の善悪二元論の教えかもしれない…これを身体で表現してるとなると重く感じる….」
※ザラスシュトラ教の教えとネイティブ・アメリカン、ファーストネーションズの全ての共通点の一つとしては『火・水・土・風』と言った四元素を自然崇拝している点にあります。
つまり、ザラスシュトラ教の『四元素を汚さない』という教えと、北米先住民の自然崇拝が融合したハイブリッドな多文化的な要素だと思っています。
日本で例えるなら、神道における八百万の神様と仏教における仏様による神仏習合と根っこは
同じだと思えばわかりやすいです。
※善意・善語・善行という三徳はザラスシュトラ教の根本的な教えであり、善と悪の二元論に立ち、善人(三徳を実践した人)は永遠の生命を授かると信じられています。こう言った善悪二元論の教えは私たちがイメージするような勧善懲悪ではなく、個人の質を重視しています。
仏教で言うと自分の中の内面における煩悩と向き合う感覚と近いと思っています。
コメント
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おお……これはまたずいぶんと濃密なエピソードでしたね。まず、手話でのコミュニケーションが丁寧に描写されていて、音のない世界での温かなやり取りが目に浮かぶようでした。ベリンダの「私たちの血は、世界中の涙と笑顔でできているの」という一文、すごく沁みました。トーテムポールやトマホーク、ザラスシュトラ教の教えまで——環たち一家のルーツの重さと誇りが伝わってきて、読み応えがありました。多文化が混ざり合う東京フリーク区、いい場所ですね。