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龍之介がノゾミにアプローチを始めて、1週間が経過した。
最初は、ノゾミが夜に野球グラウンドを無断使用し、龍之介がそれを黙認するだけの関係だった。
それが、今では――
「あーっ! 龍先輩だー!! 来てくれたんですねっ!!」
「おお、ノゾミ。今日の大会、いけそうか?」
「はいっ! ちょうどわたし、今から走るところなんですよ! 見ててくれませんか?」
「もちろんだとも。そのために来たんだ。それに、君の走りは美しいからな」
「ありがとうございます!」
ノゾミはすっかり龍之介に心を許していた。
笑顔で話しかけてくれる様子からもそれが分かる。
つい1週間前の塩対応だった頃が、嘘のようだ。
『位置について、用意……』
パァン!!
ピストルの音。
それと同時に、一斉に駆け出す選手たち。
その中で、一際目を引く選手がいた。
ノゾミだ。
(やっぱり速いな……)
彼女は、他の選手よりも頭一つ抜けている感じがする。
あっという間にゴールし、そのタイムは――。
『桃色青春高校のノゾミ選手、大会新記録です!!』
「「おおー!!」」
大会新記録。
文句なしで、ノゾミが優勝した。
「やったな、ノゾミ」
「龍先輩!」
嬉しそうに、龍之介の所へ駆けるノゾミ。
彼はそんな彼女の頭を撫でてあげる。
「……ノゾミちゃん、いつの間にあの男とデキたんだろ?」
「さ、さぁ……。でも、何か雰囲気変わったよね」
「うん……。今思えば、プレッシャーとかで苦しんでいたのかも? それをあの男が癒して……」
「な、なるほど……。つまり、ノゾミちゃんの絶好調はあの男が原因ってこと?」
「絶対そうだよ! だって、あんなに幸せそうなんだもん!!」
桃色青春高校の陸上部員たちが、2人のことを噂する。
そんな周囲の声を物ともせず、ノゾミは龍之介とイチャイチャし続けたのだった。
*****
その後は、表彰式や閉会式が行われ、陸上部員たちはグラウンドから去っていく。
そんな中、ノゾミだけは龍之介と共に桃色青春高校の野球部部室へとやって来た。
「……」
「どうした? ノゾミ?」
「いえ……。男の人と2人きりになるのは慣れないなーって」
部室にあるベンチに座ったノゾミが、恥ずかしそうにそう言う。
そんな彼女は、どこか色っぽい雰囲気を漂わせていた。
「ふふふ……。では、今日も【愛情クロストレーニング】を始めるとしよう」
「は、はいっ!」
龍之介の言葉に、ノゾミは嬉しそうに答える。
そんな彼女は既に服を脱いでいた。
ついでに、何故か龍之介も服を脱いでいる。
「まずは、足をマッサージしてあげよう」
龍之介はそう言って、ノゾミの足を揉み始める。
最初は優しく揉んでいたが、徐々に力を強めていった。
「んっ……あ……」
ノゾミの口から甘い声が漏れる。
そんな彼女の声を聴きながら、龍之介は楽しそうにマッサージを続けた。
「ノゾミ、どうだ? 気持ち良いか?」
「き、気持ち良すぎて……頭がおかしくなりそうです……」
ノゾミが頬を赤く染めながら龍之介にそう返す。
そんな反応を見て、彼の頬が緩んだ。
(可愛いな……)
そんな感想を抱きながら、さらに彼女の足を揉み続ける。
すると、ノゾミが尋ねてきた。
「あの……、龍先輩?」
「ん? 何だ?」
「その……どうして、わたしに対してここまでしてくれるんですか?」
ノゾミは、ずっとそう聞きたかった。
彼女は龍之介のことを知らない。
知っていることは、中学で大活躍した野球選手であり、少し前からこの桃色青春高校でも野球部を始動させたことぐらいだ。
そんな相手に、彼は熱心に世話を焼いてくれる。
それはとても嬉しいのだが、理由が分からなかったのだ。
「どうしてか……か」
そんな疑問に、龍之介が口を開く。
それは、とても簡単な答えだった。
「君の足に惚れているからだ」
「え?」
唐突な告白に、ノゾミは驚く。
そんなノゾミの反応を見て、龍之介は言った。
「もっと分かりやすく言うと……君の足を一目見た瞬間、俺の脳に電撃が走ったんだ……」
「そんなことってあるんですか……?」
「ああ! 俺は、そう感じた。君の足が、俺の心を奪ったんだ」
「……」
ノゾミは何も言えない。
そんな彼女の足に、龍之介は顔を近づけた。
「ひゃっ!? あ、あのっ!!」
龍之介は驚くノゾミを無視する。
そして、彼女の足の匂いを嗅ぐように深呼吸した。
「すぅー……はぁーー……」
(男の人の息が、足にっ……!)
「……素晴らしい」
恍惚とした表情で、龍之介は呟く。
そんな彼の様子を見て、ノゾミは尋ねた。
「あ、あの……」
「ああ、すまないな。もういいぞ」
そう言って、龍之介はノゾミの足から顔を離した。
ノゾミがホッと息を吐く。
そんな彼女に、彼は言った。
「本当に美しい足だ……」
「あ、ありがとうございます」
褒められたことに、ノゾミは少し照れた様子で返事をする。
そんな彼女の足に、龍之介の手が再び触れた。
「ん……」
「……ノゾミ、次は俺のマッサージもしてくれないか? 午前中の走塁練習で、結構疲れたんだ」
そう言って、龍之介がノゾミに頼み込む。
その目は、どこか熱っぽい気がした。
「……ふふっ。いいですよ」
ノゾミはそう答えると、ゆっくりと起き上がる。
こうして、2人はお互いの体を念入りにマッサージしたのだった。