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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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おばあちゃんに実家から発掘してほしいと言われたアルバムは、量が多かったので段ボールに詰めて近くのコンビニからうちへ発送した。それが今日届いた。
夜になって時間ができたので、俺はその段ボール箱を開いた。
「どこしまっとこうかなあ」
千歳も箱を覗き込んだ。
『押し入れかなあ。しまう前に見てもいいか?』
「どうぞ」
『お前のちっさい頃の見よっと』
アルバムには簡単に年代が書いてあったので、千歳は平成一桁が書いてあるアルバムを手に取り、眺め始めた。あ、2歳くらいの俺の写真がある。
『あはは、この前のお前とおんなじ!』
「そりゃ同一人物だし」
下手したら今も2歳だったんだよなあ、元に戻れて本当によかったよ。
千歳は年代順にアルバムを見ていった。
『でかくなると写真少なくなるなあ』
「撮る機会が減るからね」
アルバムには、もちろん俺以外の写真もある。千歳は、俺の祖父の写真を指さした。
『これお前のじいちゃん?』
「そうそう」
『なんとなーく面影がある』
「言われてみたらそうかも」
顔の作り的に、俺が割と父親似で、父親は祖父似なのだ。体格は全然違って、父親は肉付きがいいし、祖父はがっしりしていたけど。
『でも、お前と違って厳しそうなじいちゃんだな』
まあ、体格と相まって峻厳な印象はある。
「実際はそんな厳しくもない、言う時はビシッと言う人だったけど」
ビシッと言われたことはあるけれども、かわいがってもらった思い出のほうが多い。
『ふーん』
千歳はアルバムをめくった。
『お前のじいちゃんが亡くなったの、病気だったのか?』
「脳溢血。何ていうか、医者の不養生だったんだよね、薬剤師だけど」
俺はため息をついた。
「高血圧でさ。とにかく塩辛いものが好きで、何にでも醤油かけて、塩の結晶浮いた梅干しわざわざ取り寄せてお酒のつまみにしてたりして」
『うわあ……』
千歳はちょっと引いた。俺は愚痴り続けた。
「俺はさ、薬学部行ってさ、薬剤師になって、おじいちゃんとまともな漢方薬局やるのが夢だったんだけどさ。おじいちゃんもみっちり仕込んでやるって言ってたくせに、死んじゃって」
『そっかあ……え、お前大学薬学部行ったのか?』
「行かなかった、おじいちゃんいない状態で薬剤師の資格取ったら父親の後釜やらされると思ったし、両親のお金に頼りたくなかったけどそれだと6年も大学行くの厳しいし」
『え? 6年? 大学って4年だろ?』
千歳は首を傾げた。あ、そうか、昭和だと薬学部は4年制だっけ。
「薬学部、俺が小さい時に6年制になったんだ、覚えること多いから」
『へえー、薬剤師って難しいんだな』
「で、高校の時おじいちゃんが死んじゃってから進路希望変えて、先生に東工大勧められたんだけど、俺の偏差値的にちょっと冒険で、浪人はできないって思ったから、横国の理工学部受けてさ」
『東工大?』
「東京工業大学。名前が地味でマイナーなんだけどさ、理系の大学としては東大とそんな変わんないくらいすごい」
『えっ、そんなすごいのか、名前聞いたことない』
千歳は目を丸くした。まあ、世の中の大多数はそんな感じだよなあ。
「理系では有名な大学なんだけども……なんというか、名前の語感が怪しいんだよね。東工大、今は東京科学大学って名前なんだけど、なんかもっと怪しい名前になっちゃってさ」
『損してる大学だなあ』
千歳はアルバムをめくり、また祖父の写真が出てきた。千歳は、俺を見た。
『……なりたかったか? 薬剤師』
一言じゃ答えられない質問だ。なりたかった時期は確かにあったけど、それはおじいちゃんの存在ありきだったんだよな……。
「……もう、おじいちゃんはいないから。それに、今幸せだからね、いろいろあったけどさ」
俺は、千歳に笑いかけた。
祖父みたいな漢方家になりたい気持ちはあった。でも、祖父に師事できないなら薬剤師になろうとは思えないし、今と違う道を進んでいたら、千歳と出会えていなかっただろうから。
コメント
1件
「おじいちゃんはいないから。それに、今幸せだからね」って台詞、じんわりきました……。薬剤師になりたかった過去をちゃんと抱えつつ、今の幸せをちゃんと肯定してるのが、すごく温かくて。千歳との何気ないアルバム鑑賞が、こんなに深い時間になるんだなあって思いました。東工大の話とか、ちょっとクスッとするところもあって、でも最後には「今の道でよかった」って思える、そんな優しいエピソードでした🌙