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──室内は、しばし重たい沈黙に包まれていた。
レイが説明を終えた後、ふっとため息をつきながら言う。
「……俺が言ったのはそこじゃなくて、足を狙えって言ったんだ…が、まさか、そんな捉え方してるとは……」
その声に、夢魔は額に手を当てたまま、苦々しく呟いた。
「……ほんとに……やりすぎなんだよ、ネグは。」
ネグはしゅんと肩をすくめ、小さな声で「ごめんなさい」と繰り返していた。
だぁも穏やかな笑みを浮かべながら、しかし目元だけは笑っていない。
「……まぁ、事情はわかったよ。」
そのまま一行は、レイとネグが帰る流れになった。
「じゃあ、帰りますね〜」
ネグが玄関へ向かいながら、すかーと夢魔に頭を下げようと近づいた、その時だった。
「わっ!」
床がツルッ――。
「うあああああああッッ!!?」
すかーと夢魔、まさかの道連れで再び倒れ込む。
「てめっ……ッ!ネグ、またかよ!!」
すかーの怒鳴り声が響く。
しかも――またもや、ズボンと下着がズルッと下ろされ、モロ出し状態。
ネグは焦りながらも、必死に叫ぶ。
「だってさぁ!! 床がツルツルなんだもん!!」
夢魔は歯を食いしばりながら、顔を歪めて呻く。
「クッ……マジで、ふざけんなよ……! いい加減にしろ……!」
その光景を見たレイは、小さく苦笑しながらも、床を指先でなぞる。
「……確かに、ツルツルだな。」
呆れたように呟きつつも、納得したように頷いた。
──だが、それで終わりではなかった。
今度こそ本当に帰ろうとしたネグが、バランスを崩し、立ち上がった時――
「わっ!」
今度は――だぁのズボンを、ズルッ。
「……ネグ?」
静かに、だぁの声が響く。
その瞬間、ネグはゾクリと背筋が凍りついた。
「……え?」
ネグが見下ろすと、だぁの腰元――下着まで、完全に下ろされていた。
そして――
ネグの手は、だぁの下半身を無意識にグニグニと掴み、揉んでいた。
そのまま、一瞬動きが止まるネグ。
だぁは目を閉じ、静かに呼吸を整えていたが――
「…………離せ。」
だぁの声色が低く、いつもより明らかに鋭かった。
ネグが反射的にレイを見ると、レイは苦笑しながら、
「……離したれ。」
ネグは慌てて手を離す。
だがその瞬間。
「ぐぅぅぅ……ッッ!!」
だぁの膝がガクッと折れ、その場に片膝をついた。
その顔はいつもの柔らかさなど微塵もなく、真っ赤になり、唇を噛みしめて苦しんでいる。
「ネグ……お前……ほんっっっとうに……!!」
声が裏返りそうなほど怒りと痛みに満ちていた。
その様子に、すかーも顔を真っ青にしながら呻く。
「いやいやいやいや……マジで……マジで勘弁してくれって……! なんで……何回目だよ……!」
夢魔も同じく、眉をひそめながら、腹を押さえて苦しんでいた。
「おい……ネグ……今度こそ……絶対許さねぇぞ……!」
すかーは震える手でズボンを必死に直しながら、荒い呼吸を繰り返す。
だぁも、静かに膝をついたまま、額に手を当てた。
「……ネグ……。」
低い、優しいはずの声が、今は恐ろしく静かだった。
「さすがに、僕もちょっと……怒るよ……。」
その一言に、場が完全に凍りついた。
ネグは冷や汗を流しながら、レイと共にその場を離れ、家を出る。
その背中を、夢魔もすかーもだぁも、黙ったまま見送っていた。
拳を握りしめ、唇を噛みながら。
だぁの最後の言葉が、リビングに静かに響いた。
「ネグ……次は本当に……覚悟しておいて。」
その声は、優しさよりも、静かな怒りに満ちていた。