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家を出た直後。
レイは無言のまま、しばらくネグと並んで歩いていた。
ネグはスマホをいじるでもなく、下を向くでもなく、普通に歩いていた。
やがて、レイがぽつりと声を落とす。
「……なあ。」
「ん?」
ネグはそっけなく顔を向ける。
レイは苦笑混じりに言った。
「さすがに今回は、やりすぎだろ。」
「別に……嫌われたいわけじゃないけど……」
「嫌われたくなくて……とか、そういうノリは無しだ。」
レイはきっぱり言い切る。
ネグは小さく鼻で笑ったような顔を見せてから、目を逸らす。
「うーん、だってさ。別に、どうでもいいし。」
「……だよな。」
レイはまた肩をすくめた。
「ネグ、さ。」
「ん?」
「ほんまにお前、狙ってやってないんか?」
「してない。マジで。」
ネグは即答する。
「偶然だって。」
「偶然で、何回ああなるかね……?」
レイは額を押さえながら、ふぅ、とため息。
「マジで奇跡だぞ、お前。」
「奇跡?」
「うん、完全に事故。あいつら、よく耐えてんな。」
「ふふ。」
ネグは声を出さずに笑った。
口元だけがふわりと持ち上がっている。
レイはその表情を横目で見て、ふっとまた息を吐いた。
「……いや、俺は別に止める気もないけどさ。」
「うん。」
「次、だぁまで巻き込んだんだろ? さすがに今度は殺されるかもしれんぞ?」
「うーん、かもね。」
ネグは全然気にしていない様子で歩き続ける。
レイはそれを見て、無言で歩調を合わせた。
やがて、自販機の前に差し掛かったところで、レイが立ち止まる。
「コーヒー、飲む?」
「いらない。」
「だろうな。」
レイは自分の分だけ缶コーヒーを買い、プシュッと開けた。
そのまま、静かにまた歩き出す。
「ネグ。」
「なに。」
「……本気で嫌われるとか、考えてないんだよな?」
ネグは足を止めず、そのまま答えた。
「考えてない。」
「……だよな。」
レイは苦笑した。
「まあ、俺もそう思った。」
ネグはそこでようやく立ち止まり、レイをちらりと見上げた。
「さすがに、だぁまでやっちゃったのは、ちょっとやばいかなとは思ってる。」
「そこは思うんだ。」
「うん。」
「……お前、ほんと不思議な奴だな。」
レイはまたコーヒーを一口飲んで、目を細めた。
「ま、あいつらも何だかんだでネグのこと放っとけないだろ。」
ネグは何も言わず、少しだけ唇を引き結んだ。
そのまま2人は、また静かに並んで歩き出した。
風が少しだけ強く吹いて、ネグの髪がふわりと揺れた。
レイはそれを目の端で見ながら、缶コーヒーを持った手をポケットに突っ込んだ。
──しばらくはそのまま、言葉もなく、ただ歩き続けていた。