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3 - 自分に無いもの

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2024年05月20日

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高校2年生の冬、私は今までにない出会いをした。

私は勉強はできるけれど、運動はできない。

勉強だけでなく、歌やメイク、料理だってできるのに運動だけはどうやっても出来なかった。

昔からそうで足も遅いし、ボールはキャッチできないし、体力もないし、何をしても出来ないからもうとっくに諦めた。

けれど、諦めたのに私は今とても運動ができるようになりたいと思っている。

理由は明白だ。

今私はとても綺麗なフォームをしたバスケをする彼を見ている。

彼にボールが回ると、素早く敵を抜いていき「シュッ」という音と共にボールがゴールに入っていく。

私に無いものを持っているからだろうか、私はその姿にすごく惹かれた。

いつか自分もああなりたいと強く憧れた。


それからしばらくして、私は3年生になった。

相変わらず運動はできないけれど、彼の姿を見た日から自分も少しずつ頑張ろうと挑戦している。

そして、3年のクラスが同じだったのでよりやる気が出た。

3年生になって初めての席替え、私は窓側の列の後ろから2番目になった。

机を移動させているとあることに気づいた。

私の後ろの席、つまり窓側の1番後ろの席に彼が座っていたのだ。

まさか、席替えで席が近くなったのだろうか。

その事がなんだか妙に嬉しかった。

彼とは話したこともないから、これから少しづつ話せるようになりたいと思った。

席を移動して、窓に反射する彼の姿を見つめる。

彼は机に突っ伏して寝ていた。

運動している時はあんなに真剣だったのに、こんな一面もあるのかと少し意外に思った。

しばらく眺めていると、彼が目を覚ました。

体を起こして大きなあくびをする。

そしてふと窓を見た彼と窓越しに目が合う。

お互い驚いた顔をしたけれど、次の瞬間どちらも顔を背けてしまった。

自分の手を見つめながら思う。

挨拶くらい、してもいいかな。

これから関わることになるだろうし、何より彼に対するこの憧れの気持ちを伝えたいと思った。

そうこう考えてようやく決心し、後ろに振り返る。

彼は頬杖を着いてこちらを見ていた。

「あのっ、2年の時の体育でバスケをしていたあなたを見て…。」

あの時、自分にも出来るかもしれない、やりたいという気持ちをくれた。

そんな彼に感謝の気持ちを込めて伝えたい。

「すごくかっこいいなって思ってました。」

♡♡♡

俺は全く勉強ができない。

どれだけ勉強しても全然理解できない。

だけど運動だけは昔から得意だった。

ある日の体育で別クラスと合同でバスケをしている時、やけにこちらを見ている子がいた。

ほかの女子たちがきゃあきゃあと完成を上げている中でその子だけはじっとこちらを見ていた。

それが何となく気になって、自分たちの後の女子の試合の時にその子を見ていた。

するとあることに気づいた。

彼女は全くバスケができていない、というか運動が出来ないのだろうか。

パスを出されてもキャッチできなくて避けてるし、相手に押されてよろけてるし、その姿がなんだかおかしくて笑ってしまった。

あんな子がいたんだな、と思った。


それからしばらくして、3年生になった。

初めての席替えで窓側の一番後ろの席になった。

そそくさと移動し、みんなが移動し終わるまで寝ていようと机に顔を伏せる。

しばらくして目を覚まし、大きな伸びとあくびをしつつふと窓に目をやると反射した先にある目と目があった。

だけど、驚いてすぐに目を逸らしてしまった。

やけに胸が熱い。

目があったのは、あの体育の時の子だったから。

前を見るとその子の後ろ姿があった。

前の席になったのか。

なんだか嬉しくて、頬杖をついてその後ろ姿を眺める。

すると彼女が突然ふりかえった。

パチリと目が合う。

「あのっ」

彼女は少し恥ずかしそうに口を開いた。

「2年の時の体育で、バスケをしていたあなたの姿が魅力的で、かっこいいと思ってました。」

言い切った彼女を見て、俺は固まってしまった。

そんな俺を見て、「すみません突然…」と困った顔をしている。

どう反応していいのか分からずにいると、「それだけなので。」と彼女が前を向いてしまった。

体育の時ってあの時のことだろうか、彼女は覚えていたのか、かっこいいと思っていてくれたのか。

凄く嬉しい。

なぜだか分からないけど、とても嬉しかった。

そして同時に伝えたいと思った。

「あのっ」

俺も覚えているよ、君を見てたんだよ。

「2年の体育の時、なんかやけにこっち見てる子がいて、何となく引っかかって君のこと見てたんだ。」

君が運動音痴すぎて、笑っちゃったんだ。

そんなこと言えないけど。

「だから、その…」

言葉に詰まっていると、「ほんと!?」と彼女 が目を輝かせた。

「凄く嬉しい。」

そういった彼女の顔を見て、俺は一瞬時が止まったかと思った。

もっと彼女と話したいな。

「一緒にバスケしない?」

気づいたらそう言っていた。

「えっ?」

「あっ、嫌だったらいいんだけどその…一緒にやりたくて。」

つっかえつつもそう言った。

すると彼女は「うん!やりたい。」と言った。

そして、眩しくて目を細めるくらいの、だけどどこか華のある笑顔を俺に見せた。


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