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「ねぇ」
「ん?」
「結婚に興味ないんだよね?」
「うん、興味ない!」
「良かった」
ベッドサイドに腰をかけ
下着をつけながら話す
「お前も興味ないんだろ?」
「そうよ」
ズボンを履きながら応える男
「だから、お前がいい」
そう言いながら、女の頬に手を添えてキスをする
「そういうの、要らないから…」
「そこまで冷めるなよ。俺たちは、そういう関係なんだから…」
ふたたび、そっと唇を重ねる
新田 舞27歳 独身
藤堂 亮29歳 独身
「どうして、また、会っちゃったんだろう?」
「そういう運命だったんだよ」チュッ
「もう、終わり!」
「ホントお前って冷めてんな!」
「イヤなら、連絡して来ないでよ」
「そういうところが、たまらなくイイんだよ」
チュッ
「だから、もう終わりだって…」
亮は、舞の唇から離れようとしない
「う、う〜ん…」
止まらない…
「う〜ん、もう帰らないと…」
「どうせ誰も待ってないんだろう?」
「そうだけど…」
「じゃあ、俺と居ろよ」
チュッ、クチュッ
「ん〜」
いつも流される…
亮と再会したのは、3年前
まさかの同じ会社!
神奈川支社から本社へ異動してきた亮。
実は…高校生の時、1年間付き合っていた。
彼はテニス部の部長だった。
舞が入部して、すぐに告白され、付き合った。
楽しかったのに…大好きだったのに…
大学生になった亮が遊び人になり、別れた。
最悪な元カレだ。
もう会いたくなかったのに…
舞は、大卒で就職した。
食品製造会社の一般事務。
「22歳かぁ〜どうせすぐに辞めるんだろう?」と、
就活の時に言われ、あちこちの会社で落とされた。
「辞めません!結婚しません!」そう啖呵を切り、
採用された。だから、結婚に興味などない。
本当は、食品の研究の方がしたかったのに、
一般事務で落ち着いた。
そして、
24歳になった時、亮がまた目の前に現れた!
『終わった…』と思った。
「始まった!の間違いだろ?」
そこから…
私達は、そういう関係だ。
いわゆる都合のいい女。セフレ。
決して、愛などない。愛してはいけない。
亮も、面倒な付き合いはしたくないらしい。
だから、好きになってはいけない。
他にも、たくさんの遊び女は居るようだ。
見た目は、イケメンでモテる。
それなりの会社で働いているし、お金もある。
最初は優しくするから、すぐに女達は勘違いし、
「結婚して〜」と迫るらしい。
「そういうの、面倒なんだよ」
「だから、舞は最高の女だ」
「一生、俺と生きような」
「そういう言い方をするから、女は勘違いするのよ」
「だなぁ〜お前は違う。俺のものだ!」
「あっ…ん…バカな男…」
「賢い女だな、お前は…」チュッ
『自分が一番バカだと分かっている』
こんな最低な男が私の上司だ。
会社での亮は、本当に真面目で爽やかで
あんなに獣になるなんて、誰も想像など出来ないだろう。
私しか知らない、彼の裏の顔。
私だって、真面目を絵に描いたようなOLを演じてる。
もちろん、私たちがこういう関係だということは、
誰も知らない。
恋でもないし、愛もない
だから、付き合っているわけでもない
体だけの関係
ただ、ハッキリしているのは、
元恋人という事実だけだ。
「新田さん、これよろしく!」
「はい、分かりました。」
亮は、約束の代わりに、仕事を渡す。
それが約束の合図だ。
そのあと、詳細が携帯電話に送られてくる。
何時にどこで…
いつも同じ場所だと、誰かに見られるかもしれない。
万一、見られても、独身同士なのだから、何の問題もない。
なのに、付き合っているわけではないから、
誰にも知られたくないのだ。それは、お互いに…
「彼氏は居ないの?」と、他の同僚に聞かれるのが面倒だから、付き合っていることにした方が便利なこともあるのに、亮は、嫌がる。
上司という立場もあるのだから、それも仕方がないと思う。私は、ずっと彼氏が居ないと思われている。
でも、亮は、くだらない女と別れる時は、私を使う。
何度、婚約者だと紹介されたことか…
なら、あちこちの女と付き合うのやめなよ!
でも、変わらない。病的だ。
結局、寂しくなったら、舞の元へ戻る。
多くの人は、理解出来ないだろう。
変な関係。
都合のいい女だから…
それでも、断ち切れない私も悪い。
やっぱり、好きだったから…
いや、たぶん今も…
最初は、おかしい!
皆んなみたいに、男と女として、恋人として
付き合いたい!と伝えた。
しかし、そんな常識が通る男ではない。
だから、感情を一切押し殺すことにした。
お互い必要な時に逢う。
そして、カラダを重ねる
ただ、それだけ…
でも、私は「結婚に興味はない」とは言ったが、
「恋人も要らない」とは言っていない。
自分だけ代わる代わる女を渡り歩く
そんな亮が嫌いだ
でも…きっと、それでも、好きなんだと思う
遠い昔に押し殺してしまったから、
「好き」なんて言えないんだと思う。
悲しい…
素敵な恋がしたい
結婚をしなくても…
恋はしたい!
こんな歪んだ恋は、嫌だ。
もう3年もこのままだ。
いつか変わるのだろうか?
「ね〜結婚もしないで、一生遊んでるつもり?」
「まあ、必要になれば恋人になってよ。恋はしても良い!と最近思ってきた。」
「え?何それ?へー!最近ね〜
でも、結婚はしないんでしょう?」
「…のつもり」
「ん?なんだか口調が変わってきたわね〜」
「俺も来年30になるし…」
「へ〜ようやく気づいたんだ!」
「舞!話したこと、あったか?」
「何を?」
「俺の親父のこと…」
「詳しくは、知らないけど…あの人なんでしょう?」
亮の父親は…
『藤堂 健一』
亮が住む市の市長さんだ。
市議会議員から、市長さんになられたばかり。
「お父様がどうしたの?」
「俺に、市議会議員になれ!って言い出して…」
「えー!亮が市議会議員?はあ?冗談でしょう?
ビックリなんだけど!」
「俺が一番驚いてるよ!」
「え?何?何?会社辞めちゃうの?」
「いや、まだ決まったわけじゃ…」
「え?本気で言ってるの?全く畑違いの仕事をしてる亮が?アレって秘書さん達がなるんじゃないの?
万一なれたとして…
多くの女たちからスキャンダルを持ち込まれて、
敢えなく議員辞職に追い込まれるんじゃない?ふふ」
「だよなぁ〜舞、面白がってるなぁ〜自分でも分かってる。でもな、唯一逃げ道があるんだ。」
「何よ?」
「舞と結婚すること!」
「は?何言ってるの?冗談はやめてよ。
散々、結婚なんて興味ない!って、あちこちの女と遊んでおいて…今さら…」
「そう!でも、俺は独身だから別に不倫をしてたわけじゃないし、恋愛は自由だ。
しかも、いつも最後には、舞のことを婚約者だって紹介してたわけだし、何も嘘はついてないことになる!」
「は?ズル〜イ‼︎何よ、それ?いつも困った時に、勝手に別れる!って、人を巻き込んでただけじゃない!」
「俺もお前も独身同士、婚約《《してた》》わけだから…」
「してないわよ、いつからよ!」
「そうなれば、問題なく丸く治まるんだけどなぁ〜」
「本気で言ってるの?」
「全部、本気!」
「嘘でしょう?そんなこと、信じられないわよ。」
「だよなぁ〜まさか、俺が…だよな」
「そうよ、考え直したら?」
「親父が、嫁になる相手なら連れて来い!って…」
「えー!もう、やだよーちょっと〜いい加減にしてよ!」
「だよなぁ〜イヤに決まってるよなぁ、俺なんかと、この先もずっと顔を合わせるなんてな…」
「え?どうしてそんな言い方するのよ、この前は、
『一生、俺と生きような!』って言ったくせに…
え?いつもの冗談?」
「俺は、舞には本当のことしか言わないよ!
他の女には、冗談で交わしても、舞には素直に言って来たつもりだよ。」
「え?ちょっと待って…
何言ってるの?頭がパニック!」
今まで言われたこと…
『始まった!の間違いだろ?』
『お前は、違う!俺のものだ!』
『恋人になってよ』
『婚約者だから』
「な?俺は、嘘は言ってないよ。」
「結婚に興味ないって…」
「それは、再会した時、舞がそう言ってたから、じゃあ、俺も合わせておこうかなあ〜って…」
「コロコロ違う女の人と、付き合ってたんでしょう?」
「まさか!いい寄られてたけど、手は出してないよ。」
「え?嘘!私が婚約者役をしたのは?」
「うん、全て、いい寄られて面倒だったから、彼女が居る!って言ってたんだけど、あまりにも、しつこいから、婚約者なんだ!って、舞に会わせた。」
「え?え?ちょっと…何言ってるのか分からない!
いつから?」
「ずっと、そうだよ」
「嘘だよ。大学生になった時、入れ替わり立ち変わり、女が居るって…」
「舞!見たの?俺がホントに、色んな女と居たところを…」
「ううん、見てない。私は高校生だったから、大学生って、そうなんだって思ってた。でも、いろんな友達から藤堂さんが、また違う女の人と居たよって言われたら…不安になって鵜呑みにしてた。
嘘…私の勘違い?」
コメント
2件
モテるのは本人も大変だけど彼女も心配だよね😢