良い子と悪い子
私は胡桃ちゃんが学校に行くと、とても暇になる。
掃除も洗濯もひと段落しているし、何もやることが無い。バイトを始めようと思ったが
胡桃ちゃんに外に出るなと言われているし…でも少しでも手伝いたいしなぁ
胡桃ちゃんに相談してみるか…と後回しにする事にする。
雨はまだ続いていて、止みそうもない。ただ時計の針が刻一刻と進んで行く音を聴く
そして、たまに家族の夢を見る。妹の「雪月」姉の「夏月」母の「桜月」父の「春樹」
母と父に暗いところに閉じ込められる夢。前の私は虐待を受けていたのだろうか
妹は確か…泣いていたような姉は私を…?あれなんだっけ忘れてしまった
そういえばなんで私は瞳の色が違うのだろうか。生まれつきなのだろうか…
というか胡桃ちゃんと出会った時、雨が降る路地裏に私は居たのだろうか
気になる事は幾つもある、だけど深く考えたくない。この生活が壊れるのは嫌だ
もう寝よう、胡桃ちゃんが帰ってくるまでには雨も止んでこの孤独感は無くなっているだろう
帰ってきたら胡桃ちゃんに抱きついて、大好きって伝えよう。うん、そうしよう
過去の悲惨な夢
母「…風月…風月!絶対ここから出たらダメよ。」
風月「お母さん…!ねぇ!嫌だよ!お父さんは…?ねぇなんか変な匂いがするよ?ねぇ…」
風月「お母さん…おでこ赤いよ?大丈夫なの…?」
母「これはインクを零してしまったのよ。…夏月」
夏月「…母さん…私が妹達を守るわ」
母「流石よ…夏月…。雪月貴方はお姉ちゃんの言う事ちゃんと聞くのよ」
雪月「うん!」
母「私は良い娘達を持ったわ。夏月、風月、雪月。ごめんね」
扉が閉められる。私は妹達の手をギュッと握りしめた。その瞬間。
あぁぁぁああああああああ!
と。言う悲鳴が聞こえた。今すぐこの扉を開けてお母さんを助けたい。でも私にはそんな力なんてない
なら、妹達を死ぬ気で守る。お母さんに言われたもの。
母「辞めて!もう辞めて!ごめんなさいあの事は…!辞めてください…お願いします。」
母「お金なら全てあげます!だから…見逃して…お願い!死にたくない!」
??「お金なんて要らない。」
母「嫌だ…お願いしますなんでもしますから!」
??「僕は君が。」
鈍い音と共に母の声は途絶えた。泣き叫びたい、母を助けたかった。助けて…神様。
すると、絶望の光が少しづつ見えた。クローゼットのドアが開かれたんだ。私は手を握った。
??「…居たぁ。ねぇこの目玉誰のだと思うー?」
特徴的な橙色。あれは…お母さんの…
夏月「あっ…あっ」
??「あは、その絶望した顔いいね!剥ぎ取りたい!けーど、そこのお嬢さん達の目に興味があるんだよね」
夏月「妹達には…何もしないで下さい…」
許さない。こんな無力な自分が。今すぐにでも殺してやりたい
??「…いや無理。君の妹達の目玉がほしーの!退いて?」
夏月「…お願いします」
??「黙って、怠い。殺すよ?」
気持ち悪い、命乞いなんて、長女じゃなければ、こんな事。
??「君には期待してない。」
全てを否定された気分だ。もうぐちゃぐちゃ。妹達は私が守るって約束したけど
私だって子供だよ。まだお母さんに支えて貰いたいよ。助けてよ。
??「僕優しいから君だけ見逃してあげるよ」
夏月「…いやよ。妹達が好きだもの、お母さんとも約束したもの」
お姉ちゃんは大変だなぁ。はは
夏月「ごめん。風月、夏月。お姉ちゃんね…」
夏月「警察呼んどいたから、もう少しで来ると思うから。私が居なくても、
貴方たちを支えてくれる人はたくさん居るから。大丈夫よ」
ぐちゃ
??「あのガキ…はぁまぁいい。1人片方づつ取れば間に合うだろ」
風月「お姉さんは誰??」
??「…はぁ…僕は君のお母さんの友達だった人だよ。」
悪夢
胡桃「…ふーちゃん。…ふーちゃん!!!!」
風月「…!。」
胡桃ちゃんの声で飛び起きる。手はブルブルと酷く震えていて。ありもしない血の匂いがして
気がつけばボロボロと大粒の涙が出てきた。あの夢は私の過去?だけど私の視点じゃなくて
姉の「夏月」の視点の夢だった。どうして?家族はどうなったの?あのお姉さんは誰?
わかんない、わかんないよ。どうしよう。頭が痛い。
胡桃「ふーちゃん…!」
胡桃ちゃん。あぁ泣いちゃってるよ。でも体動かないなぁ。ごめんね、心配させちゃって…
…あっ雨止んでる。良かった。
胡桃「何処か痛い?魘されてたし、顔色悪いよ…ふーちゃん」
一気に重いものを背負ったような気がして。お姉ちゃんはどうなったんだろう妹は。
でも、それよりも心配かけた恋人を安心させなきゃ
風月「ね。ねぇ胡桃ちゃん。キスしていい?」